550 経験談3
瑠美さん
「健斗くんはマメだねぇ」
時間があるというので、喫茶店で待ち合わせしてから、世間話と共に聞くとそんな感想がまず返ってきた。
「そうですか?好きな人の為に出来ることをしたいだけなんですが・・・」
「うん、それだよそれ。普通、そんなに深く考えないから」
「そうですか?」
「誰だって、自分が可愛いからねぇ。そこまで相手に尽くそうとは思わないよ。しかも、見返りを一切求めない献身的な愛」
「あの・・・そんな大層なことじゃないと思いますが・・・」
それじゃあ、まるで俺が聖人か何かみたいじゃん。残念ながら俺にそんな清らかな心はないんだけど・・・汚れてるからこそ、好きな人には色々したいと思うしね。
「まあ、見返りは貰ってるか。でもね、普通に考えて一年近く好きな人に手を出せずにただ尽くすなんて無理だと思うよ。まあ、姉さんの方が先にギブアップ気味だったみたいだけど」
「いえ、俺もそれなりに頑張って我慢してたんですがね・・・」
何しろ、遥香ってば物凄く魅力的だから男として手を出さないという選択肢が難しすぎてね。
「それでもやり切ったからねぇ。まあ、でも健斗くんがいつも通りに姉さんに接するのが1番嬉しいだろうから、それでいいんじゃない?」
「まあ、そうかもですが・・・妊娠中は色々不安になるそうですし、出来ることはしたいんです」
「うーん、ならさ、健斗くんがそういう悪夢見た時とか体調悪い時にどうして欲しいか考えるのは?」
まあ、確かに悪くないアイディアではあるが・・・
「難しいですね。生まれてこの方、体調不良とか一切ないんで」
「それは凄いねぇ」
「母に守って貰ってるので」
今だからそんなことを考えられる。この歳まで健康にこられたのは、間違いなく母さんが守ってくれていたのかもしれないと。まあ、多少怪我はあっても、死んでないしね。
「背後霊ってやつかな?強力そうだよね。そういえば、昔、うちのバカ息子が私の後ろに誰かいるって言ってたけど、結局誰だったんだろ?」
「子供は霊感強いって聞きますしね」
「まあ、本人はそのこと忘れて、結婚式前に牡蠣にあたって来れないとか抜かすし・・・お仕置はしておいたけど」
大地・・・ご苦労さま。思わず心の中で敬礼をする。まあ、そんな感じで結局世間話になってしまったが、それでも瑠美さんからはある程度色んな話が聞けたので良かった。やっぱり人に相談するのも時には大切なのだろう。特にこういうのは男が1人で悩んで解決する類のものじゃないしね。




