銀鍍金塵蜘蛛。
全てが人の顔だった。
八月九日。八時頃。村の外れに向かう最中、僕は後ろを振り返った。小学校の上、空の一部分だけが鬼雨の様な豪雨が降り注いでいた。きっと…。夏希は悲しみで泣いている…。後ろ髪を引かれながらも、僕達は蜘蛛を退治する為に向かわなければならなかった。ソレでも僕は幾度か振り返ってしまう…。
村から出て数十分程すると、僕達の瞳には白銀の世界が広がっていた。倒壊した木々に白銀の糸が幾重にも絡み付き、風景の色を白銀へと変えていたのである。
そして…。その中央に腹部が銀色に輝く体長三メートル程の蜘蛛がいた。その腹部には黒い斑点が有り、その黒い斑点は髑髏の様にも視え、腹部からはニンゲンの腕が六本、生えていた。然し、ソレよりも異様だったのは頭部で、蜘蛛の八個の単眼の全てが人の顔だった。聲に成らない聲を漏らし、血の涙を浮かべ、不規則に素速く動いている。
「何だ…。アレは…。」
想像とは違った。所詮は大きな昆虫なのだと勘違いしていた。違った。アレは蜘蛛の姿を模した化物だ…。
蜘蛛は此方を八つの単眼で視て…。
慟哭する。
「多分、銀鍍金塵蜘蛛が原型だと思う。」
真中は冷静に、そう云った。
「銀鍍金塵蜘蛛?」
「そう。銀鍍金塵蜘蛛。生態的には異性からしたら胸糞だけどね…。」
?…。僕と淳弥に疑問符が浮かぶ。
「でも、私達には関係ないから気にしないで…。とりあえず罠仕掛けるね。」
【束縛】と真中は【咎】の名を呼んだ。すると数え切れない程の虎挟みが顕現する。
「【咎】で顕現した罠は私が標的として定めた相手にしか発動しないから安心して良いよ。踏んでも大丈夫。」
と真中は罠を踏み抜いた。罠は脚を擦り抜けていく。ねっ?と真中は微笑んだ。
「淳弥。僕に水をくれないか?」
僕は淳弥に視線を送る
良いけど…。と淳弥は言葉を置き…。
「程々にしないと…。身体が保たなくなるよ。通常の十数倍の効力があるから…。」
その時の僕は言葉の本当の意味を理解していなかったのだ…。




