いいものってなんだろう?
いいものってなんだろう?
ある日、ママが「いいもの買っちゃった!」
と見せたのは、卵だった。
「今日安かったのよ。」という。
やすいって、いいものなのかぁ。
そう思ってこのまえ、やすいって書いてあるところで
「ママ、みて!いいものあったよ!」といったら、
「これはいいものじゃないのよ。」とママはいった。
「だってこれ、ママには必要ないもの。」
ううーん。そうなのかぁ。
むずかしいなぁ。
むーん。いいものってなんだろう?
またある日、近所のおばあちゃんが
「いいものあげるよ。ほら、手を出してごらん。」というので、そっと手を出してみた。
すると、手いっぱいにアメをくれた。
イチゴやメロンの味のアメもあったけれど、その中に、ハッカと書かれたアメがあった。
「ハッカってなぁに?どんな味がするの?」ときくと、
ママは「スース―するよ。」といった。
スースーするってどんなだろう?
袋を開けてみると、入っていたアメはまるで雪のように真っ白な色をして、キレイだった。
その雪玉みたいなアメをドキドキしながら、口へとはこんだ。
口の中ははじめての味がする。
そして、冷ややかな風がノドのおくから鼻の先っちょまですいこんだ息とともにスゥーと吹き抜けていく。
ぼくはおどろいて、「なにこれ?」というと、
「ほらね。スースーするでしょ?」とママはいった。
ああ、これがスースーか!
こんなスースーははじめてだ。はじめてっていいものかもしれないなぁ。
次の日、砂場で遊んでいると、
泥団子名人のみっちゃんが、泥団子をたくさん作っていた。
いいなぁーって思ってみていたら、なんと1つ分けてくれた。
形のいいまんまるのすべすべとした泥団子。
しばらくの間、両手にのったそれを見つめた。
ああ、これはいいものだなぁ。
でも、いいものを作るってむずかしいんだなぁ。
だって、ぼくは何回作ってもこうはならないもの。
あっ!
そのときぼくはあることに気づいた。
たまごもハッカのアメもきっとだれかが作ったいいものなんだ!
そう思うとぼくもいいものを作りたくてソワソワした。
この泥だらけのくつも帰りにのるバスも「ただいま」もきっとだれかが作ったいいものにちがいない。
今日ごはんはオムライスだというので、「ぼくも作りたい!」とママにいうと、
「あら、めずらしい」とママはおどろいていた。
ぼくはとびっきりのスペシャルなオムライスを作るぞ!と息巻いた。
頭には、ママやパパ、兄ちゃんたちのよろこぶ顔が浮かんだ。