715 2人の孫
孫娘
「あ、おじいちゃん、こんにちは」
千鶴を迎えに行ってから、一緒に家に戻ってくると、桜を見てる祖父の存在に気付いてきちんと挨拶をする愛娘。
そんな孫の挨拶に祖父である父さんも微笑んで答えた。
「こんにちは、千鶴ちゃん。元気そうね」
「うん、おじいちゃんも」
そう言いながら、桜の方にも帰還の報告をする千鶴。
楽しそうに起きてる桜に、今日は何があったかを話して、泣き出せばオムツやミルクのお手伝いをしようとする。
「・・・なんていうか、千鶴ちゃん、健斗に似てきてない?」
「え?そう?」
「ええ、お父さんの影響力って凄いわね・・・」
まあ、人格形成って6歳位までで決まるって聞いた事あるしね。
でも、似てきてると言われると嬉しくもなる。
「容姿はお母さんに似て、性格はお父さん似かしら?」
「でも、千鶴も母親に似てるところ結構あるから、何とも言えないよ」
甘えん坊な所とか、我慢しちゃう所とか、優しい所とか、愛情深い所とか、俺としては母娘の共通点が多くて微笑ましいものだ?
まあ、ゲンキンだけど、俺に似てきたと言われると嬉しくもあるのは確かだ。
「子は親の背中を見て育つって言うけど・・・私はあなたと海斗にはあんまりカッコイイ背中は見せられなかったわね」
「そんな事ないよ。というか、俺も海斗も父さんが居たからちゃんと育ったんだし」
俺に関しては、分からないけど、海斗はいい子に育った。
好きな子も出来て、きっとこれから更に幸せになるだろう。
「そう?でも、健斗はお母さんの背中の方が見えてそうね」
「背中どころか、影すら見えてなかったけどね」
その存在のあまりの大きさは、俺程度では埋めることは出来ず、また、最近というか、前から分かってはいたが、誰かの変わり・・・なんて、おこがましいこと、俺には無理だと悟った。
母さんの代わりは居ないし、遥香や千鶴、桜の代わりもいない。
それをきちんと気づかせてくれたのが、遥香だったのだ。
だから俺も、俺の代わりの夫やお父さんなんか居ないって、家族に思わせる父親になりたい。
「誰がなんと言おうと、俺はその姿で頑張る父さんがカッコよく見えるよ」
「・・・ありがとう、健斗」
少し涙ぐんだような父さん。
俺も歳を取ると涙腺が脆く・・・いや、今も脆いな。
これが、2人の結婚式とかなら号泣必死だし、卒業式や入学式とかのお祝い事でも泣きそう。
我ながら涙腺はゆるゆるだが、これも娘達への愛がなせるものだと思って欲しい。
そうして、父さんは孫たちを見守ってから、また仕事の日々へと帰るのだった。
少しは気分転換になれてればいいけどね。




