リリー・イザベラ・ソフィー・ウインザー
わがまま姫さま
私は、恵まれた人間だと思う。
愛するお母様に似た私に対して甘い、優れた王であるお父様。そんなお父様を上手に支える王妃であるお母様。甘やかしてくれる完璧でかっこいいお兄様。
まさに順風満帆。
だから、ノアっていう貴公子を気に入った時も、すぐに手に入ると思ってた。お兄様とお母様は反対するけれど、お父様は応援してくれるし。
だから、いつまで経っても私を受け入れないノアに余計に意地になった。絶対欲しいと思った。
そんな中で、突然思い付いた。ユリアナさんと賭けをするの。ノアが私にキスをするかしないか。ノアが私にキスをすればユリアナさんにノアとの婚約を解消してもらう。ノアが私にキスをしなければユリアナさんとの婚約や結婚を祝福する。
きっとノアは私が諦めるからって言えばキスしてくれるわ!大丈夫!
「…ユリアナ・オルコット、ただいま登城しました」
「ユリアナさん!来てくれたのね!」
私はユリアナさんに駆け寄っていく。お兄様はどうしたらいいかわからないという顔で微笑む。
「今日はね、ユリアナさんにお願いがあって来てもらったのよ!」
私はユリアナさんの手を両手で包み込む。
「あのね!ノアを私に譲って欲しいの!」
「…え?」
「ねえ、賭けをしましょう?」
「は、はい?」
「私、これから来るノアにキスをお願いするわ!それで、ノアが拒めたら貴女の勝ち!私、諦めるわ!でも、ノアが私にキスをしたら私の勝ち!貴女達は婚約破棄よ!」
「は、はい…?」
うふふ。ごめんなさいね、ユリアナさん。
「ユリアナ嬢、すまないな。妹にはどうせ無駄だからやめておけと言ったんだが…」
「まあ!酷いわ!お兄様!どちらの味方なの!?」
「ノアとユリアナ嬢に決まってるだろう」
「…もう!意地悪ね!」
お兄様なんて知らない!
「とにかくそういうことだから!貴女とお兄様はそこの物陰で見てて!」
「は、はい…?」
「ユリアナ嬢、大丈夫。ノアなら必ず拒むよ」
「ええ…?」
ということでお兄様はユリアナさんと物陰に隠れる。
そしてノアがやって来る。最近のノアは、大分窶れて痛々しい姿。どうしたのかしら?まあ、ともかく!
「ノア、私、キスしてくれれば貴方を諦めるわ!ユリアナさんとの婚約や結婚も祝福する!だから、私にキスをして!」
「そうですか。わかりました」
そしてノアは、そっと私に近づいて、そっと耳打ち。
「お断りいたします」
「…!?なんで!?キスしてくれるなら貴方を諦めるのよ!?」
「白々しい。そんな嘘に僕は騙されませんよ。大体、もし本気だとしてもユリアナ以外の誰かにキスするとか地獄でしかない」
「なっ…、なによ!」
ばちんっ!と、音を立てて私はノアの顔を叩く。なによ!なによ!
「私に…この私にここまでさせておいて!」
「そんなのそちらの勝手でしょう。僕のことは大人しく諦めてください」
「…っ!」
「そこまでだ」
物陰からお兄様とユリアナさんが一緒に出る。
「ユリア!会いたかった!」
「ノア…っ!」
…もう!ここでいちゃいちゃしないでよ!
「賭けはユリアナ嬢の勝ちだ。リリー、諦めなさい」
「うぅ…」
「賭け?」
「ああ。ノアがユリアナ嬢を諦めないからな。妹が痺れを切らして、ユリアナ嬢と賭けをしたんだ」
「一体どんな?」
ノアがユリアナさんを抱きしめたままで聞く。
「ノアがリリーにキスをするかしないか。ノアは、やっぱり断ったな。ユリアナ嬢。これでもう安心だぞ」
「ノア…」
「ユリア!これでもう安心だよね!僕と婚約続けてくれるよね!?」
「…っ!うん!勝手なこと言ってごめんね、ノア…!」
「ユリアが戻ってきてくれたなら、それで充分だよ!」
「ノア…っ!」
ユリアナさんの目からは大粒の涙。なによ、これじゃあまるで私が悪役みたいじゃない…。
「…綺麗だ」
思わず、お兄様の方を見る。お兄様は一瞬、ユリアナさんに見惚れていた。お兄様には婚約者がいるのに!私あの子と仲が良いのよ!今更ユリアナさんに横恋慕なんて、そんなのダメよ!許して!
「あの…ユリアナさん。私が悪かったわ、ごめんなさい」
「え?い、いえ、そんな…」
「だからお兄様まで盗らないで…!」
「え?」
「リリー!」
「だって、お兄様!」
「それじゃあ、僕達はこれで失礼します。いいですよね?」
「はい…」
「妹がすまなかったな」
こうしてノアは、ユリアナさんを連れて王城を後にした。
でも見た目は可愛い




