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297話─決戦の火蓋は落とされた

「纏めて相手をしてあげましょう。我が魔法を受けてみよ! スパークリングボム!」


「ハッ、今更そんな魔法食らわへんわ! 蠍忍法、砂塵防壁の術!」


 コリンたちの戦いが行われている間にも、星騎士と分身の戦いは続く。とはいえ、やはり数の差による優劣は大きい。


 フィニスの分身たちは、一撃必殺の切り札で全員を葬り去ることで主の手を煩わせず、世界消滅という大仕事に取り掛かれるようにするつもりだった。


 だが、予想もしていなかった回避方法でジャッジメント・ピラーを避けられたことで綻びが生まれる。足並みが乱れ、そして……。


「も~、しつこいね! そんなにボクに殺されたいわけ!?」


「それは無理だヨ。死ぬのはお前の方だからネ! ご先祖サマのカタキ、ここで討たせてもらうヨ!」


「行くわよフェンルー! 歌魔法、ブレイブメンマーチ! からの……処女星奥義! 禍劇・鎖の王の悲劇!」


「これで終わりダ、覚悟! 白羊星奥義、活殺天地破断衝!」


 自分たちの先祖……の、運命変異体を殺したインサニティを、イザリーとフェンルーが追い詰める。イザリーの奥義が炸裂し、相手の動きを封じる。


 そして、フェンルーが攻撃を仕掛け……狂気の使徒の命脈を絶つ、必殺の一撃を叩き込んだ。


「こんな、こんな……! 下等生物なんかに、このボクがぁぁぁぁぁ!! う、がふっ!」


「地獄に落ちなさい。そして、ご先祖様たちに永遠に詫び続けなさい、インサニティ!」


 鎖で拘束されたところにフェンルーの奥義を食らったインサニティは、そのまま死亡する。彼女の死を皮切りに、次々と分身たちが倒されていく。


「ぐっ、おのれ……小賢しい奴らめ!」


「小賢しくて結構。お坊ちゃまの邪魔はさせません。蛇遣星奥義……ヴェノムテイル・ドリラー!」


「このまま仕舞いにさせてもらうで! 天蠍(てんかつ)星奥義、モータルハート・スティンガー!」


「ぐ……があっ! ふ、いい気になっていればいい……我らは死したのち、フィニス様に還元される……。我らの集めた、情報と共に……」


 続いて、マリアベルとエステルのコンビがヘイトを打ち倒した。これで、残るは三人。戦いは依然として星騎士たちが有利だ。


「おい、まずいぞ。これは想定外だ……どうする、クレイヴィン」


「決まっているでしょう。今私たちが為すべきは彼らの殲滅。なれば、もうその手段は一つのみ。レイジ、ストライフ! スタージャマーを全開に! 奴らを道連れにしてやるのです!」


「なんだぁ? あいつら、とんでもねぇこと言い出したぞ!」


 残る三人は作戦を変更し、アシュリーたちを道連れに自爆することにしたようだ。ドレイクが危機を伝えたその瞬間、スタージャマーが発動する。


 星騎士たちは身体が思うように動かなくなり、退却も困難な状況になってしまう。そんな中、レイジたちはジャッジメント・ピラー発射のための魔力を暴走させる。


「あばよ、ゴミども。オレたちと一緒に地獄に落ちるんだな!」


「文句があるなら、あの世で受けて立ってやる。だから安心して死ぬといい」


「冗談じゃないぞ、こんなところで死んで……クソッ、身体が動かない!」


「さようなら、フィニス様。私たちは……死してあなた様の助けとなりましょう」


 魔力が解き放たれ、まばゆい閃光がアシュリーたちを包み込む。その最中、ビーコンが作動する。門の向こうから飛びだしてくる陰を視界の端に収めながら、星騎士たちは閃光に吞まれていった。



◇─────────────────────◇



 その頃、ヴァスラサックの城の廃墟では激しい戦いが繰り広げられていた。コリン&コーディのコンビと、フィニスの攻撃がぶつかり合う。


 星の力を解放したコリンたちと、アブソリュート・ジェムの力を全開にしたフィニス。双方共に、一切容赦などしない。


「食らえ! ディザスター・ランス!」


「セイクリッド・スラッシャー!」


「ムダなことよ。破壊の波に呑まれ消えろ! アメジスト・ブレイカー!」


 コリンたちの攻撃を、フィニスは『破壊のアメジスト』によって生み出した衝撃波で相殺していく。それに加え、反撃を叩き込む。


 紫色の衝撃波が無数に放たれ、コリンたちを滅ぼさんと飛来していく。コリンたちは防御魔法を多重に展開し、攻撃を凌ぐ。


「全く、面倒なものよ。いつまでも調子に乗ると、恥をかくということを教えてやる。ディザスター・スライム【人食い鮫(メガマウス)】!」


「む、これは……チィッ!」


 コリンはこっそりと闇のスライムを放ち、攻撃に夢中になっているフィニスの足下に送り込む。そのまま巨大な鮫に変え、奇襲を行う。


 が、寸前で察知したフィニスは攻撃を止め、サイドステップで攻撃から逃れる。改めて攻撃を行おうとするが、そうはいかない。


「甘いわ! 食らいなさい、セイクリッド・ストラトス!」


「ぐっ! なるほど、あのサメは囮……本命はお前か」


「このまま心臓をぶった切ってやるわ! 覚悟しなさい、フィニス!」


 コリンの攻撃は、相手の視線と注意を逸らさせるための囮。フィニスの移動先を読んだコーディが急接近し、剣を突き刺した。


 後はこのまま剣を振り払い、心臓を両断すれば勝てる……はずだった。本来であれば。だが、すでにフィニスは『時間のルビー』を手中に納めている。


「よく練った作戦だ。だが! 今の私を倒すなら、即死させるべきだったな! リバースタイム!」


「!? こ、これは! 時間が……巻き戻されておるのか!?」


「まずいわ、このままじゃ──」


 コーディがトドメを刺すよりも早く、フィニスが左手を握る。すると、『時間のルビー』が輝きを放ち、時を巻き戻し始めた。


 闇のスライムが放たれた瞬間まで時間が巻き戻り、再び時を刻み出す。だが、一つだけ違うことがある。すでに、フィニスが相手の動きを知っているということだ。


「全く、面倒なものよ。いつまでも調子に乗ると、恥をかくということを教えてやる。ディザスター・スライム【人食い鮫(メガマウス)】……ハッ! いかん、戻れコーディ!」


「ムダだ。『運命のダイヤモンド』を使うまでもない。お前たちの動きは、全て封じさせてもらう!」


 勿論、コリンたちもこの後何が起こるのかを知っている。だが、動き出した身体はそう簡単には止められない。


 フィニスは『破壊のアメジスト』を使い、闇のスライムを粉砕する。ついで、自分の元に向かってきていたコーディの首を掴み、拳を胴に叩き込む。


 遠くへ放り投げた後、今度はコリンを狙う。


「う、がはっ!」


「少し寝ていろ。起きる頃には全て終わっている。最後の安らぎを味わうがいい」


「おのれ、貴様よくも! 食らえ! ディザスター・ランス【流星雨(スターレイン)】!」


「ムダだ、何をしようとも『運命』が私を守る。今こそ」


「させ……ないわ! てやあっ!」


「なにっ!?」


 『運命のダイヤモンド』の力を発動し、以前のように因果律を捻じ曲げようとするフィニス。だが、ギリギリで意識を保っていたコーディが剣を投げた。


 それを避けるのに気を取られた一瞬、隙が生まれた。コリンは闇の槍を加速させ、一気に相手を仕留めようとする。


「今じゃ! くたばるがよい、フィニス!」


「チッ……仕方ない、この攻撃は甘んじて受けよう。注意をおろそかにした、私自身への罰としてな。だが!」


「え? きゃあっ!」


「お前たちにも相応の痛みを受けてもらう!」


「コーディ、あぶ……ふぐっ!」


 槍を食らい、全身を穿たれたフィニスは『空間のサファイア』の力でコーディの元へテレポートする。そして、彼女をコリン目掛けて投げた。


 直後、すかさず飛刃の盾を投げる。コーディを受け止めたコリンごと、二人纏めて盾の餌食にしたのだ。


「う、ぐ……」


「コリン、大丈夫……? ゲホッ、ゲホッ」


「なん、とかのう。じゃが……やはり、二人だけでは奴を仕留められぬか……」


 自分たちも敵も、激しい戦いで満身創痍。だが、フィニスには魔神の再生能力がある。やがて傷を癒し、万全な状態で攻めてくるだろう。


 そうなれば、コリンたちに勝ち目はない。仕掛けるならば、今しかないのだ。ラストチャンスを物にするべく、二人は互いを支え立ち上がる。


「ここで、負けるわけにはいかぬ。例えこの命尽きようとも、奴だけは仕留めてみせる!」


「ええ、負けられないわ!」


「来るか。そうだろうな、お前たちからすれば今しかチャンスはない。だが……私はまだ本気を出していないぞ? ジェムの力しか使っていないのだからな」


 やる気満々のコリンたちを見て、フィニスはそう口にする。最後の戦いに、まだ終わりは見えない。

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― 新着の感想 ―
[一言] フィニスの分身体5人相手に11人掛かりで時間稼ぎと2人撃破なら勲等章物だよ(ʘᗩʘ’) オリジナルのリオ達魔神は手が離せないだろうし、いの一番に突撃しそうなのはムーティーラか(-_-;)大…
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