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156話―暗緑の天使襲来

 敵の襲来を知ったコリンとアニエスは、砦を飛び出し町の方へ向かう。内と外を仕切るイバラを巡って、エルフの戦士たちが戦っているようだ。


 苦戦を強いられているらしく、コリンたちは加勢しようとするが……。アニエスに気付いたエルフの男が、何故か追い返そうとしてくる。


「あ、アニエス様!? もしかして、加勢に来られたのですか?」


「そうだよ。敵はどこ? ボクとししょーでコテンパンに」


「い、いえ! 大丈夫です、我々だけで対処出来ます! なのでお二人は砦にお戻り」


「変態が飛んだぞ、撃ち落とせ!」


「あの変態を町に入れるな! 女子どもに見せないように気を付けろ、脳が腐るぞ!」


 だが、そんな努力も虚しくイバラの向こうから戦士たちの不穏な叫びが聞こえてくる。というか、イバラ越しに敵の頭が見えた。


 コリンと目が合った瞬間、ダークグリーンに染まった顔に笑みが浮かぶ。嫌な予感を覚えたコリンは、即座に背を向けて帰ろうとする。


「ではお言葉に甘えようかのう。アニエス、彼らに任せてかえ」


「みいぃぃぃつけたァァァァァ!! マイラブリーエンジェルゥゥゥゥゥ! あ、エンジェルは俺だったなそういやぁ! ワハハハハハ!」


「変態が町に侵入したぞ! 追いかけて仕留めろ!」


 だが、そうは問屋が下ろさなかった。イバラの上部をブチ破り、コリンたちの行く手を遮るように降り立った。


 筋骨隆々の肉体を惜しげもなく全てさらけ出した、天使の翼を持つ大男が。それを見た瞬間、アニエスの口から声が漏れる。


「うわ……」


 混じりっけゼロ、拒絶とドン引きの意思を示す一言だった。突然目の前に謎の天使(へんたい)が現れたのだから、無理もない反応である。


「貴様、何者じゃ? ……いや、やはり答えんでよい。アニエスに汚い裸を見せるでないわ、この変態め! 外ではだかんぼになってはいけないと教わらなかったのか!」


「ししょー、まともに相手しちゃダメなタイプだよあれ。だって、こっからでも分かるくらいハァハァしてるもん」


 若干ズレた指摘をするコリンにツッコミつつ、アニエスは相手から視線を逸らす。見たくもないモノを視界から排除しようと、彼女も必死だ。


「グフフ……ようやく追い付いたぞ。さあ、もう一度俺のために踊ってくれ! マイラブリーエンジェルコリンきゅ」


「ディザスター・ランス【(レイン)】!」


「アバーーーーッ!!!!」


 何やら身の危険を感じ取ったコリンは、有無を言わせず先制攻撃を放つ。闇の槍の雨を降らせ、変態に裁きを下した。が……。


「フムン! 我無敵なりィィィィィ!! このほとばしるラブを届けるまではこのベンジャミン! 決して死なぬゥゥゥゥゥ!!」


「!??!??!!?!? あれだけディザスター・ランスを叩き込んでやったなのに死なぬじゃと!?」


「みんな、ちょっとホントにボクたち無理だから……アレ、何とかしてきて?」


 恐るべきことに、変態ことベンジャミンはフィジカルパワーだけで槍を跳ね返してしまった。余裕の態度でポージングをキメる。


 相変わらず目を背けたまま、アニエスは部下たちにだいぶアバウトな指示を飛ばす。エルフの戦士たちは覚悟を決め……突撃した。


「アニエス様たちを守れ! 死んでもあの変態を通すな!」


「突撃ー!」


「ムダなことを。食らえ! マッスルサイクロン!」


「ぐああっ!」


 勇ましく挑みかかってくるエルフの戦士たちをベンジャミンが迎え撃つ。腕を真っ直ぐ横に伸ばし、身体を回転させながら突っ込む。


 筋肉の竜巻と化した変態によって、エルフたちは空高く巻き上げられていく。攻撃が終わった後、エルフたちがびたびた落ちてきた。


 皆ベンジャミンの汗まみれになっており、死んだ魚のような顔をしていた。


「お待たせ、コリンきゅん! さあ、俺と共にあの無限の大空へ飛び立とう!」


「いやじゃ! いやじゃ! 貴様のような変態なんぞとスカイハイしとうないわ! くっ、これ以上エルフたちを犠牲に出来ぬ。やはりわしが」


「大丈夫、下がっててししょー。……直視したくないけど、ここはボクが戦うよ!」


 ゆっくりと歩み寄ってくるベンジャミン(へんたい)からコリンを守るべく、アニエスが立ちはだかる。出来るだけ下を見ないようにしながら。


「……女かぁ」


「ちょっと! なにその反応!? なんか傷付くんですけど! 


「女はなぁ……キュートさが足りない……。今の時代はそう! ショタ!」


「アニエス、全力で援護射撃をしよう。じゃから、あやつを秒で滅しておくれ!」


「うんうん、大丈夫だよししょー。あんな変態、指一本触れさせないからねー」


 一人で勝手にエキサイトする変態に対し、コリンはすっかり怯えきってしまっていた。これまで戦ってきた敵は、ストレートに命を狙ってきた。


 だが、ベンジャミンは全く違うベクトルの目的で襲ってきているのだ。命以上に、貞操の危機を本能で察することになったのである。


「ふむん……よかろう。ならばまずは! 愛しのコリンきゅんへの道を阻むあばずれクソビッチから先に仕留めてやろう! ンンン、パッショーン!」


「……ししょー。あいつの【ピー】と【ピー】、ぶっ潰してもいいよね?」


「構わん。全力で許可する!」


「分かったー。じゃあ、あいつ【ピー】するね♥️」


 流石のアニエスも、あばずれやビッチ呼ばわりはかなり頭にきたらしい。微笑みの奥に修羅のオーラを醸し出し、星遺物を呼び出す。


「来なさい! 樹双剣グーラヘイム! 覚悟するんだねこの変態! その粗末な小枝を切り落とすから!」


「ノン! そうはさせない。俺の愛の邪魔はァァァァァァ!! 何者にもさっせなァァァァい!! マッスルエルボー!」


 お互いバチバチに敵意を燃やし、対峙するアニエスとベンジャミン。先に仕掛けてきたのは、ベンジャミンの方だった。


 筋肉を盛り上がらせ、肥大化した右腕を横に伸ばしてラリアットの体勢を取る。そのまま勢いよく走り出し、アニエスを攻撃する。


「邪魔してくれるわ! パラライズドサークル!」


「おうん!? この甘く切ない身体の痺れ……そうか! これがユーのラブ! オーケーコリンきゅん、このベンジャミン全身で受けとへぶう!」


「くたばれやオラー!」


「……わし、あいつ嫌い。怖い」


 魔法陣を踏んで身体が痺れたベンジャミンは、またも勝手にエキサイトしていた。そこにアニエスが走り寄り、膝で金的をかます。


 膝蹴りの連打を受け、苦悶なのか快感なのか分からない声を漏らすベンジャミンを見て、コリンは涙目になる。


 後でアシュリーたちに慰めてもらおうと、心の中で固く決意した。


「オオオオアアアア! パッショーン!」


「げっ、また変態が飛んだ!」


「これ以上マイ・サンをいじめるのは許さァァァァん!!! エンジェルレイン!」


 股間へのダメージが危険水域に達したベンジャミンは、汚い雄叫びをあげながら翼を羽ばたかせる。強引に飛翔して魔法陣から抜け出し、空を飛ぶ。


 天使の翼を広げ、汗まみれの羽根をアニエス目掛けて降り注がせる。もし直撃すれば、トラウマになるのは避けられないだろう。


「ぎゃー! 汚いのがきたー!」


「安心するがよい、わしが守る! ディザスター・シールド【天蓋(ドーム)】!」


「ありがとししょー! 助かったよ!」


 コリンが闇魔法を唱え、アニエスをドーム状の盾が包み込む。直撃は免れたが、汗で濡れてテカテカになった盾は視覚に大ダメージを与えた。


「ノン! 悪い子猫ちゃん、邪魔はバッド! これはもう『ワカラセ』が必要だァァァァ!!」


「ぴいっ! こっちに来るでないわ! ディザスター」


「ししょーに触れようとしてんじゃねえ! この【ピー】野郎! リーフスラッパー!」


「おぐふっ!」


 不快そうに顔をしかめ、ベンジャミンはコリン目掛けて急降下する。両手を広げ、キス顔をしながら迫ってくる姿は間違いなく夢に出る。


 パニックに陥ったコリンが迎撃しようとした直後、アニエスが盾を突き破り飛び出す。がら空きになっているベンジャミンの脇腹に、斬撃を放つ。


「もー、油断も隙もあったもんじゃない! よし、ししょー! ボクがおんぶするよ、一緒に行動してれば安全だよ!」


「うむ、そうさせてもらう! 一人でいるより万倍マシじゃ!」


 別れて行動していると、隙を見て連れ去りに来る。嫌というほどそれを学んだコリンは、即座にアニエスの背中に飛び付く。


 植物のつるを呼び出し、アニエスはおんぶ紐のように自分とコリンを縛る。これで、ベンジャミンに拐われる危険性はグッと減った。


「さー、来なさい! 変態は髪の毛一本残さず消し炭にしてやるから!」


 のたうち回るベンジャミンに剣を向け、アニエスは敵意マックスで叫んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] これが今年最後の話か(-_-メ)酷いに尽きるな(ʘᗩʘ’) 来年はこんな変態との絡みを読まねばならんのか?( ≧Д≦)
[一言] ……変態という名の天使なの!!?
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