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プロローグ
※この小説は横読み推奨です。
―――今でもはっきりと思い出せる。
どろどろの血にまみれて息も出来なくて、世界は黒と赤の二色しかなかったあの頃。
選択肢はなかったけれど、嫌だとかもうやめたいとか、そんなことを思ったことさえなかった。
むしろ逆だった。
役に立てることが嬉しかった。
それは生きるための手段で、唯一の恩返しの手段で、自分の存在価値そのものだったから。
だから何も考えず、緻密に組まれた人形のように、ただ呼吸をするように、毎日人を殺していた。
これからもずっと、こんな日々が続くのだろう。
今まで変わらないように、これからもずっと。
そしていつか、背負った業に押しつぶされて、因果応報に死ぬのだろう。
そう思って、疑いもしなかった。
それだけで、幸せだった。
―――――なのに。
「…………あなた、だあれ?」
瞬間、世界が真っ白に染まった。