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633 唖然とする光景

( ・д・ )

「すご・・・」


入場の時間になり、中に入ると、大きな会場に物凄い人数のファンがいた。皆、ライブのグッズであるTシャツとタオル、ペンライトを装備しており、その目付きは歴戦の戦士のようだった。


「拙者達はアリーナ席の中央ステージ近くの前列でござる」


メインのステージとそこまで離れていないけど、目立ちそうな真ん中のステージ。その端の方とはいえ、前の席に座れるって、斉藤相当凄いんじゃないだろうか?


聞いたところによると、こういうライブでのアリーナ席・・・1階の見やすい席は、競争率が高いらしい。転売などで高値で取り引きする人もいるらしいが、斉藤としてはそんな真似は絶対にしないと言っていた。まあ、純粋に楽しみたいファンからしたら、チケットが取れていい席なのに転売するとか、おかしいとしか言えないのだろう。


「2人とも、スマホの電源は切るでござる」

「分かってる。その前にメッセージだけ送るけど」


そう言ってから、俺は遥香にライブの間連絡出来ないとメッセージを送っておく。スマホの電源を落とすと、何かあった時に凄く不安だからしたくないが、ルールは守らねばなるまい。


「荷物は椅子の下に、タオルは首にかけておいて、ペンライトは離さないようにストラップ部分を手首に巻いて握るといいでござるよ。飲み物は直ぐに出せるように鞄から出しておくでござる」


なんか、心做しか斉藤の目がガチすぎて少し怖い。


カチカチとペンライトを弄る。俺のは手元のボタンで直ぐに色が変わるので、凄くわかりやすいが、雅人のはボタンがどうやら下の端の部分にあって少し苦戦していた。


「さくらんの、シンボルカラーはピンクでござるから、とりあえずピンクを出しておけば間違いないでござる」

「待って、さくらんって何?」

「異なことを聞くでござるな。紗倉心愛の愛称でござるよ」


ココアちゃん、ファンからそんな風に呼ばれてるのか・・・


「合いの手のコールで、さくらんコールを入れることもあるでござるから、心に止めておくでござる」

「・・・それ、俺もやらなきゃダメか?」

「雅人なら大丈夫でござるよ。最近はイケメンなオタクも増えてるでござるから」

「俺はオタクではないが・・・」


そう言いながら、律儀に斉藤の真似をしてるが、何故かどんな格好でもイケメンに見えるから不思議だ。


それにしても・・・さくらんコールって、アイドルみたいに曲中にでもココアちゃんの名前呼ぶのだろうか?まあ、声優も最近アイドルっぽいし、違和感はないが・・・人生、どんな体験をするか分からないものだとしみじみ思う。





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