ウイルス。
ソレは…。
一つの隕石の落下から始まった。
十歳の頃に両親を亡くした僕は、当時、存命だった父方の祖父母に育てられる事になった。ソレ以前の記憶は無い。
カステラが有名な県ではあるが、その県でも過疎化が進む自然豊かな村で育った。小さな村では村全体が家族の様なモノで何不自由無く生活していたのを覚えている。村で一番の長寿、北野四郎爺ちゃんに特に可愛がられ、色々と知恵を授かっていたりもした。四郎爺ちゃんは齢百歳だったのだが、しっかりとした人物だった。
過疎化の進む小さな村である。同年代の子供も数える程しかいなかった。僕には幼馴染みがいた鶴田夏希と云う女の子だ。幼い頃から、いつも一緒に時間を過ごし、共に育った幼馴染みである。彼女と出逢い十数年経つ頃には婚約を交わす間柄になっていた。聡明で可憐で僕の事を僕よりも識っていそうなミステリアスな彼女。
彼女は感情表現が苦手だった。嬉しい時に笑えず、悲しい時に涙を流せない。そんな不器用な女性だった。ソレでも僕は確かに彼女を愛していたし、彼女も僕を愛してくれた。
多くは望んていなかった。二人で共に過ごしていく…。そんな些細な幸福だけを望んでいた…。だが、その些細な幸福は終わりを告げる事となる。
ソレは…。
一つの隕石の落下から始まった。直径十センチ程の隕石が東京へと落下した。隕石落下による直接的な被害は無かったらしい。僕の暮らす村と東京は約千Kmは離れてはいる。だから絵空事の様な事だと思っていた。然し、問題は、その隕石の内部に存在していた未知のウイルスにあった。後に【KARMA】と名付けられたウイルスは人の心の闇を媒体とし増殖し、瞬く間に蔓延したのである。
此れは後に識った事。
【KARMA】ウイルス。
主な感染症状は…。
①人間の形状を失い、内に秘めていた欲望を具現化した様な怪物へと変異する症状。【欲獣化】
②その人間が抱えている心の闇が異能力として発現する症状。【咎人化】
③強大な異能力に耐えられず、眠りから目覚める事の無い植物状態になる症状。【獄人化】
④無気力となり生きながらにして死んでいるかの様な症状。【虚人化】




