661 念願の休み
今年は
夏休みも終わり、9月に入った。夏の暑さが和らいで段々と涼しくなってきた今日この頃、家族3人で夕飯を食べていると遥香が唐突に言った。
「そうだ、今年は休み取れたから、ちーちゃんの運動会行けるぞ」
「ほんとうに?」
「ああ」
その言葉に嬉しそうに微笑む千鶴。去年は仕事があって行けなかったが、今年はなんとか休みを取れたようで良かった。千鶴も母親である遥香が居た方が嬉しいだろうしね。
「今年はちーちゃんは何をするんだ?」
「うんとね、レナちゃんといっしょに、はしったりするの」
「一緒に?」
「二人三脚みたいなのと、リレーにも2人とも出るそうですよ」
去年は別のクラス、別の組だったが、今年は2人とも同じだと嬉しそうに話してくれたのは記憶に新しい。
「確か、親子で参加するのもあるんだよな」
「ありますけど、遥香はダメですよ」
そこまでハードじゃなくても、妊婦にやらせるのには危険な競技もあるのでそう言っておく。
「分かってる。お前とちーちゃんの活躍を楽しみにしてるさ」
「なら、いいですけど」
大丈夫だとは思うが、当日は色々と用意しないとな。涼しくなってきてるけど、まだ少し日中の日差しは強いから日傘もいるだろうし、冷えた場合のためにタオルケットとかもあればいいかもしれない。
「あ、そういえば、今年はレナちゃんパパも運動会見に来るそうですよ」
「そうなのか?」
「ええ、本人から聞きました」
メイド喫茶での女装バイト以来、結構頻繁に連絡を取ってるのだが、運動会の話題になった時に去年は仕事で行けなかったこと、そして、今年はなんとか休みを取ったということを話していたのだ。というか、多分だけど最近再会した昔からの友達のココアちゃんと同じくらいにはレナちゃんのお父さんの葵さんと連絡を取ってる気がする。
ココアちゃんは、あれから更に声優として忙しい日々を送ってるそうだが、近々空いてる時にこちらに顔を出すと言っていた。人気声優さんが大丈夫なのかと思っていたが、本人曰く少し変装すれば問題ないそうだ。まあ、結構メディアにも出てるらしいから、変装は必須なのだろう。
葵さんの方は、他にも経営してるお店があって、その手伝いを空いてる時にすることが多くなった。ちなみに、あのメイド喫茶にも2回ほどヘルプに行ったが、そのうち1回は厨房のヘルプだ。まあ、女装の方と同じくらい好評だったが、やっぱり俺は遥香と千鶴のために料理してるのが1番楽しいとお店のキッチンでしみじみ思うのだった。




