551 耳掃除
耳かき
「ぱぱ、おねがい」
「ん、分かった」
去年の夏頃だったか?2人と住み始めたのは。その前から千鶴にはやっていたのだが、こういう時はどうしても2人ともウキウキしてしまうので親子なのが分かって微笑ましくなる。
今日は遥香が少し遅れてるので風呂に入ってあがってそのまま膝枕をして耳掃除をしていた。俺の場合は祖母以外に耳掃除された経験がないが、その分海斗や時々薫ちゃんにもしてるので手馴れたものだ。
「えへへ、ぱぱのおひざ〜♪」
俺の膝枕で喜ぶのなんてきっと、千鶴と遥香くらいだろう。まあ、この光景を客観的に見た人は『母娘だねぇ』なんて言うんだけどさ。うん、字ズラおかしい。
遥香はもちろん、お義母さんやお義父さん、瑠美さんにも散々言われてしまうのだが・・・何故にみんな俺に母性を見出そうとする?
遥香にやる時ですら、『ウチの母親よりもお母さんぽいな』なんて言って心地よさそうにしてるのがなんだか釈然としないが・・・まあ、こんなことで喜んでくれるならいいのかな?
そんなことを考えつつもう片方の耳を掃除をしていると、千鶴がウトウトし始める。
「千鶴。眠い?」
「うん・・・」
「いいよ、終わったらベッド運んであげるから」
そうしてしばらくするとすやすやと寝息が聞こえてくる。風呂上がり、耳掃除・・・これだけの条件が揃えばそうなることは明白か。
今日も一日頑張った娘を少し甘やかすのはやはり楽しいものだ。時に厳しくも、ある程度娘に甘えて貰える父親・・・になれてればいいが、なかなか父親というのも難しいものだ。
主夫の父親としての在り方とは?難しい命題だ。きっと何十年議論しても結論は出ないだろう。夫婦の在り方なんて十人十色。親子ですら無限にあるのだ。それを価値観に囚われて押し付けるのでは意味が無い。
互いの在り方を決めてしまえば、それが当たり前になってしまう。それでもいいかもだが・・・やっぱり互いを想うことが1番大切なのだろう。
とまあ、色々柄にもなく語ってみたが、要するに俺は2人のために出来ることは何でもしたいのだ。
「よいしょっと・・・」
静かに起こさないようにベッドまで運ぶ。寝ていても無意識に離れたくないのか手をぎゅっと握る千鶴に思わず微笑んでしまう。
(遥香はもう少しかな?なら、しばらくはいいか)
そっと開いてる手で千鶴の頭を撫でる。やりたい事もやらなきゃならない事も沢山あるが・・・そのご褒美に少しばかり我が子の寝顔を眺めてもバチは当たらないよね?




