新米宅配員
「ごめんくださーい、宅配便でーす!」
高卒で宅配会社に就職した新人・宮本の初仕事。
最初に配達に向かったのは近所の古びたアパートの『松の荘』。
二階の突き当り、森下さん宅の呼び鈴を鳴らしても二十秒以上誰も出てこない。
おかしいなと思いもう一度呼び鈴を押そうとすると、
「あれ? 鍵が開いてる……」
玄関のドアが半開きになっており、その隙間から覗き込むと廊下の奥にいた女性と目が合った。
二十代後半くらいの背が高く整った顔立ちのお姉さんで、その手には印鑑が握られていた。
「森下さーん! 宅配便です、ハンコください!」
「は……、はーい今行きまーす」
荷物の段ボール箱に貼られた某ネット通販サイトの配送伝票に印鑑を押してもらい、受け渡しを済ました宮本は次の配達に向かった。
――一週間後。
「おっかしいなぁ―……」
宮本が出社すると、ベテラン職員の村川がノートPCと向かい合って首を傾げていた。
「村川さん、どうかしたんですか」
「いやぁ、……松の荘の森下さんちの荷物が一週間たっても届かないらしいんだけど、ショッピングサイトの記録では配送済みになってるんだよ。もうわけが分からなくて……」
宮本は耳を疑った。
「松の荘の森下さん? そこにだったら先週僕が届けましたよ」
「君が? 確かなのかい?」
なにか失敗でもやらかしたのか? 宮本には全く覚えがないものの、少しだけ不安になってきた。
「直接手渡したから間違いないですよ。きれいなお姉さんに」
「は? お姉さん?」
村川はポカーンと口を開き固まっている。
「んん? 僕、なんかおかしなことでも言いましたか?」
「いや、そりゃおかしいよ。だって――」
宮本の問いかけに村上の顔は見る見る青ざめ、震えた口調で答えた。
「森下さんちは……老夫婦の二人暮らしで、お姉さんなんて住んでないよ?」
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宮本くんが届けたはずの荷物が届いていない。
村川が知る森下さんの世帯構成が一致しない。
そして宮本くんが会ったお姉さんは誰だったのか?
その正体は、森下さん宅に忍び込んだ空き巣だったのです。
空き巣が部屋を物色している間に、タイミング悪く宮本くんが訪ねてきてしまった。
ピッキングした玄関のドアを開けたままにしていたせいで、宮本くんに顔を見られてしまった空き巣は、咄嗟に住人のふりをしてやり過ごすことを思いついた。
悪運強くも物色する中でたまたま見つけた印鑑で荷物の受け取りをすませ、ついでにその荷物を盗むことにした。
さらに怖いのが、空き巣の被害に遭ったのなら、森下さんは宅配会社に問い合わせる前に警察に通報するはず。
それなのに会社にその旨が伝わっていないとなると、森下さんが空き巣の存在自体に気づいていない可能性があります。
そして犯人の顔を見てしまった宮本くん。
一歩間違えれば強盗殺人に発展していても不思議ではなかったはず。
その点は不幸中の幸いといえるのかもしれません……。
ロクショウ的意味が分かると怖い話、三作目です
いみこわ小説を書き始めて
日常のどんなところにネタが潜んでいるかを
考えるようになりました
このあと活動報告も更新しますので
そちらもよろしくお願いします




