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さっき食べたパンの中に

 中学1年生の頃の話。


 母親がいなかったので、父親が仕事で出張の時はいつも兄と妹と3人で、自由を楽しんでいた。

 父が置いて行ってくれた二千円でジュースやお菓子をたくさん買い、食事と呼べるものはパンぐらいの夕食パーティーを開いた。その日は特別ゲストとして野良ネコの子も招いた。

 近所に人懐っこいネコの母子がおり、お母さんネコは気安く子ネコを貸してくれた。普段は父がネコ嫌いなので家には上げられないが、その日は学校に出掛ける朝まで一緒に遊んだり寝たりした。よく跳ねる子だったので『カエル』という名前をつけていた。


 カエルに炭酸ジュースを舐めさせ、口の中でパチパチする感覚にびっくりしたのか、自分の背の10倍ぐらい飛び上がったカエルを笑ったりしながら、私達はパンやお菓子を食べた。

 何も入っていないフランスパンを買った筈なのに、中にウィンナーソーセージがひとつ入っていて、それに当たった私はラッキーと思い、味わって食べた。


 やがて遊びながら眠ってしまった妹を父の寝室に運び、兄も寝ると言って自分の部屋に帰って行った。

 顔を洗い、自分の部屋に向かい、ふと見ると、ドアの前にカエルがいる。

 毛を逆立て、私の部屋のドアの向こうを睨むように立っている。

 抱き上げても威嚇する声を上げながらドアから目を離さないので、落ち着くところで寝かせてやろうと妹のベッドに連れて行った。

 口を半開きにして寝ている小学生の妹にくっついて丸くなったカエルが可愛かったので写真を撮った。今でもどこかに残っている筈だ。


 さてカエルは何に威嚇していたのだろう。自分の部屋に何かいたりするのだろうか、とドアを開けた。別に何もなかった。

 ベッドに座り、眠くなるまで雑誌を読むことにした。

 すると突然、クローゼットの扉がカチャリと音を立てて開いた。

 びっくりしてそちらの方を私が向くと、中から女の声が聞こえた。


「さっき食べたパンの中に指、入ってなかった?」


 感情の窺えない静かな声だった。


 私は何も答えることが出来ず、体が震えて一時動けなかった。

 声はそれきりせず、しかし私はクローゼットの中を確かめる気にもならず、廊下へ走り出た。

 兄の部屋に飛び込むと、兄はエロ本を前に何かやっていたが、構わず助けを求めた。

 不機嫌そうな兄と一緒に自分の部屋に戻り、クローゼットを開けてみてもらったが、中には誰もいなかった。

 家には私達3人しかおらず、そんな声の主などいる筈もない。


 その日は妹と一緒に寝た。

 口の中に塩辛いソーセージの味が残っていた。


この話は嘘です(笑)。

作り話でした。すみません。

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