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104話―闇霊『血狂いの羅刹』レキシュウサイ

「ほふはは、よかろう。たかが小娘一人追うのは、貴様らを倒してからでも遅くはない。風の剣・壱ノ型、真空カマイタチ!」


 レキシュウサイは醜悪な笑みを浮かべ、雷光血鳥を振るう。無数の風の刃が放たれ、己を拘束している闇のロープを切り裂いた。


 一旦コリンとツバキから距離を取り、仕切り直した後レキシュウサイは愛刀を構える。妖しげなオーラが立ち昇り、刀身を包んでいく。


 コリンとツバキはそれぞれの星遺物を呼び出し、相手の攻撃に備える。


「ツバキ殿、気を付けよ。何が来るか分からぬでな」


「もちろん。まずは……敵の出方を探る。刃性変換、断殻刀【癒舞(ゆまい)】!」


 ツバキが刀に魔力を流し込むと、刀身の色が緑に変化する。どこか優しげな魔力に包まれたソレを構えながら、コリンに向かって声をかけた。


「もし攻撃を食らったら、拙者に教えてくれ。この形態では、斬った部位の傷を治癒出来る。ある程度までの負傷なら、すぐに治せるから」


「ほお、便利じゃな。なら、もしもの時はお世話になろうかの」


 相手の手の内を全て引き出したわけではないため、二人ともまずは守りに徹することにしたようだ。ただでさえ、相手は不死身の存在。


 迂闊に攻め込めば、逆にこちらがやられてしまう。前回の戦いで、コリンたちはそれを学習している。そんな二人を見て、亡霊は笑う。


「来ないのか? よかろう、ならば某から攻めさせてもらおうか! 雷の剣・壱ノ型……春雷一閃!」


「! 来る……ぐっ!」


 最初に狙われたのは、ツバキだった、同じ剣士として並々ならぬ執着を抱いているようで、レキシュウサイは凄まじいスピードで彼女の元へ走る。


 居合いの構えから、神速の斬撃を放ち一撃で仕留めようとする……が、鍛え抜かれた動体視力を持つツバキは間一髪で攻撃を避けてみせた。


 僅かにかすってしまったため、ツバキは早速断殻刀で傷口を斬る。すると、一瞬にして傷口が塞がり、跡すら残らず完治した。


「ツバキ殿、大丈夫か!?」


「ああ、問題ない。多少かすった程度、これくらいであれば余裕だ」


「ほう、言うな。では、これはどうだ? 風の剣・弐ノ型! 青嵐斬々舞い!」


 必殺の一撃を避けられたレキシュウサイは急ブレーキをかけ、無理矢理停止する。振り向きながら刀を振るい、空中に滞留する風の刃をいくつも作り出す。


「行け、刃の嵐よ! 奴らをバラバラに切り裂いてしまえ!」


「むう、ならば! ディザスター・シールド【天蓋(ドーム)】!」


 風の刃が襲い来る中、コリンはドーム状の闇の盾を展開して自分とツバキの身を守る。激しい攻撃に耐えながら、自分の側を漂うドクロに声をかけた。


「アゼル殿、ここはわしとツバキ殿で奴を食い止める。ソナタはアニエスのフォローをしてほしい。頼めるかの?」


『分かりました、ぼくに任せてください! 二人とも、無茶はしないでくださいね!』


 レッスンを課され、ひいひい言っていたアニエスがちょっぴり心配になり、コリンはアゼルにさりげなくフォローしてもらうことにしたのだ。


 くるんと一回転し、ドクロはアニエスに元へとテレポートする。それを見たレキシュウサイは、もう怖いものはないとばかりに笑みを浮かべた。


「ほふははは! 愚かよのう、奴をここから離脱させるとは。その選択、後悔することになるぞ?」


「後悔などせぬ。貴様もオラクルも、ここで滅ぶのじゃ。いや、わしらが滅ぼすのじゃ! ディザスター・サイス【収穫者(ハーヴェスト)】、あの風の刃を掻き消せ!」


「カーカカカカカ!! オ・マ・カ・セ~~~!!」


 コリンが闇魔法を発動すると、農夫のような格好をした死神が姿を現す。死神はコミカルな動きで大鎌を振るい、風の刃を切り裂く。


 切り裂かれた風は消滅し、死神の鎌に吸い込まれていった。その名が示すように、死神の手で()()されたようだ。


「奇妙な技を。なら、これはどうだ? 雷の剣・弐ノ型、雷熱豪斬波!」


 風の刃を全て消滅させられたレキシュウサイは、次の手に出る。雷光血鳥の刀身に凄まじい熱を宿し、陽炎が発生するほど温度を上げはじめた。


「奴め、何をするつもりだ? ここは先に仕掛ける方が良さそうだ。刃性変換、断殻刀【飛龍】! 鋭き斬撃よ、龍の炎の如く襲いかかれ!」


「よし、わしも行くぞ! 死神よ、レキシュウサイを仕留めるのじゃ!」


 全身に力を溜めるレキシュウサイを見て、嫌な予感を抱くツバキ。刀の特性を変化させ、刀身を真っ赤な色へと変える。


 敵の攻撃を潰すべく、刀を振るい真っ赤に燃える魔力を衝撃波として発射する。コリンもそれに合わせ、死神を攻撃に向かわせた。


「ほふははは、ムダなことよ。どれほど強力な攻撃を浴びせようとも、某は怯まぬ。攻撃を中断することなどない! はぁっ!」


 衝撃波に真っ二つにされ、死神に首をハネられようとも。闇霊(ダークレイス)であるレキシュウサイにはまるで効果がない。


 魂が霧散しても、僅かな時間でまた元に戻る。苛烈な攻撃を加えても、多少の時間を稼ぐ役にしか立たないのだ。


 そして、ついにレキシュウサイの攻撃が放たれた。ツバキが放ったソレとは比較にならない大きさと速度の衝撃波が、コリンたちを襲う。


「ぬうっ、なれば! ディザスター・シールド【反射(リフレクト)】!」


「ぐぬおっ! ……ほう、某の一撃を跳ね返すか! ほふははは、お前も面白い奴よ。気に入った、ますますお前たちの魂が欲しくなったぞ! 雷の剣・参ノ型……轟雷雨撃!」


 一かバチか、コリンは闇の盾にさらなる魔力を注ぎ性質を変化させる。新たに与えたのは、受けた攻撃をそっくりそのまま跳ね返す反射能力。


 コリンの目論み通り、盾は衝撃波を耐えきりレキシュウサイへと跳ね返した。まさかの行動に反応が遅れ、亡霊は消し炭になった。


 ……が、肉体はいまだ健在であり、消滅も一時的なものでしかない。少ししてレキシュウサイが復活し、瞳に宿す狂気をより強固なものとした。


「全く、何度もよみがえって鬱陶しい! まあ、これまでの鬱憤を晴らすためのいい叩き台にはなるがな」


「じゃな。しかし、いい加減飽きてくるのう。アニエス、頑張ってこやつの肉体を見つけるのじゃぞ」


 降り注ぐ雷の雨を避けながら、コリンはそう呟いた。



◇―――――――――――――――――――――◇



「ふんむぬぬぬぬ!! おっも、これちょー重い! もう全身汗まみれ……やんなっちゃうなもう!」


 その頃、アニエスは一人基地の中を進んでいた。コリンに嵌められた重い闇のリングのせいで、普段の半分程度のペースでしか進めていない。


 が、本人は気付いていなかったが少しずつ負荷に慣れ、普通に動けるようになってきていた。コリンの課した試練通り、己の限界を越え始めているのだ。


「いたぞ、あそこだ! あのエルフの女を仕留めろ!」


「げっ、また来た。もー、めんどい! リーフシュート・リッパー!」


「ぐあっ!」


「ぎゃあ!」


 時おり、アニエスを見付けた教団兵が襲ってくるも星遺物の力で返り討ちにする。そんな彼女の元に、アゼルの意思が宿るドクロが現れた。


『ああ、いたいた! ようやく見つけましたよ、アニエスさん。ぼくです、アゼルです』


「およ、どしたのこんなところに来て。あ、もしかしてししょーが?」


『はい、あなたのフォローをしてほしいと頼まれまして。ぼくの魔力探知を使って、レキシュウサイの肉体の在処を探します。着いてきてください!』


「わーい、ありがとう! この重さであちこち探し回るのダルかったんだよね。これで効率大幅アップだよー!」


 心強い味方が加わったことで、アニエスは元気を取り戻す。アゼルの導きの元、教団兵を蹴散らしながら基地の奥へ向かう。


 そして……十数分後、二人はついに見つけ出した。基地の奥深く、頑丈な部屋の中に隠されたレキシュウサイの肉体を。


「あれがあのおじちゃんの……。よし、早速ぶった斬っちゃうよ! せーの……フルムーン・スラッシャー!」


 レキシュウサイの肉体は、半透明な筒状の装置の中に入れられ守られている。アニエスは全力を込めて剣を振るい、筒ごと肉体を両断してみせた。


『やりましたね、アニエスさん! これで、レキシュウサイは不滅の力を失いました。じきに奴も滅びるでしょう。さあ、コリンさんたちのところに……』


「戻りたいトコだけど、そうもいかないね。もう遅いのに、敵がいっぱい集まってきたよ」


 異変を察知し、教団兵たちが部屋の中に雪崩れ込んでくる。役目は果たせたが、コリンたちの元に戻るのは簡単には行かなさそうだ。


「遅かったか……だが、奴を始末してしまえば失態も取り戻せよう。お前たち、かかれ! あの女の首級をあげろ!」


「やれやれ、ここが正念場かな。ここさえ越えれば、もう安心だね。もう一働き、やるとしますか!」


 突撃してくる敵の群れを前に、アニエスは闘志に満ちた笑みを浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] さて反則は破ったがここから暴れだすから締めに行ってみようか(ʘᗩʘ’)
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