94 オタク友達
コスプレとは
「ねえ、斉藤。コスプレに関して詳しかったりする?」
「いきなりでござるな」
何気なくそう聞くと斉藤は少しだけ考えてから言った。
「それは一般人が想像する職業や制服などのことなのか、それともオタクの想像する二次元のコスプレのことなのかによって違うでござるな」
「詳しくはあるんだね」
「腐女子の彼女とコミケに行ったことがあるでござる。そこで二人で男キャラにコスプレして仲良くしてたら女性からたくさん撮られたでござる」
「ごめん。聞くべきじゃなかったね」
なんだか想像よりもオタク色が強くてびっくりだけど、斉藤は気にしてないのか笑って言った。
「いいでござるよ。むしろ拙者としては彼女が出した拙者受けの同人誌の売り子をやった時点で色々終わってるでござるから」
「彼氏でBL本書いた上に売り子までやらせたの!?」
「女性からの好奇の視線はともかく、何人かのオッサンに手を握られた時は肝を冷やしたでござる」
凄い彼女もいるものだと思っていると、横で聞いてた雅人が聞いてきた。
「というか珍しいな。健斗がそういう話題ふるなんて」
「ちょっとね。色々あって」
「ん?もしかして女装でも強要されたか?」
「なんと、けんちゃんが女装デビューでござるか」
「いやいや、ないから」
「そうか?似合うと思うぞ?薫とババアなんかそんな話をしたら喜んで化粧とカツラを用意しそうなもんだが」
想像するだけで怖い。
「いやいや、本職が間近にいるのにそんなことはしないから」
「そういやそうだったな。というか、聞いたぞ。引っ越すんだってな」
「誰から聞いたの?」
「親父。転校はしないんだろ?」
思ったよりも早くに伝わったことに驚いていると、斉藤が驚いたように言った。
「けんちゃん引っ越すの?初耳でござる」
「引っ越すと言っても父さんが県外に行くだけだよ」
「一人暮らしでごさるか」
「いんや。多分同棲になるんだろ?」
「雅人。推察はいいけど人前では自重してね」
ここまで心を読まれると本当にやりづらいと思っていると、雅人は笑って言った。
「ま、誰にも言わんさ。面倒なことになっても困るしな」
「よくわからないけど、拙者はけんちゃんの味方でござるよ」
「ありがとう。さしあたっては明後日からの修学旅行なんだけど・・・」
「わかってる。出来る範囲でサポートはしてやるさ」
物分かりのいい親友に驚いてしまうが、折角協力してくれるならそれに乗っからない手はないだろう。千鶴ちゃんを置いての修学旅行はかなり思うところがあるが、それでも一応学生最後の青春を謳歌するべきかもしれないとも思う今日この頃である。