64 素朴な疑問
ちーちゃんの疑問
「ねえ、おにいちゃん」
「どうかしたの?」
「おにいちゃんは、りっちゃんのままとなかよしなの?」
的場さん親子とお茶をして別れてから千鶴ちゃんと二人で手を繋いで歩いていると、千鶴ちゃんがそんなことを聞いてくる。うーん、そうだな・・・
「そうかもしれないね」
「じゃあ、ままとりっちゃんのままとどっちがもっとなかよし?」
「千鶴ちゃんのママに決まってるよ」
即答だった。確かに律子さんはママ友達としては好感が持てるが、あくまで友人関係に近いもの。絶対に先生に勝るわけがないのだ。まあ、こうして下の名前で呼んでると先生に嫉妬されそうだけど、俺と先生が結婚した際に少しでも理解者が多いに越したことはないからだ。律子さんは他のママさんともかなり積極的に交流しているようなので、その情報源が好意的ならかなりプラスになるだろう。
「じゃあ、ままとちーはどっちがなかよし?」
「それは・・・難しいね」
千鶴ちゃんの前だけでも千鶴ちゃんが一番と言えればいいのだが、難しいところだ。ジャンル別なら一番だが、それをわかってくれるかわからないので俺は微笑んでから言った。
「じゃあ、千鶴ちゃんはママと凛ちゃんとどっちが一番仲が良いと思う?」
「うーん・・・わからない」
「家族と友達は好意の種類が違うからね。それで当然だよ」
異性としての好意なら先生が一番、というか先生以外に候補がいないが。それでも答えるなら一番。千鶴ちゃんは娘としての好意なら一番。家族としては・・・先生と並んで一番かな?いや、ゆるい運動会みたいな皆一番とかいうのではなくて、普通にそう思うのだ。
「でも、ちーはおにいちゃんのこともままといっしょですきだよ」
「ありがとう千鶴ちゃん」
家族と同じくらいに好きと言われればかなり嬉しい。俺のことを家族として前向きに捉えてくれているのがわかるからだ。あとはこの感情が父親へのものに変化すればいいのだが・・・どうやって父親として認識してもらうかが問題だな。
父親らしい行動というのは存外に難しい。あくまで一般的なイメージではなく、千鶴ちゃんに俺が父親だったらいいなと思わせるようなインパクトが必要だろう。
かなりハードル高いような・・・うん、頑張ろう。参考にしようにも父さんはあの姿がデフォルトで昔の姿はあんまり覚えてないし・・・いや、何年も女装していると昔の姿とかマジで忘れるから。うん。あれでも昔はかなりのイケメンだったはずだが・・・海斗の容姿に近かったかな?将来、海斗も目覚めたらどうしようか、そんな新たな心配をしつつも千鶴ちゃんと和やかに帰るのだった。