アベル・オルティス♢
本当は最初からわかってた
…結局、義姉上に毒を盛るのには失敗した。決闘でも負けた。しかも殺してもらえなかった。その上この出来事自体なかったことにされた。一週間の自室での謹慎で終わりにされた。馬鹿にしてると思う。僕がどんな気持ちで、どれだけの覚悟でことにあたったか。あのお人好し達にはわからないんだろう。
毒は、実はもう一個同じものを隠し持っている。万が一失敗した時、もう一度毒を盛るために。でももういい。僕は自分に毒を使うことに決めた。…といっても自決とかではない。そもそもこれはそういう猛毒ではないのだ。身体的な影響はせいぜい腹を下すくらい。ただ、精神に与える影響が大きいんだ。その影響とは、愛する人を忘れるというもの。
何故それを自分で使うか?決まってる。…本当はわかってたんだ。僕は兄上を、義姉上を恨んでなんかなかった。むしろ二人が大好きだった。だからこそ、あの二人の一番になれない自分が許せないんだ。要は完全な八つ当たり。二人への愛情を拗らせていただけだった。
これを飲んで、もう一度、一からやり直そう。そうすればきっと、今度こそ…お兄様とお義姉様と仲良しな兄弟になれる。まあ、あの二人はお互いがお互いの一番だから、あの二人の一番にはなれないけどね。でもせめて普通の兄弟にはなれるはず。
毒を飲み込む。一瞬、クラッと目眩がする。起きているのが辛い。ああ、でも、これは毒が効いている証拠だ。よかった。これで―様と―様とやり直しが出来る。…あれ?―様と―様って誰だろう?…あれ?何か大切なことを忘れている気がする。そういえば僕は、なんで謹慎処分なんて受けているんだっけ?…ああ、だめだ。頭が回らない。こういう時は一度寝てみよう。そうだ。昔高熱を出してこんな状態になった時、―様にも寝てれば治るよ、頑張って早く治してねって言われたっけ。…あれ?―様って誰だろう。ああ、ともかく今日はもう寝よう。
おやすみなさい、お兄様、お義姉様。
次こそはちゃんと仲良くしたいな




