642 二人へのお土産
お土産
「そうそう、これが千鶴ちゃんへのお土産ね」
思い出したように、父さんが千鶴に渡したのは塗り絵だった。しかも、千鶴の好きなアニメや可愛い動物のイラストの塗り絵なので、千鶴は嬉しそうに微笑んでお礼を言った。
「おじいちゃん、ありがとう!」
「ええ、いいわよ」
「ぱぱ・・・」
「うん、やってもいいよ。塗れたら見せてね」
「うん!」
頷いてから千鶴は楽しそうに塗り絵を始めた。なんとも可愛い娘だが、それにしても、父さんが塗り絵をお土産として買ってくるとは少し予想外だった。あんまりアニメも詳しくなかったと思ったけど・・・
「ふふ、実はね、瑠美さんにアドバイス貰ったのよ」
疑問符を浮かべる俺にそんなことを言う父さん。なるほど、瑠美さんならある程度千鶴の好みも分かるかもしれないな。
「というか、いつの間に仲良くなったの?」
「霞さんや暁斗さんに会う時にね。二人とは何度も会ってて仲良しだからね」
まあ、親同士が仲良しなのは嬉しいけど、お義母さんやお義父さんに変なこと話してないといいが・・・
「それで、遥香さんにはこれね」
そう言って、遥香に渡したのは小学生の卒業アルバム。というか、なんか俺が昔持ってた奴のような気が・・・
「わざわざ、ありがとうございます」
「仕事で忙しくて、こういう写真しか残ってないのよね」
「十分ですよ」
「健斗ったら、これを捨てようとしてたから私が預かってたのよ。せっかくの写真なのにね」
そりゃ、俺の卒業アルバムなんて必要ないし、そうなるのも仕方ないだろう。大事に取ってあるのなんて高校の卒業アルバムくらいだしね。高校のは遥香と一緒に写ってるし、大切に保管してある。
ちなみに、これが俺の子供達や遥香のなら同じように綺麗な状態で保存しておくだろう。千鶴の小学校の卒業式とか確実に泣くやつだよね。まだ入学もしてないのにそう思うのだから、俺もかなり親バカなのかもしれない。
何やら、卒業アルバムで楽しげに盛り上がる二人の邪魔はしたくないので、俺は俺で残ってる家事を片付けることにする。千鶴も集中して塗り絵をしているので、邪魔しないようにしたいしね。
そういえば、結局学生時代、父さんが来てくれた卒業式って高校のやつだけなんだよね。まあ、父さんも忙しかったし、仕方ないけど、卒業アルバムを見て随分と悔しそうな顔をしていたのがなんとなく覚えている。俺としては、父さんの忙しさを知ってたし無理に来て欲しいとは言えなかったけど、もう少し頑張ってお願いしても良かったかもしれないと、少しばかり思うのだった。




