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第3話 双子ちゃんの『お母様』

 アクアはじっと動けずにいるクラウディアに近づくと、品定めをするようにじろじろと見つめる。

 そして、腰に手を当てて目を細めていう。


「ふ~ん、今度はずいぶん若い『お母様』なのね」

「え……?」


(「今度」? 私以外にもお母様がいる?)


 この国では重婚は王国憲法で違反となっている。

 まさかその国のトップである王族がその違反をするはずがない。


(いや、でも……なにかしらで事情が……)


 顎に手を当てて考えて考え込んでいると、それをつまんないというようにアクアが言う。


「たくっ! もうっ! そんな辛気臭い顔しないでよ! こっちが暗くなる」

「す、すみません……」


 小さな子どもに謝罪するような事態はクラウディアの人生史上初めてであった。


「アクア……だめだよ、そんなこといっちゃ……」


 そんな強気なアクアと正反対に、姉にぴったりとくっついて小声で話すレオはかなり内気そう。

 消え入りそうな声と弱々しい表情は何かに怯えているようだった。


(この子達と暮らすのよね……? まずはご挨拶したほうがよいかも)


 クラウディアは双子に視線を合わせるようにしゃがむと、にっこりと笑う。


「初めまして。クラウディアと申します。殿下に嫁いで……えっと、お二人と一緒に暮らすことになりまして」


 普段、冷静で度胸もあり様々なことにも対応しきる彼女であるが、子どもと触れ合うのは初めてで少し戸惑ってしまう。


(お母様……なのよね?)


 彼女はそう告げようとした時、アクアが牽制するように言う。


「あなたと一緒に暮らしてあげてもいいわ。でも、『お母様』とは呼ばない」

「え……?」


 アクアがそう言うと、ぬいぐるみとぎゅっと抱きしめて口元を隠しながらレオが告げる。


「『お母様』は私たちを産んだノアお母様だけ……」


 その言葉を聞いてクラウディアはハッとする。


(そうだ。当たり前だ、私が産んだわけではない。彼女たちにお母様と呼ばれる資格はない)


 クラウディアは頷くと、彼女らに声をかける。


「もちろんです。私のことはクラウディアと呼んでください」


 そこまで話してジベルが双子のことをみやりながら、クラウディアに説明する。


「お二方のお母君であるノア様は、一年前に亡くなっております」


(そんな……殿下と離婚とかではなくまさかお亡くなりになってたなんて……でも、そうしたら、ノア様は殿下の奥様だったわけよね? 殿下はどうして私と結婚したのかしら……)


 クラウディアはこの二人を抱きしめたい気持ちでいっぱいであった。

 しかし、今日会ったばかりの自分に過度に接されても嫌だろう。

 そう考えてその手を引っ込めた。


「アクア様、レオ様」

「なあに?」

「今日からご一緒に過ごさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 クラウディアは二人に向かって、お辞儀をした。

 あまりに綺麗で美しい所作のカーテシーに、アクアとレオは目を丸くする。

 アクアは一歩前に出ると、同じように可愛らしくも整った所作でお辞儀した。


「当屋敷の留守を預かる者として、あなたを歓迎します。クラウディア」


 その姿はさっきまでの無邪気な様子とは違って、凛としている。


(この子の大人っぽさはなに? こんなに強い理由はなに? 両親ともいない状態でこんなにも凛とできる子どもがいるなんて……)


 レオと同じ青い瞳はクラウディアをじっと見つめている。

 あまりの美しく無垢な瞳に吸い込まれそうになった。


「早速ですが、私たちとゲームをしましょう?」

「ゲーム?」

「どちらが私か当てるゲーム。私とレオが同じ格好をするから見分けられたらあなたの勝ち、見分けられなかったら……」


(見分けられなかったら……?)


 クラウディアが息を飲んだ瞬間、アクアの顔からふっと笑顔が消えて冷たい声で言い放つ。


「見分けられなかったら、すぐにあなたにはこの家を出て行ってもらいます」


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