その水は…。
メリットでもありデメリットでもある。
【咎】【空を無くす】の効力が僕の身体能力を少し向上させた。武器を力込めて握る。ミシミシとソレは音を立てた。
そうだった。【咎】で強化された僕は強くなったと思い込んでいたのだ。【咎】【空を無くす】の能力のデメリットを考えていなかったのである。【空を無くす】のメリットでもありデメリットでもある【不安感を消し去る】能力は…。僕の意識から己の本来の能力の限界がある事すら消し去っていくのだった。僕は何でも出来ると疑わず、空を飛べる事さえ可能なのだと思う程のトランス状態になっていく。
両の手で武器を構え、銀鍍金塵蜘蛛へと向かっていった。肘を引き前方へと力を込めて突き出すと、グシュッ…と音が散り、包丁が銀鍍金塵蜘蛛の単眼へと突き刺さった。
「イギャアァァァァ。」
銀鍍金塵蜘蛛は叫ぶ。その轟音は僕の身体を震わせた。ビリビリと肉が震え、恐怖が波紋の様に広がっていく。
そして…。
恐怖を打ち消すかの様に…。
また水を口に含んだ。
「僕が罠へと誘導する。二人は援護して欲しい。」
二人は頷く。
僕は二度目の突きを繰り出し銀鍍金塵蜘蛛を挑発した。そして…背を向け走り出す。怒りに我を忘れている銀鍍金塵蜘蛛が僕の後を追い掛けてきた。
足が縺れそうになりながらも僕は全力で駆ける。罠迄、後少しと云う処で…。銀鍍金塵蜘蛛は白銀の糸を飛ばした。その糸が僕の肉体に、足元へと絡み付いていく。突如として自由の効かなくなった脚が地面を踏み込むのを拒み、僕は慣性の法則の儘に前方へと転倒した。
肉体に砂利や石が減り込んでいく。皮膚が裂け、肉を潰し、血が滲み出た。気付くと罠が目の前にあった。僕は反射的に眼を閉じる。ガキン。ガキン。と金属が合わさる音が響き、ブチンッと立て続けに音がした。ユックリと眼を開くと虎挟みに挟まれ切断された腕が僕の眼に映し出されたのだった…。
銀鍍金塵蜘蛛は、のた打ち回る。その度に罠が食い込み、至る箇所の肉を食い千切っていった。
恐怖、歓喜、達成感が僕達の心を満たしていく。ガクガクと抑制の効かない震えは僕達を膝から崩していった…。




