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145話―発動! 流れ星作戦!

 五日後、ついに決行の時が来た。ワープマーカーを使い、一足先にハインケルが帝都のすぐ近くまで移動する。


 見張りが交代した瞬間、首から下げた連絡用魔法石を使ってレジスタンスに合図を送る。油断しきっている相手の虚を突き、一気に攻め込むのだ。


「……もうそろそろ、見張りも交代かな? ん。よし、今だ!」


 野原を気ままに散歩する子犬のフリをしつつ期を窺っていたハインケル。しばらくして、見張りの交代が始まる。それを見た瞬間、即座に合図を送った。


「お、見ろよ。街の外に可愛い子犬がいるぜ。拾ってきちゃおうかなぁ」


「やめとけやめとけ、ゼディオ様に取り上げられてグロ死体にされるのがオチ……ん? 何だ、この魔力のはど……おおお!?」


「全軍突撃! 奴らの迎撃を許すな!」


「おおおおお!!!」


 見張りを終え、街に戻ろうとする兵士の一人がハインケルに気付く。次の瞬間、ワープマーカーを用いてパジョンから転移したレジスタンスが現れる。


 巨大なランスで武装した騎兵たちを従え、ゴードン将軍が先陣を切り突撃していく。右翼と左翼には、それぞれカトリーヌとエステルがいた。


「て、敵襲!? 嘘だろ、一体どこから!」


「門を魔法で強化しろ! 向こうにはカトリーヌがいる、ブチ破られるぞ!」


「ダメだ、早すぎる! 伝えるのが間に合わ……うわあああ!!」


 油断しきっていたところを襲撃され、兵士たちは慌てふためく。防壁の上の通路や、詰め所にいる仲間に連絡しようとするがもう遅い。


 闘志に満ちた騎兵たちの突撃を受け、馬に踏み潰されたりランスで貫かれたりして息の根を止められた。


「カトリーヌ殿、門を頼みますぞ!」


「は~い、任せて~。いくわよ~、星魂顕現・タウロス! いくわよ、キガホーン・タックル!」


 カトリーヌは星の力を解き放ち、人と牛が混ざりあった姿になる。ヒヅメの生えた足で数回地面を掻いた後、街を守る巨大な扉に突進した。


「おお、一撃やな! なら、次はウチの番や。星魂顕現・スコーピオ! サソリ忍法、五月雨砂手裏剣の術!」


 鋭いツノを用いた突進の破壊力は凄まじく、一撃で門をブチ破り活路を拓く。これにて、流れ星(シューティングスター)計画の第一段階が完了した。


 第二段階、コリンとアシュリーがゼビオン城に侵入するためのサポートが始まる。市街地に雪崩れ込んだレジスタンスは、聖王国の兵士たちを襲う。


「なんだ、砂が……ぎゃあっ!」


「あいつはゴードン!? それに、星騎士どもまで! クソッ、いつの間……うがっ!」


「進め、進め! このまま敵を蹴散らし、道を切り開くのだ! 第二陣、突撃せよ!」


 街をブラブラしていた兵士や、彼らの詰め所に砂の雨が降り注ぐ。レジスタンスの攻撃に気付くも、対応に移る前に倒される。


 形勢有利と見たゴードンは、魔法石を使い部下たちに連絡を取る。更なるダメ押しに、フェンルー率いる第二陣を呼び寄せた。


「みんなー、出番だヨ! ワタシたちも頑張ロー!」


「おおーーー!!」


 ワープマーカーから追加の騎兵と、剣や手槍で武装した歩兵たちが現れる。彼らも加わり戦いが繰り広げられる中、コリンとアシュリーは城を目指す。


「凄いのう、このピアス。敵は誰もわしらに気付かぬわい」


「オヤジが昔、おフクロに贈った特注のピアスだからな。効力は折り紙付きだぜ。さ、今のうちに行くぞ。はぐれねぇように、手ぇ繋いでな」


「うむ、このままゼビオン城に突入じゃ!」


 一対のピアスを、コリンとアシュリーが一つずつ耳に着けていた。認識阻害の魔法によって、敵には存在がバレていない。


 二人は固く手を繋ぎ、急ぎ城を目指す。中に入るまでは認識阻害の魔法が有効とはいえ、のんびりしているわけにはいかないのだ。


「てい、ヤー!」


「ぐあっ! くっ、こいつ強いぞ!」


「ふっふーン。サアサア、どこからでもかかって……む、この気配! みんな、下がっテ!」


 一方、帝都北の噴水広場で戦っていたフェンルーの元に不穏な気配が近付く。いち早く気付いたフェンルーは、周囲にいる仲間を退避させる。


 直後、家屋の屋根から放たれた火炎放射が広場を襲う。フェンルーは身に付けていた帯を回転させ、炎を拡散させて攻撃を防いだ。


「……あーあ、防がれた防がれた。そのまま燃えれば良かったのにな」


「ナニヤツ! 名を名乗レー!」


「必要ないと思うけどなぁ、お前もうすぐ死ぬし。まあいいや、一応教えておいてやるよ。おれはガルヌ。ゼディオ様にお仕えする親衛隊の、最後の一人さ」


 いつの間にか、屋根の上に敵がいた。真っ赤な鱗を服代わりに身に付けた、イマイチやる気のなさそうなトカゲの獣人だ。


 ガルヌと名乗った男は、あくびをしながら伸びをする。異変を察知したゼディオの指令を受け、レジスタンスの排除に来たのだろう。


「みんな、ショーグンのところにいっテ。アイツ、強いヨ。みんないると、かえって危ないネ。巻き込まれないように、早ク」


「わ、分かりました! フェンルー様、ご武運を!」


 相手の実力を見抜いたフェンルーは、巻き添えにしないように仲間たちをゴードンの元に向かわせる。すると、ガルヌが大きく息をスイコミはじめた。


「あのさー、そう言われて素直に逃がすと思うわけ? んなわけないじゃん。全員死ね! ファイアーブレス……」


「させないヨ! 伸びろ、シールズリング!」


「おろ? おあっ!?」


 灼熱のブレスを吐こうとするガルヌを阻止せんと、フェンルーが仕掛ける。左の袖の下に収納していた帯を伸ばし、相手の腕に絡める。


 そのまま引っ張って態勢を崩させ、ブレスをあらぬ方向に反らすことに成功した。ついでに屋根から転落させ、同じフィールドに引きずり下ろす。


「やってくれたな、このクソメスガキが。こんがり美味しく焼き上げてやる!」


「やれるものならヤッてみるネ! オジイチャン譲りの拳法で返り討ちだヨ!」


「へー、言うじゃん。なら、その自慢の拳法を見せてみなよ!」


 ビシッと構えるフェンルー目掛けて、ガルヌが突進する。それを見たフェンルーは拳を握り、腰を落として身体を捻って力を溜めた。


「白羊剛拳、鋼破正拳突き! セイヤー!」


「なっ……オアッ!?」


 真っ直ぐ突っ込んでくるガルヌに向かって、フェンルーは拳を叩き込む。咄嗟に両腕をクロスさせガードしたガルヌだが、耐えきれず吹っ飛ばされる。


 空き家の壁に激突し、崩れた瓦礫の中に埋もれる。そこへ、フェンルーの追撃が炸裂した。


「まだまだいくヨ! 白羊剛拳、流星降紅脚!」


 両足に巻いた帯を展開しつつ、フェンルーは後ろに飛ぶ。身体を回転させ、バネのように縮めた帯で壁を蹴り加速する。


 そのまま飛び蹴りを放ち、瓦礫の上からガルヌを圧殺しようとする。が、それよりも早くガルヌが外に出てきた。


「いってー、まさかドストレートに殴ってくるとはなぁ。なら、お返しだ。テールフラップ!」


「なんノ! ワンダーパリィ!」


 しっぽを鞭のように振るい、フェンルーを撃墜しよいとするガルヌ。対するフェンルーは、足を守る帯を使って開いての攻撃を弾く。


 飛び蹴りは不発に終わってしまったが、代わりに相手の攻撃を防ぐことが出来た。面倒くさそうに頬をかきながら、ガルヌはあくびをする。


「ふぁーあ。面倒くさいね、さっさと死んでくれればいいのに。早く終わらせて、昼寝したいんだからさ」


「そうなノ? なら、寝てていいヨ。永遠にね! 白羊柔拳、帯飛ばし!」


「そんなの当たらないよ。ファイアーブレス!」


 着地したフェンルーは左腕を振り、腕に巻いていた帯を勢いよく伸ばして攻撃する。ガルヌは炎のブレスを放ち、帯を燃やそうとする……が。


「ムダだヨー。この帯、燃やされてぐ再生するもんネ!」


「は……へぶっ!」


 一度は燃やされたが、すぐに元通りになった帯がガルヌの腹に叩き込まれる。最後の親衛隊との戦いは、フェンルーの優勢で幕を開けた。

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― 新着の感想 ―
[一言] メぇぇぇ~~~リぃぃぃぃクリっスマぁぁぁーーースぅ!! 聖王国の馬鹿共ォォォォォ!!! お前らにはドギツイお仕置きをプレゼントするのだぁーーーーーー!!
[一言] 四年間の苦渋の時を経て今こそ全てを奪い返す時(ʘᗩʘ’) 全員皆殺しじゃー(ノ゜0゜)ノ
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