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前世で婚約破棄された私が婚活垢でバズったら、元婚約者が擦り寄ってきた件

作者: 山太郎

前世で婚約破棄された私が婚活垢でバズったら、元婚約者が擦り寄ってきた件


プロローグ:二つの記憶、二つの人生


東京都内のワンルームマンション。28歳の橋本明日香は、疲れ果てた様子でドアを開けた。


「はぁ...今日も最悪だった」


玄関で靴を脱ぎ捨て、そのままリビングのソファに倒れ込む。テーブルの上には、婚活パーティーの領収書が無造作に置かれていた。参加費8,000円。今月で3回目だ。


明日香は商社で一般職として働いている。仕事は安定しているが、給料は決して高くない。それでも婚活にお金をかけ続けているのは、周囲のプレッシャーがあるからだ。


「明日香ちゃん、まだ結婚しないの?」

「いい人、紹介しようか?」

「30歳までには決めた方がいいわよ」


親戚、友人、職場の先輩。みんな善意で言ってくれているのはわかる。でも、その言葉が重くのしかかる。


スマートフォンを開くと、LINEに友人の恵美からメッセージが届いていた。


『今日の合コンどうだった?』


明日香は溜息をつきながら返信した。


『最悪。年収自慢男、店員に横柄な男、スマホばっかり見てる男...地雷しかいなかった』


『あー、わかる。私も先週そんな感じだった。婚活って本当に疲れるよね』


『疲れた。もう寝る。おやすみ』


明日香はスマホを放り投げ、ベッドに向かった。シャワーを浴びる気力もない。メイクも落とさずそのまま横になった。


その夜、明日香は高熱に襲われた。


体が燃えるように熱い。意識が遠のいていく。そして、彼女は夢を見た。


いや、夢ではなかった。それは「記憶」だった。


異世界グランディア王国


壮麗な王宮。大理石の床。天井まで届く巨大なステンドグラス。そこに立つ自分の姿が見えた。


豪華なドレスを身にまとった金髪の美しい女性。それが「自分」だった。


私は、アスティリア=ローゼンフェルト。グランディア王国の公爵家令嬢で、第一王子フェルディナントの婚約者だ。


社交界では「完璧な令嬢」と呼ばれていた。立ち居振る舞い、会話術、教養、すべてにおいて非の打ちどころがない。それが私の誇りであり、義務だった。


公爵家の令嬢として生まれた以上、王家との婚姻は当然の責務。私は幼い頃から、その日のために教育を受けてきた。


フェルディナント王子は聡明で、容姿端麗で、剣術にも秀でた完璧な男性だった。多くの令嬢が憧れる存在。


でも、私は彼を愛していなかった。


彼もまた、私を愛していなかった。


それでも婚約は成立した。王家と公爵家の政略結婚。お互いに理解していた。愛など必要ない。必要なのは、家格と責任だけ。


だが、すべては崩れ去った。


ある日、王宮に一人の少女が現れた。聖女エレナ。


彼女は貧しい村の出身だったが、神聖魔法の才能があり、王国を救う「光の聖女」として迎えられた。


エレナは純粋で、優しく、誰に対しても分け隔てなく接する人物だった。そして彼女は、フェルディナント王子に恋をした。


王子もまた、エレナに惹かれていった。


私は気づいていた。王子の視線が、私ではなくエレナに向いていることを。


でも、私は何も言わなかった。婚約者として、完璧に振る舞い続けた。


そして、運命の日が訪れた。


婚約破棄の舞台


王宮の大広間。貴族たちが居並ぶ中、フェルディナント王子が宣言した。


「アスティリア=ローゼンフェルト。私は貴女との婚約を破棄する」


ざわめきが広間を包んだ。


私は冷静に問いかけた。


「理由をお聞かせください、殿下」


「貴女は私を愛していなかった。義務感だけで隣にいた。そんな関係は、もう終わりにしたい」


王子の言葉は正しかった。私は彼を愛していなかった。


でも、それは王子も同じだったはずだ。


「殿下も、私を愛してはいらっしゃらなかったでしょう」


「その通りだ。だから、終わりにする。私は、本当に愛する人と共に生きたい」


王子の視線が、エレナに向いた。


エレナは困惑した表情で立ち尽くしていた。彼女は優しい人だった。私を傷つけたくないと思っていた。


でも、愛には勝てなかった。


「わかりました。婚約破棄、受け入れます」


私は深く一礼した。


貴族たちの視線が、痛いほど突き刺さる。哀れみ、嘲笑、好奇心。


だが、それで終わりではなかった。


王子の側室の娘、クラリッサが進み出た。


「お待ちください、殿下。アスティリア様には、重大な罪があります」


「何だと?」


「彼女は聖女エレナ様を妬み、毒を盛ろうとしました。証拠もあります」


クラリッサは小瓶を取り出した。


「これは、アスティリア様の部屋から見つかった毒薬です」


「そんなものは知りません!」


私は必死に否定した。だが、誰も信じてくれなかった。


「アスティリア=ローゼンフェルト。貴女を修道院送りとする」


王子の宣告は冷たかった。


私は王宮を追われ、辺境の修道院へ送られた。


修道院での日々


修道院での生活は、過酷だった。


かつて華やかな社交界にいた私は、今や粗末な修道服を着て、掃除と祈りの日々を送っている。


誰も訪ねてこない。誰も手紙をくれない。


私は世界から忘れ去られた。


それでも、私は生きようとした。


だが、クラリッサは私を生かしておくつもりはなかった。


ある夜、修道院の食事に毒が盛られた。


私は激しい苦痛に襲われ、そのまま息絶えた。


最期に思ったのは、たった一つの願いだった。


「次の人生では、自分で選びたい」


目覚め


「はっ!」


明日香は飛び起きた。全身が汗でびっしょりだった。


時計を見ると、朝の7時。会社に行かなければ。


でも、体が震えている。


「夢...じゃない」


明日香は確信していた。あれは前世の記憶だ。


自分は異世界で、悪役令嬢として生きて、そして死んだ。


鏡を見る。そこにいるのは橋本明日香。28歳の平凡なOL。


でも、心の中には二つの人生がある。


明日香は深く息を吸い込んだ。


「そうか...私、転生したんだ」


そして、彼女は笑った。


「婚約破棄されて、修道院送りにされて、毒殺されたのに比べたら...」


「現代の婚活なんて、楽勝じゃない?」


明日香は立ち上がり、スマートフォンを手に取った。


Xのアカウントを新規作成する。アカウント名は「@ladys_konkatsu」。


プロフィール欄に書き込む。


『前世で婚約破棄された元令嬢が、現代の婚活で本気出します。地雷男の見抜き方、教えます』


そして、最初の投稿をした。


『皆さん、おはようございます。今日から婚活に本気で取り組みます。前世で学んだ「人を見抜く力」を、現代の婚活に活かします。地雷男の見抜き方、随時更新します』


投稿してから会社へ向かう準備を始めた。


スマホを見ると、投稿から30分で100リポストを超えていた。


「え...まさか」


1時間後、1,000いいねを突破。


3時間後、1万いいねを超えていた。


明日香は驚きながらも、確信した。


「これは、いける」


こうして、元悪役令嬢の逆襲が始まった。


第1章:前世の眼力、地雷男を一瞬で看破する


翌週の金曜日。明日香は友人の恵美に誘われて、合コンに参加することになった。


場所は渋谷の居酒屋「和音」。個室が予約されている。


「明日香、今日はいい人いるかもよ! 幹事の子が『レベル高い』って言ってた」


恵美は期待に目を輝かせていた。


明日香は苦笑した。「レベル高い」という言葉ほど当てにならないものはない。前世でも、「優秀な貴族」と紹介された男性の大半は、中身が伴っていなかった。


個室に入ると、男性5名、女性3名が既に席についていた。


「こんばんは!」


恵美が元気よく挨拶する。明日香も軽く会釈した。


席に着くと、明日香はさりげなく全員を観察し始めた。


前世で培った「貴族社会の洞察力」。それは現代でも驚くほど機能することを、明日香は既に気づいていた。


人間の本質は、細かな仕草に現れる。


視線の動き。言葉の選び方。笑顔の作り方。姿勢。手の動き。


貴族社会では、これらすべてが「身分」と「品格」を表していた。そして現代でも、それは「人間性」を表している。


明日香は心の中で、前世の記憶を呼び起こした。


貴族社会での訓練


アスティリアとして生きていた頃、私は家庭教師から徹底的に教育を受けた。


「令嬢、社交界では常に観察を怠ってはなりません。相手の視線、言葉遣い、姿勢。すべてが情報です」


「相手が本当に誠実かどうか、どうやって見抜くのですか?」


「簡単です。地位の低い者への態度を見るのです。使用人に横柄な貴族は、必ず妻にも横柄になります」


「なるほど...」


「そして、最初だけ優しい男性にも注意してください。本当の優しさは、日常の些細な場面で発揮されます」


この教えは、現代でもまったく同じだった。


乾杯が終わり、自己紹介が始まった。


最初に口を開いたのは、ネイビーのスーツを着た男性、田中だった。


「田中と申します。外資系コンサルで働いてまして、年収は1,500万くらいですかね。趣味はゴルフと海外旅行です」


彼は名刺を取り出し、全員に配り始めた。


明日香は名刺を受け取り、さりげなく観察した。


名刺の角が少し折れている。しかも、名刺入れではなくポケットから直接取り出していた。


名刺は、ビジネスマンにとって「顔」だ。それを大切に扱わない人間は、仕事も雑だ。


そして何より、田中は「年収」を最初に語った。


明日香は心の中で、前世の記憶を呼び起こした。


貴族社会の教訓①:地位を誇示する者


「令嬢、社交界で最初に爵位や領地を語る貴族には注意してください」


「なぜですか?」


「本当に優秀な貴族は、実績で評価されます。地位を誇示する必要がないのです」


「では、地位を誇示する貴族は?」


「それしか誇れるものがないのです」


明日香は田中に笑顔で応じた。


「すごいですね。外資系って大変そう」


「まあね。でも慣れれば楽勝だよ」


田中は得意げに笑った。


明日香は心の中で、田中に赤点をつけた。


次に話し始めたのは、白シャツにジーンズ姿の佐藤だった。


「佐藤です。IT企業でエンジニアやってます。年収は...まあ、普通ですかね」


佐藤は謙虚な印象を与えた。だが、明日香は油断しなかった。


注文を取りに店員が来た時、佐藤の本性が現れた。


「おい、ビール追加。あと、これ冷めてるんだけど。ちゃんと温め直して」


佐藤の口調は横柄だった。店員は丁寧に謝罪し、料理を下げた。


佐藤は周囲に向かって言った。


「いやー、この店、サービス悪いね」


明日香の表情が、一瞬凍りついた。


貴族社会の教訓②:使用人への態度


「令嬢、舞踏会での振る舞いだけで、相手を判断してはいけません」


「では、何を見るべきですか?」


「使用人への態度です。地位の低い者に横柄な貴族は、必ず家庭内でも暴君になります」


「それは...恐ろしいですね」


「ええ。ですから、結婚前に必ず確認すべき事項です」


明日香は静かに言った。


「店員さんへの態度って、育ちが出ますよね」


佐藤の顔が一瞬、強張った。


「え、いや、別にそんなつもりじゃ...」


「そうですか。でも、サービス業の方々も一生懸命働いてますから、もう少し優しくしてあげた方がいいと思います」


明日香の声は穏やかだったが、その視線は冷たかった。


佐藤は黙り込んだ。


明日香は心の中で、佐藤にも赤点をつけた。


三人目は、爽やかな笑顔の鈴木だった。


「鈴木です。広告代理店で営業やってます。よろしくお願いします!」


鈴木は最初から明日香に好意的だった。彼女のグラスが空くたびに気を利かせ、料理を取り分け、会話を振ってくれた。


「橋本さん、お仕事は何をされてるんですか?」


「商社で一般職をしています」


「へえ! 貿易関係ですか? 大変そうですね」


鈴木の気遣いは完璧だった。


だが、明日香は気づいていた。


鈴木の視線は、常に明日香にだけ向いている。恵美やもう一人の女性、由香には、ほとんど話しかけない。


そして、他の男性が明日香と話すと、鈴木は露骨に不機嫌になった。


明日香は心の中で、前世の記憶を呼び起こした。


貴族社会の教訓③:最初だけ優しい男


「令嬢、求婚者の中には、婚約前だけ異様に優しい男性がいます」


「それは、良いことではないのですか?」


「いいえ。本当の優しさは、一貫しています。特定の場面だけ優しい男性は、支配欲と独占欲の塊です」


「怖いですね...」


「ええ。婚約後に豹変する事例を、私は何度も見てきました」


明日香は鈴木に笑顔で応じた。


「鈴木さん、すごく気を使ってくれてありがとうございます」


「いえいえ、当然ですよ」


だが、明日香は心の中で鈴木にも赤点をつけた。


四人目は、無口な山田だった。


「山田です。メーカー勤務です」


山田は最低限の自己紹介だけして、すぐにスマホをいじり始めた。


会話にもほとんど参加せず、時折「ごめん、ちょっと仕事の連絡」と言いながらスマホを操作している。


だが、明日香にはスマホの画面が見えた。


それはゲームアプリだった。


明日香は溜息をついた。


貴族社会の教訓④:社交の場で上の空の男


「令嬢、舞踏会で他のことを考えている男性には、近づかないでください」


「どうしてわかるのですか?」


「視線です。本当に興味がある人は、相手の目を見て話します」


「では、視線が泳いでいる男性は?」


「あなたに興味がないのです。そんな男性と結婚しても、幸せにはなれません」


明日香は山田を無視することにした。


そして、五人目。


中村拓也。


彼だけが、明日香の観察眼に引っかからなかった。


拓也は年収を語らず、店員に丁寧に接し、全員に均等に会話を振り、スマホを一度も触らなかった。


そして何より、明日香の目を見て話した。


「橋本さん、お仕事は何をされてるんですか?」


「商社で一般職をしています」


「大変そうですね。貿易関係ですか?」


「そうです。主に東南アジアとの取引を担当してます」


「それは面白そうですね。文化の違いとか、苦労することも多いんじゃないですか?」


拓也は明日香の仕事内容に、純粋な関心を示した。


見栄でも社交辞令でもなく、本当に興味を持っていた。


明日香の心臓が、久しぶりに高鳴った。


前世で出会えなかったタイプ。


誠実で、相手を尊重し、自分の価値を誇示しない男性。


明日香は拓也と、自然に会話を続けた。


「拓也さんは、どんなお仕事を?」


「僕は建築関係です。設計じゃなくて、現場管理の方ですね」


「現場管理...大変そうですね」


「まあ、天候に左右されたり、トラブルも多いですけど、やりがいはありますよ。自分が関わった建物が完成した時の達成感は、何にも代え難いです」


拓也の目は、仕事への誇りに輝いていた。


だが、それを自慢するわけでもなく、淡々と語る姿勢に、明日香は好感を持った。


合コンは2時間ほどで終了した。


連絡先交換の時間になり、明日香は拓也とだけ連絡先を交換した。


他の男性からも声がかかったが、丁寧に断った。


「ごめんなさい、今日はもう連絡先交換は...」


特に鈴木は食い下がったが、明日香は毅然と断った。


合コンが終わり、恵美と由香と一緒に店を出た。


「明日香、拓也さんとだけ連絡先交換してたね!」


恵美がにやにやしながら言った。


「うん、彼だけ良さそうだったから」


「わかる! 他の人、ちょっとね...」


由香も同意した。


「特に佐藤さん、店員さんへの態度ひどかったよね」


「あと田中さんの年収自慢も引いた」


「鈴木さんは最初優しかったけど、途中からなんか怖かった」


三人は駅まで歩きながら、今日の合コンを振り返った。


明日香は帰宅後、すぐにXを開いた。


『本日の合コン戦果。地雷男4名、合格者1名。前世の眼力、現代でも健在です。地雷の見抜き方、明日まとめます』


投稿してから、明日香はシャワーを浴びた。


風呂から上がってスマホを見ると、投稿は既に8時間で10万いいねを突破していた。


「えっ...まさか」


コメント欄には、共感の声が溢れていた。


『わかりすぎる! 店員への態度、本当に大事!』


『年収自慢する男、マジで無理』


『続き楽しみにしてます!』


明日香は深く息を吸い込んだ。


「これは...もっと本格的にやってみよう」


第2章:地雷男の見抜き方、フォロワー10万突破への道


翌朝、明日香は約束通り「地雷男の見抜き方」を連続投稿した。


『おはようございます。昨日の予告通り、地雷男の見抜き方をまとめます。これは前世で学んだ「人を見抜く力」を、現代婚活に応用したものです』


『地雷男の見抜き方①:年収・学歴を最初に強調する男は要注意。本当に優秀な人は、実績で語ります。地位を誇示する人は、それしか誇れるものがないのです』


『地雷男の見抜き方②:店員への態度を見ましょう。地位の低い人に横柄な男は、将来あなたにも同じ態度を取ります。デート中、必ず店員さんへの接し方をチェックしてください』


『地雷男の見抜き方③:最初だけ異様に優しい男に注意。本当の優しさは、日常の些細な場面で発揮されます。特定の場面だけ優しい男性は、支配欲と独占欲の塊です』


『地雷男の見抜き方④:デート中にスマホばかり見る男は論外。あなたに興味がない証拠です。「仕事の連絡」と言いながらゲームしてる男、実際にいました』


『地雷男の見抜き方⑤:過去の女性の悪口を言う男は危険。「元カノが〇〇で」と愚痴る男は、いずれあなたも同じように語ります。過去を責める人は、未来でも人を責めます』


『地雷男の見抜き方⑥:話を遮る男は要注意。会話はキャッチボールです。一方的に話し続ける男、相手の話を最後まで聞かない男は、あなたの意見を尊重しません』


『地雷男の見抜き方⑦:「女性はこうあるべき」と語る男は危険。価値観の押しつけは、将来の支配につながります。あなたの個性を認めない男性とは、幸せになれません』


『地雷男の見抜き方⑧:割り勘を強要する男に注意。男女平等の時代ですが、「デート代は完全折半」と主張する男性は、他の場面でもケチです。お金の使い方に、価値観が現れます』


『以上、地雷男の見抜き方でした。これらはすべて、実際に私が経験・観察したパターンです。もちろん例外もありますが、高確率で当たります。皆さんの婚活の参考になれば幸いです』


投稿は瞬く間に拡散された。


30分で1万リポスト。

1時間で5万いいね。

3時間で10万いいね。


コメント欄には、感謝と共感の声が殺到した。


『これ、全部当てはまる男と付き合ってた...別れてよかった』


『店員への態度、本当に大事! 見抜き方ありがとうございます!』


『前世で学んだって、どういうこと!? 気になる!』


『フォローしました! 続き楽しみにしてます!』


明日香のフォロワーは、1週間で1万人を突破した。


婚活戦略会議の結成


その週末、明日香は恵美と由香を自宅に招いた。


「今日は『婚活戦略会議』を開催します!」


明日香が宣言すると、恵美と由香は笑った。


「なにそれ、カッコいい!」


「でも必要だよね。私たち、今までなんとなく婚活してたけど、戦略が必要だと思う」


三人はリビングに座り、お菓子とお茶を囲んだ。


「まず、恵美。例の彼とはどうなった?」


明日香が尋ねると、恵美は深く溜息をついた。


「あのね、本当に助かったの。明日香の投稿見て、ハッとしたんだよね」


「どういうこと?」


「実はね、先月から付き合ってた男性がいたの。最初はすごく優しくて、マメで、理想的だと思ってた」


「ああ、『最初だけ優しい』パターン?」


「そう! 明日香の投稿見て、注意深く観察してみたの。そしたらね...」


恵美が語ったエピソードは、まさに典型的な地雷男のパターンだった。


最初の1ヶ月は、毎日LINEをくれて、デートプランも完璧で、プレゼントもくれた。


だが、恵美が仕事で忙しくなり、「今週は会えないかも」と伝えた途端、態度が豹変した。


『忙しいなら会う意味ないよね』

『俺のこと、大事じゃないんでしょ?』

『他に男いるんじゃないの?』


恵美が必死に説明しても、彼は聞く耳を持たなかった。


そして最終的に、『もういいわ。こっちから願い下げ』と一方的に連絡を絶った。


「最初の優しさは、全部計算だったんだよね。私が振り向いたら、途端に態度変わった」


「典型的な支配型だね。別れて正解だよ」


明日香が言うと、恵美は頷いた。


「うん。明日香のおかげで、早めに気づけた。ありがとう」


次に、由香が話し始めた。


「私もね、似たような経験したの」


由香が出会ったのは、婚活アプリで知り合った男性だった。


プロフィールは完璧。写真もイケメン。メッセージも丁寧。


初デートは高級レストラン。彼は紳士的で、会話も弾んだ。


だが、食事中に店員が注文を間違えた時、彼の本性が現れた。


「おい、これ注文と違うんだけど。ちゃんと確認しろよ」


店員が謝罪して料理を下げると、彼は由香に向かって言った。


「最近の店員、レベル低いよね。教育がなってない」


由香はその瞬間、明日香の投稿を思い出した。


『店員への態度を見ましょう。地位の低い人に横柄な男は、将来あなたにも同じ態度を取ります』


由香は食事を終えた後、丁寧に断った。


「ごめんなさい、ちょっと価値観が合わないかもしれません」


彼は驚いた様子だった。


「え、何が? 俺、何か悪いことした?」


「いえ、ただ...店員さんへの態度が、ちょっと気になりました」


彼の顔が一瞬、歪んだ。


「は? そんなことで? 神経質すぎない?」


その反応が、すべてを物語っていた。


由香はそのまま関係を断った。


「明日香の投稿のおかげで、地雷を踏まずに済んだ。本当にありがとう」


明日香は二人の話を聞きながら、静かに微笑んだ。


前世では、誰も助けてくれなかった。


でも今、自分が誰かを助けている。


この感覚が、何よりも嬉しかった。


「じゃあ、これからも定期的に『婚活戦略会議』を開こう。情報共有して、お互いに助け合おう」


「賛成!」


「いいね! じゃあ次回は来月?」


三人は笑顔で乾杯した。


フォロワー10万人突破


明日香のXアカウントは、驚異的な速度で成長していった。


毎日、婚活に関する投稿を続けた。


『デートプランの提案がない男性は要注意。「どこでもいいよ」と言う男性は、あなたに興味がないか、決断力がないかのどちらかです』


『「料理できる?」と聞いてくる男性に注意。家事を女性の役割と決めつけている可能性があります。本当に対等なパートナーを求めるなら、「僕も料理好きだよ」と言える男性を選びましょう』


『褒め方にも注意。「可愛いね」「綺麗だね」だけで褒める男性より、「話しやすい」「考え方が素敵」と内面を褒める男性の方が、長期的に良いパートナーになります』


投稿のたびに、数万のいいねとリポストがついた。


そして、投稿開始から1ヶ月後、フォロワーが10万人を突破した。


明日香は感謝の投稿をした。


『フォロワー10万人突破しました。本当にありがとうございます。私の投稿が、少しでも皆さんの婚活の助けになっていれば嬉しいです。これからも、地雷男の見抜き方、良い男性の見つけ方を発信していきます』


投稿には、20万いいねがついた。


そして、その夜。


明日香のDMに、一通のメッセージが届いた。


送信者は「株式会社ライフブックス」。大手出版社だった。


『橋本明日香様。突然のご連絡失礼いたします。弊社編集部の田村と申します。いつも投稿を拝見しております。ぜひ、書籍化のご相談をさせていただけないでしょうか?』


明日香の手が、震えた。


「書籍化...?」


彼女はすぐに返信した。


『ご連絡ありがとうございます。ぜひ、お話を伺いたいです』


翌週、明日香は出版社を訪れた。


編集者の田村は、30代の女性だった。


「橋本さん、お会いできて嬉しいです。実は、社内であなたの投稿が話題になっていまして」


「本当ですか?」


「ええ。特に女性社員からの支持が絶大で。『これ、絶対本にすべき』という声が上がって、今回のオファーになりました」


田村は企画書を取り出した。


『元悪役令嬢の婚活サバイバル術〜前世で学んだ、地雷男の見抜き方〜』


「タイトルはこんな感じで考えています。内容は、Xでの投稿をベースに、もう少し詳しいエピソードと解説を加える形です」


明日香は企画書を読みながら、涙が込み上げてきた。


前世では、誰も私の言葉を信じてくれなかった。


でも今、こんなにも多くの人が、私の言葉を必要としてくれている。


「ぜひ、お願いします」


明日香は深々と頭を下げた。


こうして、書籍化プロジェクトが始動した。


拓也との関係


その間、明日香は拓也と定期的に連絡を取り合っていた。


彼は焦らず、誠実に、明日香との関係を築いてくれた。


ある休日、二人はお台場でデートをした。


海沿いを歩きながら、拓也が言った。


「明日香さん、Xで話題になってますよね」


「え、知ってるんですか?」


「うん。実は、フォローしてるんです。すごく面白いし、勉強になります」


明日香は少し恥ずかしそうに笑った。


「ありがとうございます。でも、男性からしたら嫌な内容かもしれませんね」


「いや、全然。むしろ、『自分は大丈夫かな』って反省しました」


拓也は真剣な表情で言った。


「店員さんへの態度とか、意識してなかったけど、確かに大事ですよね。これからは気をつけます」


明日香は拓也の横顔を見つめた。


この人は、本当に誠実だ。


自分の非を認められる。成長しようとする姿勢がある。


前世で出会いたかった人。


「拓也さん、実は...書籍化の話が来たんです」


「え、本当ですか! それはすごい!」


拓也は心から喜んでくれた。


「でも、大丈夫ですか? 本を出したら、もっと忙しくなりますよね」


「はい。でも、やりたいんです。私の経験が、誰かの役に立つなら」


拓也は優しく微笑んだ。


「応援します。明日香さんの夢、叶えてください」


明日香は、心が温かくなるのを感じた。


この人となら、幸せになれる気がする。


第3章:元婚約者からの連絡、そして因果応報の幕開け


書籍『元悪役令嬢の婚活サバイバル術』は、発売1ヶ月で30万部を突破した。


書店では平積みにされ、SNSでも話題になった。


「婚活のバイブル」

「すべての女性に読んでほしい」

「男性も読むべき。反省した」


明日香のXアカウントのフォロワーは、15万人を超えていた。


テレビの情報番組からも出演オファーが来た。


明日香は、婚活コンサルタントとしての活動も始めていた。


個別相談、セミナー開催、企業向け講演。


かつての平凡なOLは、今や婚活業界の第一人者になっていた。


だが、そんな順風満帆な日々の中で、一通のDMが届いた。


「久しぶりだね、アスティリア」


送信者名は「藤堂フェルド」。


明日香の手が、震えた。


スマホを持つ手に力が入らない。


前世の第一王子、フェルディナント。


彼が、現世でも存在していた。


明日香は深呼吸をして、DMを開いた。


『久しぶりだね、アスティリア。いや、今は明日香か。君のアカウント、偶然見つけたんだ。「前世で婚約破棄された」という言葉を見て、もしかしてと思った。やっぱり君だったんだね。会えないかな?』


明日香は、しばらく画面を見つめていた。


前世の記憶が、鮮明に蘇る。


婚約破棄の舞台。


冷たい視線。


「貴女は私を愛していなかった」という言葉。


修道院での孤独。


毒の苦しみ。


そして、死。


明日香は涙を拭い、返信を打った。


『お会いしましょう。ただし、公共の場で。来週の土曜日、14時に渋谷のカフェ「ブルースカイ」でいかがですか?』


返信はすぐに来た。


『了解。そこで会おう』


再会


土曜日、14時。


渋谷のカフェ「ブルースカイ」。


明日香は窓際の席に座り、扉を見つめていた。


そして、彼が現れた。


藤堂フェルド。


前世の第一王子、フェルディナントの現世での姿。


彼は現世でも整った容姿を持っていたが、どこか疲れた表情をしていた。


目の下にクマがあり、髪も少し乱れている。


フェルドは明日香を見つけると、静かに歩み寄ってきた。


「久しぶり、明日香。いや、アスティリアと呼ぶべきかな」


「明日香で結構です。前世の名前は、もう使いません」


明日香の声は、冷静だった。


フェルドは向かいの席に座った。


しばらく、沈黙が流れた。


「君は、変わったね」


フェルドが口を開いた。


「前世では、いつも完璧で、隙がなくて、近寄りがたかった。でも今の君は...温かい」


「それは、前世での私が『完璧な令嬢』を演じていたからです。本当の自分を出せなかった」


明日香は静かに言った。


「でも今は違います。自分の意志で生きています」


フェルドは苦笑した。


「そうか。君は強いね。僕は前世の記憶に、ずっと苦しめられてきた」


「それは、私も同じです」


沈黙が流れた。


フェルドは、コーヒーカップを両手で包み込んだ。


「あの時、僕は間違っていた」


彼の声は、震えていた。


「君を婚約破棄したこと。修道院に送ったこと。クラリッサを信じたこと。全部、間違いだった」


「今さら謝られても」


明日香の声は、冷たかった。


「あなたは私を信じなかった。私が無実だと訴えても、聞く耳を持たなかった。エレナを愛していたのなら、最初から婚約しなければよかった」


「その通りだ」


フェルドは頭を下げた。


「僕は、自分の感情に正直になれなかった。王子としての責任と、エレナへの愛の間で揺れて、結局君を傷つけた」


「エレナは、どうしてるんですか?」


明日香が尋ねると、フェルドは苦しそうに答えた。


「前世では、結婚した。でも、幸せにはなれなかった」


「なぜ?」


「エレナは優しすぎた。僕が君を裏切ったことを、ずっと責め続けた。『アスティリア様は無実だった』と、何度も言った。そして、僕たちの関係は冷え切っていった」


フェルドは顔を覆った。


「エレナは、前世の終わりに病死した。最期に言ったんだ。『あなたは、アスティリア様に謝るべきだった』って」


明日香は、何も言えなかった。


エレナは、優しい人だった。


彼女もまた、前世で苦しんでいたのだ。


「だから、今度こそやり直したい」


フェルドは顔を上げ、明日香をまっすぐ見つめた。


「君と、もう一度。今度は、ちゃんと愛し合える関係を」


明日香は首を横に振った。


「ごめんなさい。私にはもう、大切な人がいます」


フェルドの顔が、強張った。


「そうか...それは、誰?」


「拓也さんという方です。誠実で、優しくて、私を尊重してくれる人です」


明日香は静かに言った。


「前世では、私は選べませんでした。公爵家の令嬢として、王家との婚約を受け入れるしかなかった」


「でも、現世では違います。私には選ぶ権利があります。そして、私は拓也さんを選びました」


フェルドは、しばらく黙っていた。


そして、静かに立ち上がった。


「そうか。それは、良かった」


彼の笑顔は、悲しげだった。


「幸せになってくれ、明日香。それが、僕にできる唯一の償いだから」


フェルドは会計を済ませ、店を出て行った。


明日香は一人、窓の外を見つめていた。


前世の因縁は、これで終わった。


彼女はXを開き、投稿した。


『前世で私を捨てた人に再会しました。謝罪されましたが、もう過去には戻れません。私には今、信じられる人がいます。過去を許すことと、やり直すことは別物です。自分の幸せを、自分で選ぶ権利があります』


投稿は1時間で15万いいねを記録した。


コメント欄には、共感と応援の声が溢れていた。


『明日香さん、強い!』


『過去に囚われない姿勢、素敵です』


『自分で選ぶ権利、本当にその通り』


明日香はスマホを閉じ、深く息を吸い込んだ。


前世は終わった。


これからは、現世の幸せを掴む。


聖女エレナからの連絡


その夜、明日香のもとに新しいDMが届いた。


送信者名は「聖川エレナ」。


明日香の心臓が、高鳴った。


まさか...


DMを開くと、そこには丁寧な文章が綴られていた。


『明日香さん、初めまして。聖川エレナと申します。私も、前世の記憶を持っています。グランディア王国の聖女エレナとして生きていました。お会いして、お話しできないでしょうか?』


明日香はすぐに返信した。


『エレナ様...お久しぶりです。ぜひ、お会いしましょう』


数日後、二人は都内のカフェで再会した。


エレナは現世でも、柔らかい雰囲気を持つ女性だった。


「明日香さん、お会いできて嬉しいです」


「こちらこそ。エレナ様も、前世の記憶を?」


「はい。目覚めたのは、3年前です」


二人は静かに、前世の話を始めた。


エレナは、前世での苦悩を語った。


「私、フェルディナント様を愛していました。でも、あなたを傷つけたくなかった」


「エレナ様は、何も悪くありません」


「いいえ。私が王宮に来なければ、あなたは婚約破棄されなかった。修道院に送られなかった。私のせいです」


エレナの目に、涙が浮かんだ。


「ずっと、謝りたかったんです。でも、前世では叶わなかった」


明日香はエレナの手を握った。


「エレナ様、あなたは何も悪くありません。悪いのは、私を陥れたクラリッサと、私を信じなかったフェルディナント様です」


「でも...」


「それに、前世があったから、今の私がいます。あの経験がなければ、人を見抜く力も、誰かを助けたいという気持ちも生まれませんでした」


明日香は優しく微笑んだ。


「だから、ありがとうございます。エレナ様のおかげで、今の私がいます」


エレナは涙を拭いた。


「明日香さん...ありがとうございます」


二人はしばらく、前世の思い出を語り合った。


そして、エレナが切り出した。


「実は、お伝えしたいことがあります」


「何でしょう?」


「クラリッサのことです」


明日香の表情が、一瞬強張った。


「彼女も、現世にいます。そして...また、人を傷つけています」


エレナが語ったのは、衝撃の事実だった。


前世でアスティリアを陥れたクラリッサは、現世でも「倉橋りさ」として生きていた。


そして、彼女は婚活詐欺を繰り返していた。


「彼女は複数の男性に同時にアプローチして、結婚を餌に高額なプレゼントや金銭を要求しています。被害者は、既に10名以上います」


「なんてことを...」


「被害者の会ができています。でも、彼女は巧妙で、証拠を残さないんです」


エレナは資料を取り出した。


そこには、倉橋りさの手口が詳細に記されていた。


婚活アプリで複数の男性と同時交際

「結婚資金のために」と称して金銭を要求

高額なプレゼントを要求(ブランドバッグ、アクセサリーなど)

交際が深まると、突然連絡を絶つ

被害総額は推定2,000万円以上


明日香は資料を読みながら、怒りが込み上げてきた。


前世でも、現世でも、彼女は人を傷つけ続けている。


「私に、何かできることはありますか?」


明日香が尋ねると、エレナは頷いた。


「明日香さんの影響力があれば、多くの人を救えるかもしれません」


「わかりました。協力します」


明日香は即座に決断した。


因果応報の始まり


翌日、明日香は弁護士と連携して、倉橋りさの被害者たちから証言を集め始めた。


同時に、Xで注意喚起を行った。


『婚活詐欺に注意してください。「結婚を前提に」と言いながら、高額なプレゼントや金銭を要求する女性がいます。本当に結婚を考えている人は、相手に経済的負担をかけません。以下、具体的な手口を紹介します』


『婚活詐欺の手口①:複数の男性と同時交際し、「あなたが一番」と言いながら、他の男性にも同じことを言っています』


『婚活詐欺の手口②:「結婚資金のために」と称して金銭を要求。本当に結婚する気があるなら、二人で貯金するはずです』


『婚活詐欺の手口③:高額なプレゼントを要求。「誕生日だから」「記念日だから」と理由をつけますが、頻度が異常です』


『婚活詐欺の手口④:家族や友人に会わせない。「まだ早い」と言い続けます。本当に結婚する気があるなら、早めに紹介するはずです』


『婚活詐欺の手口⑤:突然連絡を絶つ。お金を受け取った後、音信不通になります』


投稿は大きな反響を呼んだ。


そして、被害者たちからの情報提供が殺到した。


明日香とエレナは、証拠を集め、警察に通報した。


数週間後、倉橋りさは詐欺罪で逮捕された。


ニュースでも報道され、彼女の顔写真が公開された。


被害総額は3億円。


被害者は30名以上。


裁判では、懲役8年の実刑判決が下された。


明日香はXに投稿した。


『因果応報は必ず訪れます。でも、それを待つだけではダメ。行動することで、未来は変えられます。今回、多くの被害者の方々が勇気を出して声を上げてくれました。彼らの勇気が、未来の被害を防ぎました』


投稿は50万いいねを突破した。


コメント欄には、感謝の声が溢れていた。


『明日香さんのおかげで、彼女を止められました』


『被害者の一人です。本当にありがとうございました』


『因果応報、本当に存在するんですね』


明日香のフォロワーは、20万人を突破していた。


第4章:プロポーズ、そして新しい人生の始まり


倉橋りさの逮捕から半年後。


明日香の生活は、大きく変わっていた。


書籍『元悪役令嬢の婚活サバイバル術』はシリーズ化され、累計150万部を突破。


婚活コンサルタントとしての活動も軌道に乗り、個別相談やセミナーの予約は数ヶ月待ちの状態だった。


そして、会社を設立することにした。


社名は「ローゼンフェルト婚活コンサルティング」。


前世の名前を、会社名に込めた。


スタッフは5名。恵美と由香も、明日香の会社で働くことになった。


年商は5,000万円を超え、事業は順調に拡大していた。


そして、拓也との関係も深まっていた。


ある休日、二人は初めて一緒に訪れた海辺の公園にいた。


夕日が海を染め、波の音が静かに響いている。


「明日香さん」


拓也が、静かに呼びかけた。


「はい?」


「僕はあなたの過去を全部知ってるわけじゃない。前世のこととか、婚約破棄のこととか、詳しくは聞いてない」


「はい」


「でも、あなたが誰かを助けたいと思う気持ち、誠実に生きようとする姿勢、それをずっと見てきました」


拓也は明日香の手を取った。


「結婚してください」


明日香の目が、大きく見開かれた。


「でも、急がなくていいです。結婚式も、あなたのペースで。ただ、一緒に人生を作っていきたいんです」


明日香の目から、涙がこぼれた。


前世では、選べなかった。


公爵家の令嬢として、王家との婚約を受け入れるしかなかった。


でも今、自分の意志で選べる。


「はい。よろしくお願いします」


明日香は泣きながら、拓也の胸に飛び込んだ。


二人は抱き合い、夕日を見つめた。


Xでの報告


その夜、明日香はXに投稿した。


『ご報告です。婚約しました。前世では選べなかった幸せを、今度は自分で掴みました。婚約破棄されたくらいで、人生は終わりません。次の幸せは、必ず来ます。自分で選ぶ権利を、大切にしてください』


投稿には、婚約指輪の写真が添えられていた。


投稿は瞬く間に拡散され、100万いいねを記録した。


コメント欄には、祝福の声が殺到した。


『おめでとうございます!』


『涙が止まりません。本当に良かった!』


『明日香さんの幸せ、心から応援しています!』


『次は私も頑張ります!』


明日香は、一つ一つのコメントに目を通しながら、涙が止まらなかった。


前世では、誰も祝福してくれなかった。


でも今、こんなにも多くの人が、私の幸せを喜んでくれている。


フェルドからのメッセージ


翌日、フェルドからDMが届いた。


『おめでとう、明日香。君の幸せを、心から願っています。僕は前世で君を傷つけた。その罪は、一生背負って生きていく。でも、君が幸せになったことが、唯一の救いです。ありがとう』


明日香は、静かに返信した。


『ありがとうございます。フェルドさんも、幸せになってください。前世は終わりました。これからは、それぞれの人生を生きましょう』


フェルドからの返信はなかった。


でも、それでいいと思った。


1年後の結婚式


婚約から1年後、明日香と拓也は結婚式を挙げた。


場所は、海の見えるチャペル。


ゲストは50名ほど。家族、友人、仕事仲間。


そして、エレナも来てくれた。


式は温かく、笑いと涙に溢れていた。


明日香が父親とバージンロードを歩く時、涙が止まらなかった。


前世では、この瞬間はなかった。


でも今、自分の意志で選んだ人と、誓いを交わせる。


拓也が誓いの言葉を述べた。


「明日香さん、あなたと出会えて本当に良かった。これから先、どんな困難があっても、一緒に乗り越えていきます。一生、大切にします」


明日香も誓いの言葉を述べた。


「拓也さん、あなたは私に、選ぶ自由を与えてくれました。前世では得られなかった幸せを、あなたと一緒に作っていきます。一生、愛します」


二人はキスをし、ゲストは拍手で祝福した。


披露宴では、恵美がスピーチをした。


「明日香は、私の憧れです。彼女は前世で辛い経験をしたけど、それを乗り越えて、今こんなにも多くの人を助けています。私も明日香のおかげで、地雷男を避けることができました。明日香、本当にありがとう。そして、おめでとう!」


会場は温かい拍手に包まれた。


エピローグ:3年後の幸せ、そして新しい命


結婚から3年。


明日香と拓也の間には、娘が一人生まれていた。


名前は「希望ちゃん」。


前世では得られなかった希望を、この子に託した。


希望は今、1歳半。まだ言葉は少ないが、よく笑う子だった。


「ママ!」


希望が明日香に向かって手を伸ばす。


明日香は娘を抱き上げ、優しくキスをした。


「希望ちゃん、大好きよ」


拓也が仕事から帰ってくると、希望は嬉しそうに「パパ!」と叫んだ。


「ただいま。希望、パパのこと覚えてた?」


拓也が娘を抱き上げると、希望は笑顔で頬をすり寄せた。


三人は、リビングで団欒の時間を過ごした。


事業の拡大


明日香の会社「ローゼンフェルト婚活コンサルティング」は、順調に成長していた。


スタッフは15名に増え、全国5都市に支社を展開。


年商は1億円を突破し、業界でも注目される企業になっていた。


書籍『元悪役令嬢の婚活サバイバル術』シリーズは、累計200万部を突破。


第5巻まで発売され、それぞれがベストセラーになった。


テレビ出演の機会も増え、明日香は「婚活の専門家」として広く認知されるようになっていた。


Xのフォロワーは30万人を超え、投稿するたびに数十万のいいねがつく状態だった。


恵美と由香の結婚


恵美も由香も、それぞれ良い相手と結婚していた。


恵美は、明日香のセミナーで出会った誠実な男性と結婚。


由香は、職場で知り合った優しい男性と結婚。


二人とも、明日香の「地雷男の見抜き方」を活用して、良い相手を見つけた。


三人は今も、月に一度「婚活戦略会議」を開いている。


ただし、今は「人生戦略会議」に名前が変わっていた。


「明日香、希望ちゃん可愛すぎる!」


恵美が希望を抱っこしながら言った。


「私も早く子供欲しいな」


「恵美、もう妊娠してるんじゃない?」


由香が冗談めかして言うと、恵美は顔を赤らめた。


「実は...まだ確定じゃないけど、もしかしたら」


「え! 本当!?」


三人は歓声を上げた。


「由香は?」


「私はまだ。でも、そろそろ考えてる」


三人は、これからの人生について語り合った。


エレナとの関係


エレナは現世で、看護師として働きながら、被害者支援のNPOを立ち上げていた。


「傷ついた人を癒す」というエレナの使命は、現世でも変わらなかった。


明日香とエレナは、時折連絡を取り合う仲になっていた。


ある日、エレナから連絡が来た。


『明日香さん、お茶しませんか?』


二人はカフェで再会した。


「明日香さん、娘さんのこと、Xで見ました。可愛いですね」


「ありがとうございます。エレナ様も、お元気そうで」


「ええ。NPOの活動、充実しています」


エレナは穏やかに微笑んだ。


「前世では、私は何もできませんでした。アスティリア様を助けることも、フェルディナント様を止めることもできなかった」


「エレナ様...」


「でも、現世では違います。私は、傷ついた人を助けることができる。それが、私の贖罪だと思っています」


明日香はエレナの手を握った。


「エレナ様は、何も悪くありません。それに、あなたは既に多くの人を助けています」


「ありがとうございます。明日香さんのおかげで、私も前に進めました」


二人は、前世と現世の違いについて語り合った。


そして、お互いの幸せを確認し合った。


フェルドのその後


フェルドは、前世の記憶に苦しみながらも、少しずつ立ち直っていた。


彼は現世で建築士として働いており、仕事には真摯に取り組んでいた。


恋愛はしていない。明日香を忘れられないのだ。


だが、彼は明日香の幸せを心から願っていた。


明日香の結婚報告を見た時、彼は静かに祝福のメッセージを送った。


そして、娘が生まれたことを知った時も、祝福のメッセージを送った。


『おめでとう。君の幸せが、僕の救いです』


明日香は、フェルドの優しさを感じ取った。


彼もまた、前世の過ちから学び、成長しているのだと。


ある日の投稿


ある休日、明日香は久しぶりに長文のX投稿をした。


『3年前、私は前世の記憶を取り戻しました。異世界で、悪役令嬢として生きて、婚約破棄され、修道院送りになり、毒殺されました』


『正直、最初は辛かったです。なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか、理解できませんでした』


『でも、その経験があったから、今の幸せがあります』


『前世で学んだ「人を見抜く力」があったから、地雷男を避けることができました』


『前世で得られなかった「選ぶ自由」を、現世では手に入れることができました』


『前世で誰も助けてくれなかった経験があったから、今、誰かを助けたいと思えるようになりました』


『現世では、自分で選べます。誰と一緒にいるか。どんな人生を歩むか。誰を信じるか』


『もし今、辛い恋愛や婚活で悩んでいる人がいたら、伝えたい』


『あなたには選ぶ権利があります。我慢する必要はありません。次の一歩を踏み出す勇気を持ってください』


『私は前世で失敗しました。でも現世で、最高の幸せを掴みました』


『あなたにも、必ずできます』


『婚約破棄されたくらいで、人生は終わりません。次の幸せは、必ず来ます』


『信じて、前に進んでください。応援しています』


投稿は200万いいねを記録し、多くの人々に勇気を与えた。


コメント欄には、感謝の声が溢れていた。


『明日香さんの言葉に救われました』


『私も頑張ります!』


『本当にありがとうございます』


明日香は、一つ一つのコメントに目を通しながら、涙が込み上げてきた。


前世では、誰も私の言葉を信じてくれなかった。


でも今、こんなにも多くの人が、私の言葉を必要としてくれている。


ある夕暮れ


夕暮れ時、明日香は娘を抱きながら、拓也と並んで海を眺めていた。


「ねえ、明日香」


「なに?」


「幸せ?」


明日香は微笑んだ。


「うん。こんなに幸せでいいのかなって思うくらい」


拓也が優しく笑った。


「それは良かった。これからもずっと、一緒にいようね」


「うん」


希望が、二人の間で笑った。


海風が、三人を優しく包み込んだ。


前世で婚約破棄された悪役令嬢は、現世で最高の幸せを掴んだ。


誰にも奪われない、自分で選んだ幸せを。


そして、その幸せを、多くの人と分かち合っている。


明日香は空を見上げた。


もしかしたら、前世のアスティリアも、今の私を見て微笑んでくれているかもしれない。


「ありがとう、アスティリア。あなたの経験が、今の私を作ってくれた」


明日香は心の中で、前世の自分に感謝した。


そして、新しい人生を、全力で生きることを誓った。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

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