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Official髭男dism『Editorial』(2021年)

●良作だが…


CDが売れないこの時代に50万枚を売り上げてダブルプラチナアルバムに認定、また第12回CDショップ大賞2020で大賞を受賞したメジャー1stアルバム『Traveler』から、約1年10ヶ月ぶりとなるメジャー2枚目で通算3枚目のフルアルバム 。


出す曲にハズレなし"ヒゲダン"がブレイク後の2019年に放ったリスナー待望のアルバムである前作『Traveler』。"遥か先で君へ狙いを定めた恐怖"と「イエスタデイ」で歌っていたVoの藤原聡は、世間からの視線を振り切ってその後に結婚。まっすぐな姿勢を応援したくなるバンドだと僕は思っている。


今作『Editorial』もハズレ曲はないのだが、一曲一曲に力が込み入り過ぎているようにも感じる。それは初期作品から変わらない傾向なのだが、アラフォーになった年相応の僕の耳にはエネルギー過剰&カロリー過剰に感じてしまうのだ。


本作はアカペラのタイトルトラック#1「Editorial」で幕を開ける。アカペラ曲を収録するとは(しかも一番目のトラックで)、面白い趣向だ。このアルバム一枚を通して"想いを伝えたい"、アカペラの歌声の厚みからその想いを受け取る。


本作リードトラックの#2「アポトーシス」とは聞きなれない言葉であるが、ここでネット上にあった製薬業界の用語辞典を引いてみる。


「アポトーシスとは、あらかじめ予定されている細胞の死。細胞が構成している組織をより良い状態に保つため、細胞自体に組み込まれたプログラムである。」


そういえば、気鋭のロックバンドであるダニーバグも"アポトーシス"という名前の曲を発表していた。細胞の始まりではなくて、細胞の終わりにスポットライトを当てる精神にアートを感じる。


しかし、生と死だったら、ヒゲダンの音楽は生に焦点を当てているという印象を受ける。「アポトーシス」という曲名のとおり、さよならや死があるからこそ輝く生を主張している。「死にたい」と歌ったグランジとは対照的な音楽だ。オアシスがグランジへの返答として"Live Forever"を歌ったように、ヒゲダンの曲はこのコロナ禍の絶望に対して"生きて"というメッセージになるだろう。それは、ヒゲダン4人によるEditorial(論説、社説)=メッセージのように。ヒゲダンが奏でる恋愛(エロス)の音楽とは、生きる欲望のことなのだ。


そして、サビの盛り上がりで声を張り上げるボーカルも生のバイブスを感じさせる。エナジーあふれた熱唱にリスナーの僕らは圧倒されるばかりだ。


ただし、声を張り上げたボーカルは、僕個人的にはお腹いっぱいに感じるし、聴いていると少しだけ疲れてしまう。また、マンネリ感もあるし、歌心も感じない。その点、今作でいうと、レイドバックしたR&B調の#11「Bedroom Talk」(ちなみにこの曲はヒゲダンのギタリストである小笹大輔が作詞作曲)、過去曲でいうと、ライフソングの佳作"115万キロのフィルム"はボーカルが比較的張り上げない曲ということもあって歌心を感じる。"115万〜"みたいな曲を増やしてくれたら僕得だなと思う。


また、藤原さん以外のメンバーが作詞作曲したナンバーだと、ベースの楢崎誠さんが曲を書いた#8「みどりの雨避け」もアコギが素敵な雨音のように響くしっとりとした小品だし、藤原さんとドラムの松浦匡希さんが共作した#4「フィラメント」も四つ打ちの悠然としたリズムの佳作だ。



解像度が高く、具体性と抽象性のバランスに優れ、メッセージ性も伴った歌詞。こだわりを感じる清新な音の質感。歌詞と音に関していえば、本作は傑作の域だ。そして、藤原さんがソングライティングした#3「I Love…」や#13「Laughter」などの先行シングル曲のように、抗えない華がある。しかし、繰り返しになるが、個人的には歌声とメロディのテンションの高さについていけなかった。


ただ、上記のように書いたものの、ヒゲダン、King Gnu、米津玄師などの実力派がメジャーフィールドの第一線で活躍しているのは、邦楽界の未来にとって希望的なことに思える。これからも活躍を期待しています!


Score 7.8/10.0

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