第二話 邂逅
「樹、こっち」
暗闇に隠れていたかおりは、目的の人物の姿を認めると光の差すほうに出て行った。
「出てこなくても分かる」
「樹なら見つけてくれるけど、どうせなら早く来てほしいから」
かおりが樹と呼んだ人物の名は、二海道 樹という。
卓也と出会い、この世界に興味を持ちこの世界に居続けている異世界からの来訪者だ。
今は『組織』の術者として働いている。
名前は卓也が付けた。
「数秒の違いだ」
「まあね。でも、いいじゃん」
かおりは軽口をたたきながら、樹の方に歩いていった。
樹はそんなかおりの様子を見て、僅かに眉を動かした。
かおりが軽口を叩くのは、リラックスしている時か緊張しているときだ。
「まあいい。で?その情報は確かなんだろうな?」
「七割信用していい筋からの情報」
二人が夜中に待ち合わせしているのは、かおりが気になる情報を入手したからだ。
それは、随分前の情報だったため急を要すると判断し、本来なら遣らなければならない事前の確認作業、情報収集がほとんど出来ていない
しかし、かおりはその情報を聞くと他に漏れないように細工をし、樹と連絡を取った。
「微妙だな」
「うん。だから二人で行こう」
三割はハズレの可能性がある。
しかし、当たりの可能性のほうが大きいのだ。
「…卓也は?」
かおりは一定期間卓也の監視下で『組織』からの仕事をしていた。
しかし、ここに卓也はいない。
『組織』からの仕事ではないが、危険な状況で『力』を使うのだ。
卓也が居ないのはおかしい。
「眠らせてきた。もし、情報が確かなら私は私の全力を出さないといけない」
「?」
樹は僅かに首を傾げた。
「そうなると、この姿を保っていられないんだ」
「俺には見せるのか」
「うん。卓也にはあの醜い姿を見せたくないの。他の人ならいくらでも見せるけどね」
「お前の心は複雑だな」
「えへへ」
「…まったく。行くぞ。卓也が目覚める前に終わらせるからな」
「うん。卓也は丸一日寝てるから、早くしないとね」
「行き帰りの時間考えとけよ」
「大丈夫。私たち二人なら帰ってこれるよ」
「…そうだな。さっさと終わらせて、卓也とたまには三人で出かけるか」
「うん。楽しみ」
そう言うと二人は暗闇の中に歩き出した。
短っ!