第四章 ガルーダ
青々と茂る大樹の真下、空を同じ色をした髪の巫女は、言いました。
「人には必ず、“何より大切なもの”ができます。そしてその時人は、“愛”を得る代わりに、他の何かを失うことになるのです」
大樹は静かに、その梢を揺らします。聖なる巫女の話に相槌を打つように・・・・
「フィン、ただいま」
同室のカイルが戻ってきた。その肩になガルーダが乗っている。
絶妙なタイミングだった。
「のわ!?」
フィンは意表をつかれて頓狂な声をあげた。
「何でそんなに驚くの?」
カイルに呆れた様子の半眼になって言われ、フィンはむすっとした。
「何でもねぇよ」
―ピルルルルルルル・・・・
ガルーダが嬉しそうにフィンの肩に乗り、その頬に擦り寄った。
ガルーダのふかふかの羽毛が気持ちよいがくすぐったく、フィンは笑った。
「ガルダ、くすぐったい」
―ピルルルル
「ガルーダ、すごく嬉しそうだね」
フィンとガルーダを見てカイルがにこにこ笑っている。フィンはなんだか気恥ずかしくなった。
「ガルーダは俺の愛鳥だからな」
てれながらフィンは答える。ガルーダは幸せそうに一声鳴くと、フィンの肩に座った。
「そういえば、道端で、面白い物を拾ったよ」
「道端っておま!汚ねーだろッ!!」
「まあまあ」
カイルは苦笑気味に笑うと、フィンに片手を差し出した。
カイルが手を開くと、金色の見たことも無いデザインの鍵が出てきた。
「面白いでしょ?ガルーダが見つけたんだよ」
フィンはその鍵に妙な既視感を覚えた。
「これって・・・・」
ガルーダを見ると、穏やかな瞳でこちらを見つめている。黄金の瞳が何か言いたげに細められていた。
「どうかした?」
カイルが不思議そうに訊ねる。
「いや、何でもない。これ、貰っていいか?」
「どうぞ。ガルーダが見つけたものだしね」
フィンはカイルから鍵を受け取ると、ポケットにしまいこんだ。
―ピルルルルルル・・・
ガルーダは満足そうに鳴くと、外へ飛んで行った。
「あっ!ガルーダ!!」
フィンが手を伸ばしたが、当然届かず、カイルが苦笑した。
「あーあ。行っちゃったな」
フィンは名残惜しそうに窓の外を見た。
―聖蘭から電話が再びかかってきたのは、丁度その直後のことだった。
こんばんは。皆様お久しぶりです。いろいろ忙しく、更新大変遅れ申し訳御座いませんでした。さて今回、第四章で御座います。摩訶不思議な鳥・ガルーダ。そのガルーダが運んだ鍵が一体いかなるものなのか、分かるのは多分まだ先です。