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八月八日。午後二十二時。満天の星


 雲一つ無い満天の星が。


 あの異変から六日経った頃。蜘蛛タイプの欲獣を見張っていた真中まなかから報告があった。欲獣が近辺の命を食い荒らしたらしく、移動するのも時間の問題だと云う。翌日にでも退治に向かう方が良さそうだとの事だった。急ぎ僕達は翌日の準備を始める事にしたのである。


 真中まなかは【咎】【束縛】で罠を創造していた【くくり罠】と呼ばれる 獲物の脚をワイヤーで括り付け捕獲する罠。【箱罠】 餌で誘き寄せ、獲物を箱の中に閉じ込める罠。そして…。【虎挟み】中央の板に獲物の脚が乗ると、バネ仕掛けが動作し、半円又は門型の金属板が合わさり、脚を強く挟み込む罠。真中はその金属板の先端を鋸状に少し改良したとの事だった。


 淳弥じゅんやは【咎】【空を無くす】で持ち運べるだけの食料と水に効果を与えたモノを用意していた。この頃には【空を無くす】の抗精神剤無しでは僕達は精神状態を保つ事が出来なくなっていた。切れれば不安と恐怖で押し潰されてしまう感覚で満たされてしまうからだ。


 僕はと云えば武器を創っていた。殺傷能力が有るのかさえ解らない玩具おもちゃの様な、少し太い木の枝に包丁を括り付けただけの代物だ。現在いま思えば実に莫迦げた事だと思う。でもその頃の僕はソレで強くなった気がしていたのだ…。


 夏希は小学校の職員室で見つけた折り紙を折っていた。夏希は昔から折り紙を折るのが好きで、そうしている間は少しは不安が薄れると僕等の無事を願い想いを込めて【鶴】を折っていた。


 僕は夜になると夏希と二人で小学校の屋上で星を視ていた。彼女の頭上は、柔らかい雨が降っている。酒涙雨さいるいう悲しみの雨だ。


 「ねぇ?帰ってこれるよね?」


 夏希は僕を覗き込み、訊いた。


 「大丈夫。僕達は無事に戻ってくるよ。それで…。さ…。良かったらなんだけど…。帰ってきたら結婚してくれないか?こんな世界だから婚姻届は出せないけど…。」


 「うん。」


 雨が止んだ。

 雲一つ無い満天の星が…。

 其処には在った。

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