5話
鬼は白炎をくらい再び外へ吹きとばされた。
度重なるダメージで塔はもう崩壊を始めている。
今まで意識して出すことが出来なかった白い炎っだったけど、今ならなぜか出来るような気がした。
「うっ…魔力が……」
足から力が抜けふらりと膝をつく。
全身全霊。すべての魔力をあの一発に込めた。これを受けても無事ならば、もう僕たちになすすべはない。
土埃が晴れる。鬼は庭を突き抜け、向こうの木々に受け止められ倒れていた。
体から煙を出し、額に這えた二本の角のうち右の一本が半分ほどで折れていた。
どうみても、誰が見ても瀕死。もう立ち上がることは無い。俺たちは皆そう思っていた。
「グぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ
「く……ッ」
「耳が……!」
「くッぅぁぁ……」
その笑い声は、まるで地獄の怨讐を凝縮したかのような怨念に満ちていた。
決して大音量というわけではない。それでもこの聞いているだけで発狂しそうな声は、鼓膜を破り、脳を揺さぶり、心臓を握りつぶそうとしてくる。
「ぐ、ぐぎゃぎゃぎゃ、ぐぎゃぐぐぐぐぁぁぁああ!!!」
◇
マジかよ……あれをくらってまだ立てるのか⁉
立ち上がった地獄の鬼は、千鳥足だが一歩ずつ着実に進んでくる。
「も、もう一発…!魔法を……ッ!!」
ハルがもう一度魔法を構築しようとするが、魔力が足りない。魔法は撃てない。
「ぎゃぎゃぎゃ」
鬼は笑いながらなおもち近づいている。
今だ回復せず、朧げな意識の中で、俺は右手を持ち上げる。
たとえ立てなくとも俺ならまだ魔法を撃てる。奴は明らかに致命傷を与えたハルの方を警戒している。当然対してダメージを与えてない俺の攻撃など眼中にないだろう。
俺が使える魔法は雷と水。威力の高い雷魔法を構築し、右手に集約させる。
たとえ魔法を撃ったとしても全力のハルの魔法で倒せない敵に、火力不足の俺がダメージを与えられないことは分かってる。加えて万全には程遠い。いつものように狙いを定めて、ピンポイントで弱点を狙うなんてできそうもない。
だとしても……
もうあと30歩ほど。
体中からありったけの魔力を集め雷に変換する。
諦めるなんて選択肢は……ッ
いくらあいつが瀕死とはいえ、今の俺の魔法じゃ倒せない。そんなことは分かってる。
分かっていても……
死をただ待つなんてことは、絶対に……
「ねぇんだよ……ぉぉッ!!!」
雷が、放たれる―――




