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くるり『天才の愛』感想&レビュー【音楽的に啓発される】

●発想に富んだ演奏、段違いの描写力、若干のミステリアス感


13枚目となる"くるり"のオリジナルアルバム。本作をもってトランペット奏者のファンファンが脱退する。


本作は歌ものとしても、音楽実験ものとしても楽しめる内容となっている。


ツイッター上で、ある相互フォロワーの方が「大衆性がなければポップではない」とツイートしていた。


なるほど、そうなのかもしれない。だが、くるりの今作は大衆に媚びない凛としたポップのあり方を追求したものになっていると思う。


そして、「大衆性がなければポップではない」というならば、「冒険がなければロックではない」ともいえるのではないか。音楽的な冒険があった方がロックとして面白いものになるだろう。そして、今作は音楽的な冒険の満ち満ちたアルバムになっており、刺激的だ。



さて、このアルバムはくるりの3人が天才に扮し(もう既に天才だと思うけど)、様々な愛を歌うアルバムになっています。「天才」と聞いて、読者の皆さんはどのようなことをイメージしますか?


僕は音楽的には、演奏の一音一音が発想に富んでいて知的なことが「天才」だと思う。


今作のインスト曲やインストに近い曲である「大阪万博」(ジャジーでファンクなインスト曲)、「watituti」(ブルージーな土の匂いのする曲)、「less than love」(トランペットの音が芳しく匂い立つインスト曲)の三連発を聴いてみてください。天才的で丁々発止な音楽的やり取りが楽器奏者の間で行われている。



また、くるりは歌詞と併せた描写力の天才でもある。情景を運んでくる岸田繁さんのボーカル、楽曲に落ち着きを与える佐藤征史さんの自然体なベース、そしてファンファンのトランペットは風のように自由だ。


「野球」は「かっとばせ」という応援のコールを音楽的にしたためたもので、自分が球場にいるような臨場感がある。野球界のレジェンド達の名前が次々に歌われ、オールスターな華々しさが楽しい。


「益荒男さん」では奇想天外な和風エスニックの音楽が奏でられる。ユーモラスな方向に振り切れたトリッキーな楽曲だ。


「潮風のアリア」と「渚」では、海辺の爽やかな風が吹き抜けていくような軽やかさと、波が永遠に打ち寄せては引いていくことの重たさを感じる。


「ことことことでん」は「ことでん」の愛称で呼ばれる香川県の高松琴平電気鉄道をモチーフにして作った歌だ。素敵で可愛らしい電車の光景が見えてくる。フィーチャリングにはHomecomingsよりボーカルの畳野彩加さんが参加し、岸田繁さんと寄り添いあうような優しい歌声のハーモニーを聴かせてくれる。この曲の岸田さんのボーカルは本当に優しくて、くるり史上でも無二だと思えるくらいだ。



そして、最後に「天才」という言葉に、僕は若干のミステリアス感を覚える。天才という、常人の理解が及ばない域にいることに、俗世から離れているような神秘性を感じるからだ。


「I Love You」と「ナイロン」は抑制の効いたミステリアスな楽曲だ。モーツァルトの音楽のように、聴いているだけで頭が良くなる(天才になる)と錯覚しそうになる、知性に富んだ楽曲だ。これこそ、天才の才能の発露。ああ、自分はこういう風な曲も気持ち良いのだなと、見知らぬドアを開けたような新鮮な気付きがある。



しかし、天才であることで人を寄せ付けないという訳ではない。ラストの曲「ぷしゅ」では親しみやすさを感じる日英バイリンガルソングを聴かせてくれる。この曲では、枝豆や日々に飲む冷えたビールのことを描写するなど、日常に対する岸田さんの愛と愛着を感じさせられる。(「ぷしゅ」という曲名は、缶ビールの栓を開けた時の音ではないだろうか。)


僕には、今作が国民的なヒットアルバムになるとは思えないが、聴くことで音楽的に啓発されるという点では、随一のアルバムだと思う。気になった方はぜひ聴いてみてくださいね!


Score 8.2/10.0

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