補習三日 英語からの
キーンコーンカーンコーン……
時間が助けてくれたかのように、チャイムが鳴った。
今日はタイムアウトだ。
「しょうがねえ。できたところまででいいから出せ。単語調べだけでも、まあまあマジメにやってたもんな。ちょっとレベル高すぎたって、英語の先生にはフォロー入れておいてやるよ」
「尾路さんサンキュー」
「いいところあるじゃん」
「頼みまーす」
「ありがとうございます」
「お願いします」
わたしも、四人のあとに言ってみた。
「だからって、わけじゃないけど、お前達に大切なお知らせがある」
尾路先生は改まって、教卓に置いてあったクリアファイルからプリントを出した。
「連絡行ってる思うけど、今日は補習最終日なのでスペシャル授業だ。十分間の休憩のあと話をするから、これ、目を通しておいてくれ」
先生は課題プリントのように二逆に任せることなく、一人一人に手渡して、十分間後に戻ると言って教室を出て行った。
なんだろう?
事前に伝えられてたので、とくに文句を言う奴も出ず、みんなはプリントに目をやった。
脚本?
タイトルは『星のおじさま』
尾路先生が書いたのだろうか。とりあえず読んでみた。
「星の王子さま」を下敷きにしている、つもりらしい。
旅人と王子さまが出会うシーンは、なんとなく小学校の学芸会的な雰囲気があったけど、最後は酷すぎる。その物語は小二以下だった。
まだ意味も無くおっぱいボヨヨン言ってる方が笑える。
だけど、配役がいい。
先生が勝手に決めた配役が、いい。
絶対にやりたくないけど、これをマジメに読んでいる五人をわたしは妄想した。
ファンファンファンファン……
「星のおじさま」
旅人………二逆
おじさま…多田
バラ………渡辺
多星人……山田
キツネ……作間
旅人「わたしは、この本をある大人に捧げる。 その大人は昔、一度は子供だったのだから、わたしは、その子供に捧げたいと思う。 ラジオドラマ『星のおじさま』」
バラ「きゃー助けて!!」
多星人「ははははっ。この花は戴いた。返して欲しければ、俺の家来になって、おれを褒め ちぎるがいい」
おじさま「なんだと、貴様は何者だ!」
多星人「俺か? 俺は複数の星の王であり実業屋であるちょっと自惚れ屋な地理学者、点燈夫呑み助だ!!」
おじさま「一体何ものなんだ」
多星人「さあな。お前の大事にしているこのバラの花、戴いていくぞ」
おじさま「いいよ」
多星人「えーー」
バラ「いやよ、いやよ、わたしくし、こんなのいや」
おじさま「最近のバラは僕への文句が多すぎる。 一緒にいすぎて愛されることが当たり前になって、僕の愛が分からなくなっているんだ。きっと別れた方がいい」
多星人「そうか、じゃあ君たち二人は愛を知るために別れるんだな」
おじさま「ああ、きっと離れれば分かるさ」
バラ「尾路さま……」
おじさま「元気で」
多星人「よし、では遠慮なく戴くー。もう返してって言ってもダメだからねー」
おじさま「いいんだ、これで。これがお互いのためさ」
キツネ「尾路さま」
おじさま「キツネ」
キツネ「大切なものは目に見えない」
おじさま「そう、だね……」
キツネ「お、おじさまぁあああ!!」
旅人「おわり」
酷すぎる。
酷すぎる。
でも、タダシ君と共演ならどんな話でもいい。
別れ話を切り出されるけど、わたしが一緒に居すぎてタダシ君に愛されていることが当たり前になってるなんて、なんて贅沢な設定。
この練習、想像したら楽しすぎる。