77 似た者兄妹
これが遺伝子か・・・
「あら、健斗くんまた料理の腕上がったわね」
「ありがとうございます。巡李さんの料理も相変わらず美味しいです」
御袋の味というものは多分俺はお祖母ちゃんに教わったものがそうなのだろうが、俺には料理を教えてもらった人が二人いる。一人はお祖母ちゃんだが、もう一人は巡李さんだ。幼い頃より仲の良かった雅人の家に遊びに行くとついでに料理を習うこともよくあったのを覚えてる。
「それにしても・・・薫ったら遅いわね」
「薫ちゃんもテスト期間ですよね?」
「ええ、あの子は雅人と違って真面目だからいつも時間通りに帰ってくるのだけど・・・」
「いや、真面目かアイツ?」
「何かあったのかしら」
疑問系の息子の質問を鮮やかにスルーする巡李さん。のほほんとしていても逞しいのは本当に尊敬できる。
『ただいまー』
そんなことを考えていたら玄関から声が聞こえてきた。帰ってきたのかな?
「お兄ちゃん、もう来てるの?」
そう言いながら入ってきたのは巡李さんをさらに幼くしたような黒髪の美少女。俺はその子を見ると笑顔で言った。
「薫ちゃん、久しぶり」
「健斗くんいらっしゃい。結婚するって本当?」
「気が早いけど、結婚を前提に付き合ってる感じかな?」
「そうなんだ、おめでとう」
そう言ってから机の上を見てから薫ちゃんはそこに視線を固定して言った。
「もしかしてそれ、健斗くんの手作り?」
「うん、そうだよ」
「相変わらず女子力高いね。私も食べていい?」
「ああ、うん。もちろん」
「やった」
嬉しそうに弁当に手を伸ばす薫ちゃん。昔と変わらずに接してくれているので嬉しくなる。女の子というのは年月が経つと関係性が変わりやすいので少しだけ心配だったがそんなことが杞憂に終わるように親しく接してくれる。
「あ、そういえばお兄ちゃんまた彼女変えたんでしょ?」
「だったらなんだ?」
「たまには健斗くんみたいに純愛したら?」
「そういうお前は早く彼氏作れよ」
「るっさいなー、私は普通に興味ないだけ。だいたいシスコンのくせに私に彼氏作れとか普通言う?」
「シスコンじゃないから、というかブラコンのお前に言われたくない」
何やら火花を散らす二人に少しだけほっこりする。昔から仲良し兄妹だとは思っていたけどここまで変わらないと安心する。そんな二人を見て巡李さんは言った。
「仲良しなのはいいけど、早くしないとお母さんが健斗くんのお弁当食べちゃうわよ」
「「それはダメ!」」
息がぴったりの二人に思わず笑みが浮かんでしまう。そうして俺は久しぶりの再会を楽しむのだった。