637 帰りの席で
新幹線
「にしても、ライブってこんなに大変なのな」
帰りの新幹線の中で、隣に座る雅人がそんなことを呟いた。斉藤は誰よりも張り切っていたせいか体力回復のために仮眠モードに入っていて静かだ。
「グッズを買うために並んでた時の雅人の表情死んでたしね」
「いや、通販とかでも買えそうなものをわざわざ朝早くから並ぶ意味が分からなくてな」
「買えないものも多いらしいし、仕方ないんじゃない?」
ココアちゃんは結構人気らしいし、仕方ないとも言えるだろう。
「そういえば、さっきスマホ見てた時少し回復してたけど、何かいい事あったの?」
「まあな。お前の奥さんのお陰だ」
「そっか、てっきり水瀬さんからのメッセージで癒されたのかと思ってたけど」
「それは・・・まあ、それもあるかもな」
会えなかった分、離れていた時間での水瀬さんからのメッセージは砂漠のオアシスの水のようなものだろう。
「水瀬さんには本当に助かってるよ。今日も夕飯作って貰えたみたいだし」
「・・・それで、少しでも俺とアイツの時間作ってくれたんだろ?」
「どうだろうね」
そこまで計算はしてないが、瑠美さんが無理な時に水瀬さんが快くOKしてくれたのは有難かった。何しろ、ライブの時間が時間だったから、どうしても夕飯が遅くなってしまいそうだったので本当に助かる。
遥香は妊娠中だし、千鶴も幼くて寝る時間が早いから、あまり待たせて食べさせたくなかったのだ。
「まあ、でも、たまにはこういうのも良かったかも」
「そうだね。ただ、毎回こんなにお金かかるって、オタクって業が深い生き物だね」
「お前1人なら多分行かないだろ?」
「そりゃね、家事も子育てもあるし、そこまでお金を掛けられないかも」
とはいえ、子育てに余裕が出来たら、また来てもいいかもしれない。幼い頃の友人の頑張る姿はなんとなく、誇らしく思えるしね。それに、本当に楽しそうに仕事してるから、微笑ましくもなる。
「それに、今回のも斉藤なりに、気を使ってくれたのも分かるからね」
「去年のイベントの時もだが、自分の趣味の共有も兼ねてだな」
「来年は雅人1人誘われるかもね」
「そしてら流石に行かないかもな。行くならお前を道連れにするだろうし」
なんとも、らしい回答に苦笑しつつ、先程買ったコーヒを飲む。夕飯は安めのもので済ませたが、子供が大きくなったら、今度は別の目的で都会に来るのもいいかもしれない。1人だと来る気は起きないだろうけど、家族旅行なら皆で観光して美味しいもの食べてもいいかもね。




