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空にキラリ  作者: 多田のぶ太
3/5

決行日

 ミッション決行当日。


 とある郊外の大型スーパーを目標地点と決め、移動を開始した。


「何故、スーパーなんだよ。コンビニの方が、ちょっとだけのつもりでエンジンをかけっぱなしにする割合が高いんじゃないか?」


「もちろんそうだが、スーパーでアイドリングとなると、コンビニの比じゃなく長時間になる可能性が高い。それに、コンビニで長時間駐車場で見張ってたら、確実に怪しまれるだろ」


「それはそうか」


 移動中の車の中。ほぼマモルが一方的に決めた計画だったが、なにやら納得できた模様。


 マモルは運転が嫌いだ。イヤ、運転というよりも自動車自体が嫌いだ。ガソリンを消費して排気ガスを撒き散らしながら走るなんて、とんでもない。この自動車社会もどうにかなってほしいと思っている。


 タダシは運転が嫌いだ。運転そのものよりも、運転にまとわりつくルール、道路交通法という名のルールが嫌いだ。


 ルール、法律等は徹底的に守りたいタダシにとって、守りたくても守りにくいこのルールがイヤなのだ。

 免許証を取って間も無く、なけなしのお金をはたいて買った中古車を初心者マークを掲げて運転していたら、後ろからクラクションを鳴らされた。

 最高時速40キロの道路を38キロから40キロ程度の速度を保ちながら走っていた時だった。

 どうやら、遅い、と煽っているらしい。

 これ以上スピード上げると交通違反になってしまうため、速度を維持したまま2、3分経ったころに、後ろの車が猛スピードで追い越していった。

 完全に制限速度オーバーだ。

 違反車のナンバーを覚えていたので、交番に行ってその旨報告すると、応対してくれた警官は深い溜息をついて、「わかったわかった。今日はもういいから帰って」と言われただけだった。

 まあ、警官もいろいろと忙しいのだろうが、違反を取り締まるのも警官の仕事だろうが、と憤りを覚えたタダシだった。

 その後も似たような事が度々あった。違うナンバーの車だった。友人にこのことを言ってみると、制限速度で走っていると後ろが渋滞するからやめておけ、とのことだった。

 なんだそれ!警察も10キロ程度オーバーしていても捕まえないらしい。

 一体どんなルールなんだよ。それなら『最高速度』ではなく『巡行速度』にしてくれ。


 我慢できないのはそれだけじゃない。交差点の信号だ。黄色は交差点から出るのは良いが、交差点に入るのは違反だと聞かされた。安全に止まれない場合はいいようだが、そうでない場合は停止位置をこえて進行してはならないそうだ。この安全に止まれるかどうかが問題だ。信号は急に青から黄色に変わるから、その判断が難しい。同じ交差点の歩行者用信号が点滅している場合は目安にはなるが、交差点によって点滅時間が違ったり、歩行者用が赤になってから自動車用が黄色になるタイミングも違うので、アテにはできない。各信号機に、後何秒で黄色になるのか表示しておいてほしいと思う。


 それから、歩道を横切るとき、そう、車道からレストランやコンビニの駐車場に入るときは、たいていの場合、歩道を横切らなければならない。その場合、徐行ではなく一旦停止するのがルールだ。免許を取るときの筆記試験でひっかけ問題的に出ていたので今でもまだ覚えている。だが、実際に一旦停止してから歩道を横断すると、後ろの車からはさっさと行けよと言わんばかりの嫌な顔をされる。実際に言われたことも何度かある。ルールを守っていて何故怒られなきゃならないんだ。


 他にも……と挙げたらキリがないが、そういう諸処の理由で運転が嫌いなのだ。



 ユウジは運転が嫌いだ。運転するだけでいろんな人に迷惑を掛けているような錯覚に陥るのだ。

 信号のない横断歩道を渡ろうとしている人がいたら、横断歩道の手前で停車して、先に歩行者に横断歩道を渡らせる。当然のことといえばそうなのだが、時々見逃してしまうことがある。通り過ぎた後に気がついて、バックミラー越しに「ごめん」と手を合わせて謝る。


 ユウジはそういう奴だ。


 せっかく停車したのに横断歩道を渡らない人が居たり、まあユウジの勘違いだったのだが、紛らわしくて分からない時も多々あるようだ。そして、信号のない横断歩道で停車する度に、後ろの車に迷惑がかかるように思えて申し訳ないという気持ちになるらしい。信号のない横断歩道に人がいると、通り過ぎても停車しても、誰かに誤っているユウジだった。


 優しいというよりも、臆病なのかもしれない。


 そしてそれは右折するときにも起こる。対向車が少し途切れた時、行ってしまうか、次の車が過ぎるのを待つか、で葛藤が始まる。

 そんなこんなで、ユウジは運転が嫌いだ。というか、苦手意識がある。

 頼まれれば断れない性格(たち)なので、運転するのだが、自ら進んで運転することはない。




 結局、運転はマモルがすることとなった。

 もちろん、乗り合わせ。複数台で行くと、その分燃料消費が増えるため、そこはマモルは当然こだわった。本来なら、公共交通機関で行きたいところだが、地理的要因と人数分の料金を考慮したところ、相乗りで自動車を使用することになった。自動車の方が、打ち合わせもしやすいこともある。


 しかも、排気ガスを出さない電気自動車だ。でなければマモルは運転しないだろう。


「でもさ、この電気自動車だって、火力発電中心の日本においては排気ガスを出しながら走るのと大差ないんじゃね?」

 助手席にドカッと座っているタダシは悪びれもなくハンドルを握るマモルに食いつく。

「まあ、確かにな。ホントは、この自動車の上に太陽光パネル設置してソーラーカーにしたいところなんだけどな。でも、そのうち自宅に太陽光パネル設置する予定だから、そしたら完全にCO2出さずに走れるし」



 こうして4人は郊外の大型スーパーを目指す。


「ってか、なんでお前がいるんだよ!」

 ユウジが妹のユウミに向かってどなる。


「なんか、おもしろそうだったから」


「あのなぁ、遊びじゃないんだぞ」


「スーパーの開店が9時だから、交代で見回るとしても、閉店の夜10時までは大変だよな。閉店を待たずに、調査終了時刻を決めておかないか?」


「ペンとメモは人数分あったっけ?」


「アイドリング見つけても、今日は我慢しろよ」


「そうだ、昼飯どうするよ?」


 当日になって、計画の中途半端さが分かる。



読んでいただき、ありがとうございます。

自動車を運転する際は安全運転で。


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