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233話─絆を胸に、空へ!

「来てくれたか、エリザベート。さあ、わしらをその背に乗せておくれ。今こそヴァスラサックの城に乗り込み、決着をつけるのじゃ!」


「よろしくてよ。ですが、城に突入出来るのはコーネリアスさんだけになりますわ」


「あら~、それはどうしてかしら~?」


 地上スレスレを滞空しながら、巨竜に変身したエリザベートはそう口にする。カトリーヌが理由を尋ねると、尾で上を指し示す。


「あの城には、強力な神の魔力を用いた結界が張られていますの。半分神であるコーネリアスさんは問題なくても、他の方は触れた瞬間に死んでしまいますわ」


「はぁ!? ふざけンなよ、こっちは四年前もそれで足止め食らったンだぞ! 何とかしてアタイらも入れるようにしてくれよ!」


 理由を説明するエリザベートに、アシュリーが食ってかかる。四年前のスター・サミットでも、同じ理由で彼女たちは天空神殿に乗り込めなかった。


 その結果、コリンは行方知れずになり……四年に渡る悪夢の日々が始まったのだ。その再来になるかもしれないとあれば、食い下がるのも仕方ない。


「ダメよ~、シュリ。気持ちは分かるけど、その人に食ってかかっちゃ」


「問題ありませんわ、こんなこともあろうかと、わたくしいいアイデアを用意して参りましたの。そーれっ!」


「わー、綺麗なネックレスだネ。ピカピカ光ってるヨ」


 カトリーヌがアシュリーを眺める中、エリザベートは得意気に一声吠える。すると、コリンの目の前に銀色のネックレスが現れた。


 宝石を入れるための器具が付いているが、中は空っぽだ。フェンルーがはしゃぐ中、コリンは首を傾げつつネックレスを手に取る。


「これがそのアイデアなのかえ?」


「ええ。そのネックレスは、魂を入れる器としての役目を持つマジックアイテムですの。神の力に対する、強烈な耐性を持った特別品ですわ」


「なるほど、つまりこういうことか。そのネックレスの中に、拙者たちの魂を入れてコリン殿に装備してもらう。そうすれば共に城に入れる、と」


「その通りですわ。肉体はここに置いていくことになりますが、そちらの守りも抜かりありません。エルカリオス様が皆様の身体をお守りします」


 エリザベートの説明を聞き、ツバキが彼女の意図を読み問いかける。頷いた後、エリザベートはまたもや得意気に答えた。


「ただし、いくつか注意点がありますわ。ネックレスの中から、星騎士さんたちが援護を出来ますが……一度に一人まで、かつ能力を使えるのは三分。さらに、クールタイム五分を設けてあります」


「ほう、その理由を聞いてもいいかな?」


「単純に、貴方たちの力の同時使用にネックレスが耐えられないというだけですわ。用法を守らないと、皆さん死にますのでお気を付けくださいまし」


「さらっととんでもねぇこと言うなおい!?」


 ラインハルトの質問に、エリザベートは物騒なことを言う。思わずドレイクがツッコむが、他の者たちも同じ思いのようだ。


 用法を守らない無茶な使い方だけはしないと、堅く心に誓う。最後の戦いで、全員仲良く討ち死にだけは避けたいところだ。


「それと、ネックレスに入った後はコーネリアスさんと意思の疎通に制限がかかります。力を発動している方だけが、彼とやり取り出来ますわ」


『なるほどね。じゃあ、中に入った私たち同士の意思の疎通はどうなるんだい?』


「それは問題なく出来ますわ、ネックレス内部だけで完結するので。戦況に応じて相談し、皆様臨機応変に力を貸してあげてくださいませ」


『分かった、ありがとう』


 一通り説明が終わった後、コリンは仲間たちを一人一人見つめる。苦楽を共にし、喜びも悲しみも分かち合った大切な存在。


 ネックレスを掴む右手を前に突き出し、コリンは仲間たちに問う。肉体から離れ、魂だけの存在となり──自分と共に、戦ってくれるかと。


「この戦い、生きて帰れるかも分からぬ。それでも、力を貸してくれるのであれば……」


「ハッ、今更ンなこと聞く仲かよ。アタイらの心は一つ、もう決まってらぁ。コリンと一緒に、ヴァスラサックをぶっ殺す! どんな形でもいい。そうだろ、みンな!」


「もちろん!」


 アシュリーの言葉に、星騎士たちは頷く。そんな彼らを、エリザベートは微笑ましそうに見つめる。自分の仲間たちと、彼らを重ねているようだ。


「素敵な絆で結ばれた仲間に出会えたのですわね、コーネリアスさん。では、皆様ネックレスに手を向けてくださいませ。わたくしが吠えたら、魂がネックレスに移動しますわよ! せーの……ぐるーああ!!」


 エリザベートが吠えた、次の瞬間。ネックレスから眩い光がほとばしり、アシュリーたちの姿を覆い隠してしまった。


 あまりの眩しさに目を閉じていたコリンは、光が消えた後恐る恐る目を開ける。すると、コリン全員、その場に倒れていた。


『おー、ここがネックレスの中か! 意外と快適なンだな』


『思ってた以上に広いのね、ここ。これなら、十二人いても窮屈な思いはしなくて済みそうね』


『ここ、不思議。マリス、興味いっぱい』


 直後、ネックレスからアシュリーとイザリー、マリスの声が聞こえてくる。無事、ネックレスの中に魂を移せたようだ。


「よし、これで準備は出来た。エリザベートよ、そのたの背中に乗れておくれ!」


「かしこまりましたわ。……ふふ。まさか、旦那様意外の殿方を背中に乗せて空を舞う日が来るとは思いませんでし……あら、エルカリオス様」


「待たせたな、コーネリアスにエリザベート。君の仲間たちの肉体は私に任せろ。何があろうと守り抜いてみせよう」


 コリンがエリザベートの背中に乗ろうとした時、もう一体の巨竜……エルカリオスが現れる。炎の結界で河原を囲み、アシュリーたちの守りに入った。


「二人とも、協力感謝致します。此度の戦いが終わったあかつきには、お二人の帰還をお助けすることを約束します」


「行ってこい、コーネリアス。七百年前の神話を、もう一度その手で紡ぐのだ。さあ、飛ぶがいい。遙か天の彼方へ!」


「はい、行って参りまする! エリザベート、出発じゃ!」


「合点承知ですわぁぁぁ!!!」


 大きく跳躍し、コリンはエリザベートの背に飛び乗る。八枚の翼を羽ばたかせ、赤き竜は空高く舞い上がっていく。


 あっという間に地上を離れ、遙か南の空へ向かって進む。ヴァスラサックの居城、ルゥノール城に突入せんと加速する。


「おお、速いのう! 飛竜便と速度が違うわい!」


「このままひとっ飛びですわ! 送るついでに、体当たりでもブチかまし」


──ここまで来たか、コーネリアスとその協力者よ。貴様らをこの先に進ませるわけにはいかぬ。ここで空の藻屑になってもらうぞ!──


 ルゥノール城まであと少し、というところで不気味な声が響く。直後、空中に魔法陣が出現し、その中から一人の男が飛び出した。


 背に八枚の翼を持つ、最後の邪神の子。覇翼神将ラディウスが、ついにコリンたちの前に現れたのだ。


「ふん、ようやくお出ましか。事ここに至るまで現れぬとは、随分な重役出勤じゃのう」


「私の為さねばならぬ仕事が全て終わった。故に、こうしてお前たちを屠りにやって来れたというわけだ。さあ、来るがいい! 我が剣で切り刻み、物言わぬ肉片に変えてやろう!」


「大層な自信ですこと。精々、赤っ恥かかないようにしなさいな!」


「ディルスとソールの運命を狂わせた元凶よ、ここで貴様を滅ぼしてくれよう。ヴァスラサックとの戦いの前のウォーミングアップじゃ! 返り討ちにしてくれるわい!」


 禍々しいオーラを放つ曲刀を二振り呼び出し、ラディウスは両手に持ち構える。エリザベートとコリンも啖呵を切り、戦闘態勢に入る。


 最後の邪神の子を相手に、天空の戦いが始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] まずはラディウスのクソ野郎を血祭りにあげまああああす!! ……地獄の底でディルスとソールの運命を狂わせたことを後悔しろや。
[一言] 四年前とほぼ同じ結界だけにまたコリン1人で行かせたら今度こそ帰ってこないのが見え見えだしな(ʘᗩʘ’) エリザベートがこういう手段持ってたのか?アイツ不器用差は周知の事実だけどエリカリオスの…
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