第一章 祠に祀(まつ)られしは・・・
蒼茫たる大空に
願いをかければ必ず叶う
この世界はそんな世界でした
聖なる巫女は、神たる狐と共に世界を守り
この世界は、平和だったのです
氷付けにされている、氷と同化してしまいそうな水色の長い髪の、眠るように目を瞑っている少女を見て、フィンは言った。
「もうすぐ俺ら、こいつより年上になっちまうな」
軽い気持ちで言ったフィンだったが、その言葉を訊いた聖蘭はとても悲しく、寂しそうな顔をした。
「無理だよ。だってこの世界では私達の時は、もう止まってしまっているんだもん」
「え…?」
「だって、ここに来た時の私の姿はあきらかに小学五年生でしょう?」
フィンは何も言えなかった。それだけ聖蘭の言葉は重く、聖蘭の強い願いによって創られたこの世界の悲しい理を表していた。
「だから、どうやっても私が巫女様より年上になるなんて無理なんだよ」
氷付けにされし水色の少女は、ただ静かに、何も言わずにそこにいるだけだった
―…
しばらくすると、気を取り直したフィンはてくてく歩きだした。
「聖蘭、あいつらに会わせてくれよ!」
小学生のようにはしゃぐフィンに、聖蘭は嬉しそうに笑った。
「いいよ。でもその前に、いつもの祠に寄らせてくれない?」
「おう!勿論」
フィンはにかっと笑う。そしていつもこの世界へ来ると決まって足を運ぶ祠へと足を向けた。
「この祠は、“ラク・ウォン”で唯一の祠なんだよ」
この世界、“ラク・ウォン”を創り出した張本人聖蘭は、そう言って愛おしげに祠を見た。
「この祠って、一体何を奉ってるんだ?」
フィンはずっと気になっていたことを聖蘭に訊ねた。
聖蘭は一瞬だけ瞳に悲しさを滲ませ、こう答えた。
「あの氷付けにされた巫女様を奉っているの」
―ぱああぁぁああ
突然祠の中が光輝き、あまりの眩しさにフィンも聖蘭も目を瞑った。
光がおさまり二人がほぼ同時に目を開く。
「え!?」
景色はがらりと一転していて、目の前には大きな鳥居と、日の光を受けて緑色に
煌めく、青々とした新緑を広げる木々があった。
振り返ると、そこには赤い小さめの祠がある。
「ここは…」
あまりに美しすぎる光景に、フィンは夢見心地で呟く。
―ピルルルル
「あっ!おいガルーダ!!」
フィンが止めるのも聞かず、許しを乞うように美しい声で一声鳴いて、ガルーダ
は天空へと飛んでいく。こんなことは初めてだった。
「ガルダっ!!」
大きな声で呼びながらフィンはガルーダを追いかけ駆けたが、すぐにガルーダは
雲に隠され見えなくなってしまった。
「どうなってんだ…?」
「フィン!あれ見て!」
唖然としているフィンに、驚愕の表情で口に手を当てながら聖蘭が言った。
フィンが視線を巡らせたその先には…
「嘘だろ…?」
ありえなかった。そこにはさっき見たばかりの、氷付けにされていたあの少女が
、楽しそうに笑いながら歩く姿があったのだ。
「どうなってるの…?」
聖蘭は夢でないことを確認すいるかのようにごしごしと何度も目を擦りながら、
返事が返ってくる筈も無いことを知りつつ呆然と言った。
まったり更新で申し訳御座いません(><)っっ
お待たせ致しました!第一章で御座います♪感想・要望等頂けると幸いです^^