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羊文学『ざわめき(EP)』(2020年)

●様々なシチュエーションを描き分ける力


インタビューによると、前作『きらめき』は「女の子」をテーマにし、羊文学のポップサイドを表現した作品だったが、今作『ざわめき』は「素直な私たち」を表現したという。


今作の収録曲「夕凪」は映画『ゆうなぎ』の主題歌であり、同じく収録曲の「サイレン」は自主制作盤から再録され、同映画の挿入歌となっている。


僕は「1999」のようなポップでキャッチーな即効性のある楽曲をまた作ってほしかったのに本作には収録されていないため、手放しで褒めることはできないが、本作も佳作であることは間違いない。


いつもの羊文学のように、シューゲイザー/オルタナティブ直系のノイジーなギターがかっこいい。ただ、羊文学はアルバムごとに音楽性をガラリと変えられるようなカメレオンバンドではないようだ。そのため、ソングライティングの密度が肝になっていくが、本作『ざわめき』でもソングライティングは総じて成功していると言えるだろう。


冒頭の#1「人間だった。」が圧巻。文明批判とも受け取れる歌詞だが、震災後とIT革命後の現在のリアルを捉えている。疾走感が気持ちいい。羊文学はこのハイテンポで、文明の発達速度の速さと、それでも自然が全てをぶち壊すことの凄まじさを描きたかったのではないか。


#2「サイレン」。冒頭から続くリバーブをかけたギターの音色は、スローに発光し、点滅するサイレンを連想させる。テンポアップする時のドラミングが迫力満点でかっこよく、サイレンのもたらす緊張感を捉えている。しかし、全ては夢の中での出来事なのだ。


#3「夕凪」。夕凪とは、「夕方、波風が静まること。夕方、海風と陸風とが交替する時、一時無風の状態になること。」(Googleより)。風が吹かない時と吹く時という日々の繰り返される日常が穏やかに表現される曲だ。


#4「祈り」。この曲が僕の一番好きな曲だ。僕も悩むことは人並みにあるから、「夜の中で君が一人泣くことは/どんな訳があるとしても許されているから」という歌詞が優しく響く。羊文学の音楽には様々なシチュエーションが用意されているが、自分の状況がそのシチュエーションにすっぽりハマった時に、彼女たちの音楽は自分にとっての文学になる。


#5「恋なんて」は失恋の歌。リズム隊とギターがドラマの背景を描き、ボーカルが物語を紡ぐ。「恋なんてくだらないことで傷つくものなんだ」という主人公の認識はドライだけど、後ろ髪引かれる描写が続くことを鑑みれば、主人公は彼女を愛していたし、だからこそ別れることになって傷ついていることが分かる。


全5曲の曲想は様々で、まさに文学者のごとく、シチュエーションを描き分けていることが分かる。そして、羊文学の塩塚モエカには、雰囲気たっぷりにそれらを描き分ける能力がある。少しドライな味付けなのも良い。皆さんもぜひ、聴いてみてくださいね!


Score 7.7/10.0

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