650.5 義父の気持ち
「喜んで貰えてるみたいね」
千鶴が自転車に乗る姿が見えて思わず呟く恵。そんな恵の言葉に遥香は頷いて言った。
「お義父さんのお陰です。ありがとうございます」
「いいのよ。私も可愛い孫にプレゼントくらいしたいし。それに・・・思わぬプレゼントも貰えたしね」
恵の手首にあるパワーストーンのブレスレット。それを嬉しそうに眺めてから恵は言った。
「孫って凄く可愛いものね。出来てみて初めて分かったわ」
「子供とどっちが可愛いですか?」
「それは難しいわね。健斗も海斗も自慢の息子・・・まあ、片方は娘みたいだけど、それでも、私の自慢だし、孫である千鶴ちゃんも凄く可愛いしね」
そう言ってから、恵はふと思い出したように聞いた。
「そういえば、健斗と同棲したのも去年の夏頃だったわね。どう?私の息子は?結婚して粗はあったかしら?」
「全くないですね。むしろ、結婚してから前より健斗に甘えてしまってるので」
「そう、あの子らしいわね」
恵としても、かなり無理やり進めた同棲の話だったが、結果的に2人の関係が深くなったのは良かったと心底思う。
「お義父さんは健斗居ない生活大丈夫ですか?」
「ええ、まあ、確かに大変ではあるけど、お仕事は楽しいし、何よりたまに孫に会えるという楽しみもあるから、幸せかもしれないわね」
そう言いながら家の前で自転車を漕ぐ千鶴をチラリと見る恵。なんだかんだで、やっぱり孫は可愛いのだろう。
「私も、将来は似たような祖母になりそうですね」
「あら、でも遥香さんは健斗とラブラブした余生を過ごしそうね」
「否定はしません。お爺ちゃんお婆ちゃんになっても仲良く過ごして同じ墓に入るのが目標ですからね」
「健斗と同じようなこと言ってるわね。流石夫婦」
最も、最後の部分に関しては恵も同様だった。妻と同じお墓に入る。息子である健斗には話したかもしれないが、ただそれだけが唯一の目標なのだ。ただ、それまでの間に少しでもお土産話として可愛い息子や孫のことを報告出来るようにしたいとも、思っているが。
「遥香さん、大変かもだけど、出産頑張ってね」
「ええ、お義父さんも、色々ありがとうございます」
自転車のことにしろ、入学祝いのことにしろ、出産祝いのことにしろ・・・その他もろもろ、色々と貰ってばかりなので、遥香としてもそう言うのだった。それからは、2人が戻ってくるまではゆったりとした時間を過ごすが、外で楽しそうにしてる孫はなんとも微笑ましかったのだった。




