79 テスト3日目
最終日
本日でテストも終わりと気合いを入れていると、玄関から音が聞こえてきて、やがて父さんが姿を表した。
「あら?健斗おはよう」
「おかえり、父さん。今日もお疲れ様」
「ええ、これから出掛けるの?」
「まあね。早めに準備しないとね」
そう言うと父さんはしばらく考えてから言った。
「ねえ健斗。確か来月よね修学旅行」
「そうだよ」
「千鶴ちゃんはその間はどうするの?」
「一応先生の妹さんが面倒見てくれることになってるよ」
「そう・・・」
そう言うとしばらく黙ってから父さんはスマホを取り出してから言った。
「一応昼間なら私も動ける日があると思うから妹さんに緊急時のために連絡先を教えておいてくれる?」
「いいけど・・・父さんに電話するような事態って何?」
「そうね・・・特にはないわね」
その言葉に父さんの空気がずーんとしてしまう。俺は慌ててフォローするように言った。
「で、でも確かに病気とかそういう緊急時には父さんが必要かもしれないね」
「そうね、慰めてくれてありがとう」
「いや、いいよ。それより昨日巡李さんと薫ちゃんに久しぶりに会ったんだけど・・・」
「あらそうなの?」
「うん、巡李さんはよろしくって伝えてって。昌さんは父さんの店に顔見せているんだよね?」
雅人の父親の中条昌さんはよく父さんの店に行ってるそうなのでそう聞くと父さんは頷いて言った。
「ええ、まさちゃんは常連客よ。と言ってあまり飲まずに話をしにきてる感じかしら」
「そう、昌さんも元気そうで何よりだよ」
「結構、健斗のこと心配してたわよ」
「そうなんだ」
なんだか嬉しい気持ちになるが、父さんは何かに気づいたように言った。
「ねえ、健斗。もしかして雅人くんには遥香さんの件は話してるの?」
「一応ね」
「そう、あなたならわかってるとは思うけどあまり他言はしない方がいいわよ」
「わかってる。完全に信用できる人以外には話してないよ」
俺が話したのは雅人と斉藤の二人。雅人からは雅人ファミリーに伝わったがそこまでは想定内。残りの斉藤は口が固いし関係者にもれるような交友関係はないので大丈夫だろう。そうなると後の問題は海斗だが・・・海斗も多分おかしなことにはしないだろうから大丈夫だろう。
「世の中まだまだ色々あるから用心にこしたことはないわ。大人というのは腐った中身の人間が多いから」
「でも、遥香さんみたいな人もいる。大丈夫だよ。腐った大人とそうでない人の区別はなんとなくつくから」
「ならいいわ、いってらっしゃい」
その言葉に頷いてから俺は先生の家へと向かうのだった。