婚約者の家でちょっとしたお茶会のはずが決闘に発展した
毒薬
今日は学園がお休みなので、ノアのお屋敷にお邪魔しています。
「ユリアナさん、ご機嫌よう」
「ユリアナさん。よく来てくれたね」
「ご機嫌よう。お義父様、お義母様、アベル様」
「ご機嫌よう、義姉上」
お義父様とお義母様はいつも笑顔で出迎えてくださいます。アベル様はいつもと同じ素っ気ない態度ですが、挨拶は返してくださいます。
「アベル、ユリアナに素っ気ない態度をとるのはやめろ」
「兄上には関係ないでしょう」
「関係ある。僕はユリアの婚約者なんだから」
「ノア、そんな風に言わないで。私は気にしてないから」
「ほらほら、ユリアナさんが困っているよ。二人ともその辺にしておきなさい」
お義父様が止めてくださいました。二人ともお義父様の言うことは聞くのでありがたいです。
「それよりも良質な茶葉が入ったのよ、一緒にお茶会にしましょう?」
「ああ、いいですね。ユリア、僕が淹れてあげるね」
「ありがとう、ノア」
「…お待ちください、兄上。少々淹れ方にコツがあります。今日は僕が淹れましょう」
「…?そうか、なら頼む。…珍しいこともあるものだな」
「ええ、まあ…」
「ありがとうございます、アベル様」
「いえ、将来の義姉になる方の為ですので」
そう言うと手際よくお茶を淹れてくれるアベル様。
「さあ、どうぞ」
「ありがとう、いただきます」
…あれ?ジャムも何も入れていないのに。
「…甘い、香り?」
思わずそういった瞬間、アベル様の顔が歪んだ。…あれ、これ、マズいのでは?
「…!ユリア!そのお茶は飲んだらダメだ!」
ノアに手の中にあるカップを奪われる。
「アベル。お前、ユリアナに毒を盛ろうとしたな…?」
「…ええ、しましたね」
「アベル!?」
「ユリアナさんになんて事を…!お前の将来の義姉なんだぞ!」
私は突然のことで反応が出来ない。私、アベル様に何かしてしまったのかしら?
「…もう、我慢出来ない。ユリアナに対して素っ気ない態度だっただけでも許せないのに、この仕打ち。許せない。」
バシンッ
ノアの手袋が地面に叩きつけられる。
「拾え。アベル、僕と決闘しろ」
い、いやいやいやいやダメでしょ!兄弟だよ!?兄弟で殺し合いとか絶対ダメだから!
「ええ、お受けいたします。」
いやなんで手袋拾ってんの!?何やってんの!?やめてー!?
「あ、あの…きっと私が何かアベル様に失礼があったのよ!だから私が悪いの!お願いだから馬鹿な真似はやめて!」
必死に間に入るものの、意味はなかった。
「いや、ユリアは何も悪くない。悪いのはアベルだ」
「ええ、義姉上は関係ありません。ただ僕が気にくわないだけです」
ここまで言われるともうフォローのしようがない。どうしよう…!
「…決闘が成立してしまった以上仕方がない。私が見届け人になろう」
「お義父様!?」
「ありがとうございます、父上」
「ありがとうございます、申し訳ありません父上」
「…ああ、まさかこんなことになるなんて。母は悲しいわ。アベル」
「…申し訳ありません、母上」
あー!話が勝手に進んでるー!
「決闘の勝敗は、どちらかが命を落とすことで決定する。では、はじめ!」
そうして戦いが始まってしまった。
最初はお互い互角の勝負だったけれど、次第にアベル様が劣勢になっていった。そして、ついにノアがアベル様の手から剣を弾き飛ばした。カラカラと音を立てて落ちたアベル様の剣。アベル様の首元に、ノアの剣先が添えられる。
「何か言い残すことはあるか?」
「…僕は貴方と義姉上が大っ嫌いだ」
「言い残すことはそれだけか」
やばい。このままじゃノアがアベル様を殺してしまう。私は走ってアベル様の剣を拾う。そして急いでアベル様の前に割って入った。
「…義姉上?」
「ユリア!?」
「ちょっと待った!ストップ!ストップ!」
必死で叫ぶけど、ノアは聞いてくれない。
「いくらユリアの願いでもそれは聞けない!どいて!ユリア!」
「いいえ!退きません!」
剣を構える。とにかくこの現状を打開しなければ!
「どうしてもアベル様を殺すと言うのなら私を殺してからにして!」
「…っ!…それはっ」
これならきっとノアは退いてくれるはず!
「…そんなこと、できるはずない」
カラン…
ノアの手から剣が落ちた。
「…ありがとう、ノア」
「ユリアは狡いよ…」
ノアに抱きしめられる。私は黙って抱きしめ返した。
「…さて、これはどうしたものかな。見届け人としてはどうすればいいと思う?」
「圧倒的にノアの方が優勢だったのだし、ノアの勝ちってことでいいじゃない」
お義父様とお義母様がひそひそと相談している。いや、こっちまで聞こえてますよ?
「義姉上…何故僕を庇うのですか?」
「だって、大切な義弟ですもの。それに、ノアの綺麗な手が汚れるなんて嫌でしょう?」
「…っ!ユリア!」
ノアは今の私の台詞に感激したようで、抱きしめる力が更に強くなる。
「…すまない、ユリアナさん。今日の出来事はなかった事にしてくれないか?」
「父上!?」
「…父上、何を言っているのですか?」
「わかりました!なかった事にしましょう!」
「ユリア!?」
「義姉上まで一体何を…」
よし、よし!とりあえずこれで人死はなくなった!やったー!
「アベル、お前は一週間自室で謹慎処分だ」
「は?」
「待ってください!処分が軽すぎます!」
「だが、ユリアナさんは軽い処分を望んでいるようだぞ?」
「…っ!ユリア!君は優し過ぎだ!」
「いいじゃない、それで穏便に済むのなら」
「ユリア…」
「さあ、アベル。今から自室で謹慎してきなさい」
「…はい、母上」
「待て!アベル!いくらユリアナが許したって僕はユリアナを傷つける奴は許さないからな!」
ノアのその言葉には何の反応も示さずアベル様は自室に戻られた。
「ごめんなさいね、ユリアナさん。うちのバカ息子が…」
「いえ、お気になさらないでください」
「今日はもう帰った方がいいだろう。ノア、送っていって差し上げなさい」
「…わかりました」
…これから、アベル様はどうなるんだろう。大丈夫かな。ノアも実の兄弟とこんなことになって参ってるだろうし。せめて少しでもノアを癒してあげたい。
今日は馬車の中では私の方からたくさんノアの顔中にキスをした。ノアは凄く喜んでくれた。これで少しでもノアが癒されてくれればいいと思う。
効能は後程




