653 バイトの提案
まさかの
夏休みも時期的に終わりが近い今日この頃、今年は海に行くことは叶わなかったのだが、思ったより色々と出掛けたものだとしみじみ思う。まあ、ライブが完全に予定外だったけど、それ以外は一応予定通りとも言えるのかな?
「いやー、今日も暑いねぇ」
そんな中で、何故か俺は薫ちゃんにお茶を出していた。遥香は水瀬さんとお出掛けらしく、千鶴もレナちゃんの家で遊んでいるので、フリーな時間に訪ねてきた薫ちゃんをおもてなししてるだけなのだが。
「それで、今日はどうかしたの?」
「あー、うん。実は健斗くんにお願いがあってさ」
「お願い?」
「うん」
冷たいお茶を飲んでから、薫ちゃんは変わらぬトーンで言った。
「あのさ、一日だけ女装してくれない?」
「はい?」
「正確には、一日だけメイド喫茶のバイト手伝ってくれない?」
・・・おかしい。日本語が分からない。
「いやいや、メイド喫茶の手伝いで何故に俺が女装しないといけないの?」
「実はさ、友達の子があるメイド喫茶でバイトしてるんだけど、明後日だけシフトに誰も入れなくて困ってるみたいなの」
「うーん、そこでどうして俺に回ってきたのやら・・・」
「最初は亜矢さんに頼んだけど、恥ずかしがってさ」
まあ、水瀬さんは断るだろうな。というか、雅人が許さなそう。何気に独占欲強いし。
「他の子も皆ダメで、店長さんにダメ元で去年の文化祭で健斗くんが女装した写真見せたら是非にって言われてさ」
・・・おかしい。メイド喫茶なのに女装した奴が混じってていいのだろうか?店長さん本当に大丈夫なの?
「バイト代は弾むってさ。健斗くんも出産の準備でお金必要でしょ?いい臨時のバイトになるじゃないかと思ってさ」
まあ、確かに小銭集めは保険でしておく事に越したことはないだろうが、それでも女装してお金を貰うのはなぁ・・・
「奥さんと娘さんには黙ってるからさ」
「ちなみに、この話雅人は知ってるの?」
「まあ、亜矢さん断られた時に写真くれたの本人だからね」
あの野郎・・・売りやがったな。
「店長が健斗くんを是非にって凄いから、会うだけ会ってくれないかな?」
「はぁ・・・分かったよ」
本当は断りたかったが、どうやらかなり切羽詰まった状況みたいだし、割のいいバイトの伝手が出来るのはいい事だ。ただ、そのバイトが女装しないといけないのは最悪と言えるけど・・・既婚者の女装ってメイド喫茶の客に需要あるのか?まあ、きっとすぐに弾かれるだろうと思っていたのだが・・・それが間違いだとそれからすぐに分かることになる。




