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268話─平行世界の彼方から悪意を込めて

「食らえ! ディザスター・ランス【貫壊(ドリラー)】!」


「これで終わりよ! セイクリッド・グランドクロス!」


「ぐっ……があああっ! バカな、ワレが敗れるなどあり得る……わけ、が」


 戦いが始まってから、一時間近くが経過した。死闘の末、コリンたちはエイヴィアスを撃破し、打ち倒すことに成功する。


 腹に風穴を開けられたエイヴィアスは、その場に崩れ落ち動かなくなる。宿敵の死に、コリンとコーディは互いを見ながら頷く。


「これで片付いたのう。さ、次じゃ。アゼルたちを助けに」


「どこへ行くつもりだ? まだ、パーティーは始まったばかりだというのに」


「うそ、この声……まだ生きてるの!?」


 アゼルたちの元へ向かおうとした、その時だった。どこからともなく、死んだはずのエイヴィアスの声が響き渡る。


 直後、コリンたちの前……前方十メートルほど離れた場所に黒い扉が現れる。扉が開くと、そこから一人の女が現れた。


 真っ白なタキシードとシルクハットを身に付けた女を見て、コリンたちは即座に悟る。この女は、エイヴィアスなのだと。


「貴様……どんなカラクリを使った? その姿は一体!?」


「ワレの……私の能力を忘れたのかしら? 私は平行世界への門を開く力を持つ。私が命を落とす時……自動的に門が開き、平行世界から連れてくる。エイヴィアスの運命変異体をね」


「でも、所詮は運命変異体でしょ? オリジナルよりも強いなんてことはまずなさそうね。あんたナヨッてしてるし」


「あら、見た目で相手を判断するのは禁物よ? 私たちエイヴィアスは、死んだ時に継承するの。オリジナルが持っていた力と記憶、その全てをね!」


 女エイヴィアスがそう口にすると、胸元に七つの光が灯る。アブソリュート・ジェムの力を、オリジナルから引き継いだのだ。


 ニヤリと笑いながら、新たなエイヴィアスは指を鳴らす。すると、大量の門が空中に現れ、不気味に明滅し始める。


「なんじゃ、この門は!」


「門の向こうには、平行世界の私……エイヴィアスの運命変異体が待機しているの。いつ私が死んでもいいようにってね。さあ、始めましょう? 無限に現れる私と、たった二人のお前たち。どちらが最後まで立っていられるかしらね! ソーン・レイン!」


 両手を広げ、エイヴィアスは空中に魔法陣を作り出す。そこから複数本のイバラが現れ、コリンたちに襲いかかる。


 同時に、『破壊のアメジスト』のレプリカが輝きを放つ。本物に遠く及ばないとはいえ、イバラに破壊の力が宿った。


「来るか……ならこうじゃ! ディザスター・シールド【反射(リフレクト)】!」


「跳ね返してやるわ! セイクリッド・ミラーウォール!」


 コリンとコーディは背中合わせになり、四方八方から襲ってくるイバラを盾で反射する。跳ね返されたイバラが、お互いにぶつかり合い消滅していく。


 そんな中、コリンはエイヴィアスの姿が消えていることに気付いた。何かを仕掛けてくる……直感でそう判断したコリンは、大声で叫ぶ。


「コーディ、跳べ!」


「え!? う、うん! てやっ!」


 二人は勢いよくジャンプし、空中に飛び上がる。その直後、地面が崩壊し無数のイバラが生えてきた。空に浮かぶ門のノブを掴み、コリンたちは何とか難を逃れる。


「ふぅ、危なかった。危機察知能力を鍛える訓練をした甲斐があったわい」


「ええ、そうね。さ、私の手を掴んで。今の私なら、コリンを乗っけて飛ぶくらいは楽に出来……きゃあっ!」


「残念、あんたは地上に落ちなさい!」


「コーディ! 今助け……」


 背中に光の翼を展開したコーディが、コリンに手を伸ばした瞬間。『空間のサファイア』の力で転移してきたエイヴィアスがかかと落としを放つ。


 不意を突かれたコーディは、地上でうごめくイバラの群れに落とされてしまう。闇のロープを出して助けようとするコリンだが、妨害を受ける。


「救助なんてさせないわ! ソーンミサイル!」


「チッ、邪魔じゃ! ディザスター・スライム【分裂(ディビジョン)】!」


「フン、こんなもの……って、数多過ぎ! こんなの避けきれ……きゃああ!!」


 妨害に怒ったコリンは、ドアにぶら下がったまま大量のスライムを放つ。トゲのミサイルもエイヴィアス自身も、スライムに喰われていく。


 数分もせずエイヴィアスが息絶え、地上にうごめいていたイバラも消えた。コリンが地上を見下ろすと、コーディが戻ってくる。


 イバラに蹂躙されて鎧がボロボロになっているが、本人に傷はないようだ。


「あー、サイテー……。髪がボサボサになっちゃったわ、もう!」


「それくらいで済んで御の字じゃろ、下手すると……おわっ!?」


「コリン、危ない!」


 プンプン怒るコーディに話しかけていると、突如コリンが掴まっていた扉が勢いよく開け放たれる。その反動で吹っ飛ばされたコリンを追い、コーディは空を駆ける。


 何とか落下前に追い付き、背中に乗せることが出来た……が、後ろを振り向いた瞬間、紫色のオーラに包まれた鉄拳が叩き込まれた。


「きゃあっ!」


「ぐあっ!」


「フゥーハハハハハァ!! どうだ、挨拶代わりのパンチの味は! よーく効くだろぉ?」


 不意打ちを食らった二人は、地面に叩き落とされてしまう。地面に激突する寸前、コリンがスライムを展開してクッションにすることでどうにか無傷で済んだ。


 が……それを喜ぶ暇はない。三人目のエイヴィアスが現れ、コリンたちを見下ろしているのだから。今度の敵は、筋骨隆々の大男だった。


 上半身は素肌にプロテクター、下半身は黒いズボンと安全靴とワイルドな格好をしている。新たな運命変異体は、勢いよく着地した。


「さあ、次はオレ様が相手をしてやるぜ。さっきのオレ様と違って、筋肉バリバリだ。二人とも叩き伏せてやる!」


「チィッ、これは……今までにないタイプの厄介さじゃな。一人ひとりはすぐ倒せても……」


「あの扉の数だけ後詰めが来るんでしょ? コリン、先にあの扉ぶっ壊せないかしら?」


「ククク、ムダだぜ。例えアブソリュート・ジェムをフルパワーで使おうとも、あの扉は壊せない。『そういうもの』なんだよ、アレはな。この世を支配する理の力だからなァ!」


 上空に浮かぶ扉を見上げ、そう呟くコーディ。そんな彼女に答えた後、エイヴィアスが地を蹴って殴りかかる。


 左右に別れて飛び、初撃を避けたコリンたち。二人は盾を呼び出し、エイヴィアスを左右から挟む。そして……。


「なら、わしらが取る手段は一つのみよ。全ての貴様を殺し、戦いを終わらせるまで! ゆくぞコーディ!」


「ええ! 食らいなさい、シールドプレッサー!」


「フン、ちゃちぃ攻撃だな。そんなモン、オレ様にゃあ効かねえんだよ!  バルクガーディアン!」


 ギリギリまでコリンたちを引き付けた後、エイヴィアスは筋肉を膨張させてカウンターを放つ。吹き飛んだコリンたちに、さらなる追撃を行う。


「二人仲良く吹っ飛べ! バルクサイクロン!」


「くっ、こやつ滅茶苦茶な……!」


「ダメ、吸い込まれ……きゃああああ!!」


 腕を横に伸ばし、身体を回転させながらエイヴィアスは宙に浮かぶ。彼を中心にして竜巻が発生し、瓦礫やコリンたちを吸い込み始める。


 抵抗虚しく、コリンたちは竜巻に吸い込まれてしまう。宙を舞う瓦礫に叩き付けられ、大ダメージを食らってしまった。


「く、まずい……早急に平行世界との繋がりを絶たんと、二人してなぶり殺されてしまう……」


 竜巻の中にいるコリンは、そう呟く。そんな彼の上空……無数の扉のうち、一つが鎖で施錠されていた。その扉が、内側から強い力で押される。


 封印を打ち破り……()()()()が、姿を現そうとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「門の向こうには、平行世界の私……エイヴィアスの運命変異体が待機しているの。いつ私が死んでもいいようにってね。さあ、始めましょう? 無限に現れる私と、たった二人のお前たち。どちらが最後まで…
[一言] 開幕からあっさり終わりかと思えば平行世界と言う無限世界から無限湧きかよ(⊙_◎) 不死身の奴も面倒いが毎回レパートリー豊かに無限湧きじゃ勝てないって(-_-メ) でもあれー?何か1個だけ…
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