674 親友へのバトン
レナちゃん
種目も進み、いよいよ最後のリレーのみとなった。今のところ、千鶴とレナちゃんのいる赤組と白組の点差は拮抗している。お昼に聞いた話によると、白組に足の速い子がいるらしく、女子のアンカーで千鶴とその子が戦うことになりそうだ。
ちなみに、アンカーの前の選手がレナちゃん。話し合った結果、レナちゃんが千鶴を推薦したそうだ。なんとも微笑ましいやり取りだったと担任の先生からは聞いてるが、それだけ2人が仲良しということだろう。
そうしてスタートした最後のリレー。
最初の2人の後で、レナちゃんから千鶴へとバトンが渡るそうで、今は第1走者だ。去年のように最初で差がつくことはなく、上手いこと2番目の走者にバトンが渡っていくが、控えの千鶴とレナちゃんは少し緊張気味にそれを見ていた。
今年もアンカーなのは、少し重荷かな?と思ったが、俺と視線が合うと嬉しそうに手を振ってきてから、レナちゃんの緊張を解していたので杞憂だったかもしれない。
そんなことを思っていたら、バトンは第3走者のレナちゃんに渡る。が、ここでハプニングが起きてしまった。バトンの受け取りの時にタイミングが一瞬ズレて、手に入るはずだったバトンはそのまま転がって地面に落ちてしまったのだ。
「・・・!?」
予想外のハプニングにレナちゃんは慌ててバトンを拾うと必死で走り出すが、ここまでほとんど他の選手と差が無かったことが影響してなかなか追いつかない。
レナちゃんは遠目からでも分かるほどに顔を歪ませて泣きそうになるが、それを阻止した者がいた。
「レナ!」
声の主は後輩だった。いつもからは考えられないほどに大きな声でレナちゃんの名前を呼ぶと頷いてみせた。『諦めるな』、そんな言葉が伝わってくる。最愛の姉の言葉に勇気を貰ったようで懸命に距離を縮めていくレナちゃん。
バトンを拾う時に、動揺してロスした時間は大きい。普通に考えたら諦めるレベルの差がついていた。それでも、レナちゃんは必死に繋げようと走る。
レナちゃんママも葵さんも応援するが、後輩はレナちゃんを優しく見守っていた。姉として、レナちゃんのことを信じていたのだろう。それに、さっきの名前を呼んだ時に伝えたいことは伝えられたのだろう。
俺は後輩の意外な一面に驚きつつも微力ながらレナちゃんを応援する。まあ、隣の大きな声にかき消されるかもだが、しないよりはマシだろう。そして、バトンは愛娘の千鶴に渡った。
「ちづるちゃん!」
「うん!」




