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銀杏BOYZ『ねえみんな大好きだよ』感想&レビュー【荒々しさを演出しつつ細部まで突き詰めた表現】

●荒々しさを演出しながら細部まで突き詰めた表現


2014年の『光のなかに立っていてね』以来、約6年半ぶりとなるニューアルバム。もう6年も経ったんだ…。


最近の売れている音楽で比較すれば、音像の軽やかさで突き抜けたYOASOBIの真逆で、昔と変わらない重さのある音とメッセージで突き抜けた姿勢を見せつける一作だ。YOASOBIよりも聴く人を選ぶかもしれないが、ハマる人はそのハマる深度がどこまでも深く、リスナーから熱量を持って聴かれているバンドだと思う。


そんな熱量の高いリスナーに向けて、『ねえみんな大好きだよ』というタイトルの作品を届ける、峯田さんとリスナーの距離の近さと結束の固さ。それは、作品が出るまでにスパン(期間)があっても変わらない。


シアトリカル(演劇的)な楽曲が並ぶ本作。清廉なロマンチシズムと土臭い欲望が一体となって熱量の高い音楽を生み出している。銀杏BOYZを初めて聴く人は、冒頭2曲のハードコアパンクでまず度肝を抜かれるだろう。かと思えば、#9「生きたい」のような切実な語りかけの曲もあり、その振り幅こそが、峯田和伸のひたむきな生を象徴していると思う。相次ぐ有名人の自殺の状況の中で死にたいと思っている人に聞かせたい。


前身バンドGOING STEADY時代の”DON'T TRUST OVER THIRTY”をリアレンジした#3「大人全滅」など、自身の過去作をオマージュしたり、歌謡曲と洋楽からの影響を乱反射したりして、ノイジーかつカラフルな世界を展開する。ジーザス&メリーチェーンから影響を受けたと思われる、その名も#4「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」という曲があり、これがスローな豊かさがあってとても良い曲なのだ。一曲の中にベタと革新が共住しているのは、大衆性もありつつ、エッジの効いた表現を行う銀杏BOYZの姿勢を如実に示していると思う。


最近の役者としての活躍やメディア出演の多さから、反権威だった峯田和伸が権威側になったという批評を目にしたが、もう現在の時代は反権威や権威側という概念を以前のように論じる時代ではないと思う。バンプオブチキンやRADWIMPSも最近のテレビ番組に出演しているが、それを指してセルアウトしたとは誰も言わないでしょう? 今はより良き文化と社会のために、反権威や権威側の区別なく力合わせる時代のはず。今の日本の政党でいうと、相手をディスるよりも相手に協力し、提言しようという国民民主党のスタンスが今の時流に沿っていると思う。(同党の国民からの支持率は依然低いままだが。)


歌謡曲的なメロディや温かいギターの音はどこか懐かしく聴こえ、"おとぎ話"というバンドのやりたいことに近いのかなと思う。おとぎ話にももちろん素晴らしい点や良さ(かったるさのフィーリングゆえの気持ち良さ等)はあるのだが、銀杏BOYZはおとぎ話の音楽よりも表現として極めて突き抜けていると思う。(表現の焦点のピント合わせの仕方が違うだけで、どちらが表現として優れているかという話ではない。)


「駆け抜けて性春」以来のYUKIとのコラボとなり、 後半のYUKIの歌声が彩りを添える#7「恋は永遠」も素晴らしい。程よくスローかつキャッチーで、メロディがあるべきところに収まっている名曲。


ラストを飾る曲#11「アレックス」は、叶わなかった"君"と一緒にいたはずの未来を愛おしむ穏やかな曲だ。「だいすきだったよ」と歌う峯田さんの優しさは、全ての誰かの元カレや元カノのリスナーに届くのではないだろうか。


本作に対する著名人の反応だと、セカオワのFukaseのコメントが的確だと思った。以下に引用する。


「この“声”を聴くといつも思い出す。自分にはこんなにも輝かしく哀しい記憶があった事を。

この“声”は、季節の花の香りの様に、帰り道の夕飯の匂いの様に、グレープフルーツの香りの様に、いつも最短距離で其処へ連れて行ってくれる。


そしてまた前世の記憶の様に、とても遠くて一番近い、大切な大切な記憶。」


そう、満たされたいけど満たされない僕らの帰ってくる大切な居場所として銀杏BOYZの音楽はある。峯田さんが歌い叫ぶ時、一瞬の青春のような清々しさで永遠に懐かしい場所へ僕らを連れて行ってくれる。


Score 8.4/10.0

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