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アジカン『プラネットフォークス』(2022年)

●僕のアジカン論


ASIAN KUNG-FU GENERATIONの10枚目となるオリジナルアルバム。


先日、『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した。この映画は、商業映画とインディー映画で二分される邦画シーンの中間的な立ち位置にある映画だとされている。これに倣うならアジカンもポピュラー音楽とインディー音楽の中間的な立ち位置にいるバンドだろう。海外でいえば、彼らが敬愛するフー・ファイターズに近いところがあるのではないか。


ところで、音楽雑誌『MUSICA』において、アジカンの本作『プラネットフォークス』を抑えてEVEのアルバムが「Disc of the Month」を獲得したのには驚いた。EVEは何度か聴いたが、深みやルーツが感じられないのが自分の好みに合わなかった。EVEを小説にたとえるならばライトノベルであり、鮮やかさによってサクサクと聴けるのが魅力的な音楽だ。(誤解してほしくないが、僕はライトノベルを蔑視している訳ではない。特に西尾維新の『悲鳴伝』は今世紀最高峰の小説だと思う。)


この例えでいうなら、アジカンのアルバムはライトノベルというよりも、一般向けエンタメ小説から純文学の間に位置している。エンタメ的な即効性も音楽通好みの深さも感じるのだ。


ちなみに、僕の表現の多くは統合を失調した様々な二極の中間にいながら二極を止揚しようという試みである。この試みを変奏してレビューを書いている。だから、エンタメ的でもあり、純文学的でもあるアジカンのアルバムの表現にも『ドライブ・マイ・カー』的な表現にも惹かれるのだろう。


本作『プラネットフォークス』は、フロントマンの後藤正文さんのソロ名義であるGotchの作品にみられるインディーロック流の各音への細やかな気配りと、アジカンならではの大文字のダイナミックなロックが結合したアルバムだ。


本作にフィーチャリングで参加したROTH BART BARON、Rachel(chelmico)、OMSB(SIMI LAB)、塩塚モエカ(羊文学)の各氏の人選を見ていると、ロックとラップのインディー的なシーンをアジカンが重要視していることが分かる。それは、Gotchが主宰する「APPLE VINEGAR -Music Award-」の活動からもうかがえる。


「エンパシー」(場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』主題歌)、「フラワーズ」(同作品の挿入歌)、「Dororo」(TVアニメ『どろろ』OP)はアニメタイアップの作品。この三曲はタイアップの必要条件である大衆性を備えているといえそうだ。



さて、僕が最も好きな彼らのアルバムについては、『ソルファ』『ファンクラブ』ももちろん好きだが、『ワールド ワールド ワールド』『マジックディスク』の二枚を選ぶ。どちらも、半径5メートルの日常から世界へ飛び出していくような、または世界が駆け足でこちら側に転がってくるような、外向きのサウンドに希望を感じるアルバムだ。初期とは違い、大切に紡がれる歌詞の言葉がしっかりとした意味性を持っており、そこも良い点だ。


それでは、本作『プラネットフォークス』は『ワールド ワールド ワールド』『マジックディスク』と比べてどうだろうか。


正直、歌メロは『ワールド ワールド ワールド』『マジックディスク』の足元にも及ばないと思う。何曲か美メロもあるけれども、全体としてメロディに閃きが足りないと感じる。


以前、僕はアジカンの作品のレビューで"Jpopのアジカン"が聴きたいと書いた。しかし、今は考え方が変わっていて、Jpopでもオルタナティブでも良いから、美しいメロディが聴きたくなっている。Jpopではない洋楽(ビートルズ、Radiohead等)やJpopではない邦楽(笹口騒音さんや彼が率いるうみのて等)は非Jpopでありながら、メロディが美しいから惚れるのだ。


しかし、ギターロックとしての愉悦はこれまでの彼らのキャリアの中で最高級なのではないか。まず、昨今の音楽シーンでは減ってきたギターソロがかっこいい! また、ギターの表現力も豊かだ。#10「雨音」はソリッドにきらめくギターサウンドがまさに"雨音"を感じさせるし、#11「Gimme Hope」は 背景にはりつくギターの音がほのかな希望(Hope)を伝えている。


また、本作『プラネットフォークス』ではアップテンポでアッパーな曲よりも、スローからミドルテンポの曲の方が味わい深さがあるのではないか。彼らの過去の代表曲「リライト」はアップテンポな曲だったが、メロディに豊かさと中毒性があった。しかし本作のアップテンポの曲はそこまでメロディに豊かさを感じない。


スローからミドルテンポの曲である#6「De Arriba」(スペイン語で「その上」「上から」の意味)と#7「フラワーズ」は神曲だ。なぜなら、美メロ中の美メロだからだ。また、感傷的な音の光景は「架空生物のブルース」(『マジックディスク』に収録)を僕に思い出させた。この二曲は これからも繰り返し聴くことになると思う。



最後に、このアルバムのコロナ禍への視座について述べておきたい。


#9「触れたい 確かめたい」は、平時とは違う現在のコロナ禍では違う意味合いが出てくる。本アルバムは、この曲で歌われるように、直に触れることによって確かめることが少なくなったコロナ禍における地球という惑星プラネットの人々(フォークス)に向けた作品なのだ。


オープナーの「You to You」も最後の曲の「Be Alright」も開放的な雰囲気の曲であり、閉塞するコロナ禍の人々への励ましのメッセージになるだろう。特に「Be Alright」の歌詞は、ファンがライブ会場に集い、ライブが終わると散らばる行動のことも隠喩していると解釈できる。大丈夫(Be Alright)、ライブに気兼ねなく行ける日常がまた来るはずさ。


Score 8.0/10.0

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