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脚色ももたろう風雲伝

掲載日:2026/04/04

 昔々、あるところに仲のいいおじいさんとおばあさんがいました。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯をしに行きました。

 おばあさんが洗濯をしていると、一つの大きな桃が流れてきました。


 おったまげたおばあさんはその桃を拾い、家に持ち帰ります。

 そしておじいさんと一緒に食べようと、桃を切ると――


「おぎゃー!」


 なんと、元気な男の子が桃から生まれたではありませんか。

 おじいさんとおばあさんは腰を抜かすほど驚きましたが、その赤ちゃんを大切に育てることを決めました。


 こうして桃から生まれた赤ちゃんは、桃太郎と名づけられました。


「おーい、桃太郎やー」

「なーに、おじいさーん」

「ちょっと仕事を手伝ってくれないかい? 最近、腰が痛くて仕事ができなんでなぁー」

「わかった。じゃあ僕が代わりに仕事をするよー」


 元気に育った桃太郎は、おじいさんの仕事を引き継いでいました。

 おじいさんは優しい桃太郎に感謝をし、仕事を任せます。

 しかし、遊び盛りのはずの桃太郎がずっと仕事をしていることにおじいさんは心配になります。


 だから、おじいさんはこっそりと仕事に向かう桃太郎の後ろを追いかけたのでした。


「今日はここ一帯を芝刈りだな」


 湖が見える仕事場へ着いた桃太郎は、自慢の鎌をカゴから取り出します。

 そしてそのまま仕事を始めようとしたその時、ヤブの中から何かが飛び出してきました。


「見つけたぜ、桃太郎!」


 飛び出してきたのは、なんとツノが生えた女の子でした。


「なんとっ!」


 おじいさんはその女の子の正体が何なのか気づきます。

 それは人の敵である【オニ】だということに。


 このままでは桃太郎が危ない!

 おじいさんは桃太郎を助けるために飛び出そうとしたその時でした。

 オニが手にしたこん棒の一振りを、桃太郎は屈んで躱したのです。


「おお、なんとっ!」


 おじいさんは感嘆の声を上げました。

 あのオニの攻撃を、愛しの桃太郎が躱した。

 村の若者でもオニの攻撃を躱すことは難しい。

 何なら都を守護するサムライでも、オニの攻撃を防ぎ切れるかわからないところです。


 そんなオニの攻撃を、桃太郎はいとも簡単に回避している。


 おじいさんの目には、その光景がそんな風に映っていました。

 しかし、実際は違います。


「お前、何なんだよぉー! なんで毎回、僕の仕事場に来るんだよぉぉ!」

「そんなこと別にいーじゃん。というか、とっととぶっ飛ばされろ!」

「嫌だっつーの! というか女の子がそんな物騒な得物を振り回すんじゃありません!」

「父ちゃんからもらったこん棒だい! これでお前をぶっ飛ばしてやるんだからねっ」


 桃太郎は必死でした。

 オニの女の子が振り回すこん棒を、鼻水を垂らし、目をひん剥きながら全力で回避していました。

 しかし、ヤブが伸び放題な場所だったためか、おじいさんが隠れている位置からはその必死な顔は見えません。


 それどころか、オニの攻撃を利用して芝刈りをしているように見えていました。


「こ、これはっ」


 おじいさんは勘違いをします。

 桃太郎には戦いの才能があるのではないか、と。


 そんな勘違いが起きているとはつゆ知らず、桃太郎はオニの攻撃を完全に躱しきります。

 ついでにボーボーと生えていたヤブがきれいさっぱりなくなり、仕事を終えるのでした。


「トドメだ、桃太郎!」

「いぃやぁぁぁぁぁ!!!」


 桃太郎は迫るこん棒に悲鳴を上げます。

 しかし、その攻撃は当たりません。


 運よく、こん棒がオニの手からすっぽ抜けたからです。

 クルクルと回転しながらこん棒は近くの湖へと飛んでいきます。

 そして、ぽちゃんと音を立てて落ちてしまいました。


「…………」


 無言で、桃太郎は湖を見つめます。

 何気なく視線をオニへ向けると、目に涙を浮かべていました。


「うわぁーん! アタシのこん棒がぁぁ!」


 オニは声を上げて泣きだしました。

 それを見た桃太郎は、あまりの泣きっぷりに心配して声をかけてしまいます。


「そ、そんなに泣くなよ。また新しいのをもらえばいいだろ?」

「できないよぉー。こん棒を落としたって言ったら、怒られちゃう」


 ぐすぐすと泣くオニを見て、桃太郎は頭を抱えました。

 いつも仕事の邪魔をしてくるオニですが、さすがにかわいそうだと感じたのです。


 だから桃太郎は、湖へ落ちたオニのこん棒を取ってあげることにしました。


「わかったよ。拾ってくるからそこで待ってろ」

「え? いいの!?」

「ただし、今後は仕事の邪魔をしないこと。その約束を守ってくれるならいいよ」

「うん! うん! 約束する!」


 桃太郎は湖へ近づきます。

 中へ入るためにもフンドシ一丁となり、準備運動をします。


 そしていよいよ、水の中へ入ろうとしたその時でした。

 突然、水面がぱぁーっと光り出したのです。


「な、なんだぁ?」


 あまりにも強烈な光に、桃太郎は目を開けていられません。

 その光が収まり、視界が少し回復し始めます。

 桃太郎が急に輝きを放った水面へ目を向けると、そこには一人の女性がいました。


『こんにちは。このこん棒は君の落とし物かしら?』

「え? あ、いや、違います。それは知り合いの女の子が落としたものです」

『あらー、もしかしてガールフレンドかな? すみに置けないわねー』

「ガー? よくわからないけど、返してくれたら嬉しいです」


 あらあらー、とその女性は微笑んでいました。

 桃太郎はそんな女性を見て、思わず怪訝な顔をしてしまいます。


 そんな桃太郎を見て、女性はクスクスと笑いながらこんなことを告げました。


『それじゃあ、返してあげる』

「本当!?」

『ただし、お姉さんのお願いを聞いてくれたらね』

「お願い?」


『そ! あなたの村で名物になっているきび団子を食べたいの! それを食べさせてくれたらこん棒を返してあげるわ』


 そんなのお安い御用だ、と桃太郎は答えます。

 こうして綺麗だけどなんだか変なお姉さんから、オニの女の子のこん棒を取り返すために村へ戻ることになりました。


 おじいさんはそんな桃太郎の優しさを見て、感動して涙を流します。


「なんと優しく、強い子に育ったんだ。こうしてはおれん! 早くおばあさんのところに行かなくては!」


 少しでも桃太郎のために行動をしなくては。

 そのためにも、おばあさんにきび団子を作っておいてもらおう。


 おじいさんは桃太郎よりも早く村へ戻り、おばあさんに声をかけました。

 そして、全ての事情を話し、きび団子を作ってもらうようにお願いします。


 ですが、困ったことがおきました。


「おじいさんや、作りたいのは山々なんじゃが困ったことに材料が足らん」

「足らんじゃと? 何が足らんのじゃ?」

「秘伝のきび粉じゃ。これがないと美味しくて元気が出るきび団子が作れんわい」


「秘伝のきび粉か。困ったの、あれは隣村まで行かんと手に入らんしのぉ」


 おじいさんとおばあさんは頭を抱え、うーんうーんと唸ります。

 このままでは桃太郎にきび団子を作ってあげられない。

 だが、隣村に行くには少し時間がかかる。


 そこでおじいさんは閃きました。


「おお、そうじゃ。あやつらがおるわい」


 隣村に行くには人の足では時間がかかる。

 ならば人よりも足が速い者達に頼めばいい。


 ということで、おじいさんは頼りになるイヌ、サル、キジを呼びました。

 そしておじいさんは、その三匹にお願いをします。


「実はきび団子を作ろうと思っておるんじゃが、困ったことに秘伝のきび粉がないんじゃ。そこで、お主らに御使いを頼みたいんじゃ」


 そんなお願いを聞いた三匹は、それぞれがおじいさんに質問をしました。


「おじいさんおじいさん、そのきび団子って美味しいのか? わん」

「ああ、美味しいよ。それはもうすごく。どんな傷も回復するし、何なら身体の奥底から力が出るよ。そうじゃの、まだ子イヌのお前でも、地を抉るほどの脚力を得られるぞ」


「ええ? そんなすごい食べ物なんか!? きぃー」

「そうじゃ。子ザルのお前なら、天を貫くほど高く飛び、何なら宙を蹴って自在に移動することもできるじゃろう」


「そんなことされたら、僕のお株が奪われちゃうじゃないですか! ぴー!」

「大丈夫じゃ、若キジよ。お主なら風を切り、いやもしかしたら光と共に飛ぶことができるじゃろう」


「おじいさんおじいさん、そんなものを変な女の人に食べさせていいんですか? もしかしたら悪いことに使われちゃうかもしれないですよ? わん」


 おじいさんはイヌの指摘を受け、一瞬考えます。

 しかし、すぐに大丈夫だと考えました。


 そもそもきび団子は村の特産品。普通の人間には美味しい以外、すごい効果なんてありません。

 だからおじいさんは三匹にこう答えました。


「大丈夫じゃ。人間が食べても効果はない」


 三匹はホッと胸を撫でおろしました。


 心配事はなくなり、イヌ、サル、キジは村から出発します。

 おじいさんのお願いを叶えるために、ついでに美味しいきび団子を食べるために御使いを始めました。


 しかし、この御使いですが一筋縄ではいきません。

 なぜなら、話を聞いていた悪いネコがいたからです。


「聞いちゃった聞いちゃった! あいつらより先に手に入れてやるにゃ!」


 悪いネコは笑いながら、三匹を追いかけるように村を出ました。


「力を手に入れて、村を支配してやるんだにゃ!」


 悪いネコの夢――それは村の支配者となり、人間をこき使うことです。

 ですが、今はそんな力なんてありません。


 見つかり次第、身体を撫でられ、お腹を撫でられ、お尻を撫でられます。

 悪いネコはそれが堪らなく嫌ですが、本能に逆らえないのか喉を鳴らしてしまいます。

 挙句の果てにはさらに求め、かわいいポーズを取って甘えてしまうのです。


 そんな屈辱から逃れるためにも、悪いネコは人間の支配を企んでいました。

 支配してしまえば、人間は生きるために悪いネコに媚びなければなりません。


「ニャーハッハッハッ! 待っていろ人間! 我が恐ろしさにひれ伏させてやるにゃ!」


 それぞれの目的のためにきび団子の材料を求めて駆けていきます。

 はてさて、この御使いはどうなることでしょうか?



◆◆◆◆◆つづく、かも?◆◆◆◆◆


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