マリアナ・オルコット
私の可愛いユリアナ
私はマリアナ・オルコット。私には優しく頼もしい両親と、可愛い妹がいました。使用人達もみんな優しいし、私の世界は優しいもの、美しいもので溢れていました。
でも、ある日転機が訪れました。私に婚約者が出来たのです。初めて婚約者に会った日、彼に言われました。どうして姉の癖に妹を守ってやらないんだと。どうして妹が傷ついているのに気が付かないふりが出来るんだと。言われて初めて気が付きました。両親や使用人達は何故かこんなに可愛い妹を邪険に扱うのです。何故でしょうか。私は両親や使用人達に直接聞きました。そうすると、私のような美しい容姿を持たず、私のような美しい心を持たず、私のような教養を持たない出来損ないだからだと言われました。意味がわかりません。妹は十分すぎるほど可愛いです。美しい心は愛情をかけて育てられてこそ磨かれるものです。教養はきちんとした教育を受けてはじめて身につくものです。私はそこで初めて気付きました。私の世界に優しいもの、美しいものなんて何一つなかったと。
それから私は必死で妹を守るようになりました。両親や使用人達が妹に嫌味を言えば言い返し、妹を邪険にすれば両親達を邪険にし、妹に暴力を振るった時は家で暴れまわりました。両親や使用人達は私の変わり様に困り果てて、少しだけ妹に対する態度を改めてくれました。今まで妹が傷ついていることにすら気付いていなかった私に、妹は懐いてくれました。私を大切な姉だと言ってくれました。その日、私は初めて本当の家族を得ることが出来たのです。また、婚約者との関係もそこから改善していきました。妹は私が婚約者に大切な妹だと紹介したから婚約者が妹を大切にしていると思っているようですが、実際には将来の義理の妹が傷ついているのを見た婚約者が私の目を覚ましてくれたのです。でも、婚約者はこのまま勘違いしたままでもいいんじゃないかと言います。下手に真実を告げて謝るより、よっぽど贖罪になるじゃないかと。それもそうかもしれません。私の心は罪悪感でいっぱいですから。そしてその後、可愛い妹に婚約者が出来ました。それからはさらに両親や使用人達の妹に対する態度が改善しました。今まで別々にとっていた食事も一緒にとるようになりましたし。…なんでここまであからさまに差別されていたのに、昔の私は気付かなかったのでしょう。本当にお花畑の住人だったのね、私。
ああ、でも。確かにあの日、気がついてしまったことで大切にしていた全てを失った私ですが、その分本当の意味で家族を得ることができて本当に良かったと思います。婚約者とも信頼関係や愛情を育めましたし、あの時彼が気がついてくれて、教え諭してくれて本当に良かった。
私の可愛い妹ユリアナ。どうかユリアナのこれからが幸せに満ちたものでありますように。まあ、ノア様がいる以上心配ないとは思いますが。
多分本当の意味で両親と分かり合える日は来ない




