55 決戦当日
あっという間に当日
遊園地をエンジョイしてからさらに翌日、その日は俺の家族と先生が話す日だ。二人を連れて自宅に戻るといつも通り女装している父さんと隣に久しぶりに見る弟の海斗がおり、まずは父さんは言葉を発した。
「おかえり健斗。お久しぶりですね黒羽さん。それとあなたが娘の千鶴ちゃんね。私は健斗の父親の巽恵よ」
「・・・巽海斗。弟です」
「お久しぶりです巽さん。はじめまして海斗くん。黒羽遥香です。そして娘の・・・」
「ちずるです・・・」
人見知り全開の千鶴ちゃんに思わず微笑んでから俺は言った。
「海斗久しぶり。元気そうでよかったよ」
「うん。兄さんも元気そうで何よりだけど」
ちらりと視線を先生に向けてから海斗は言った。
「兄さん。本当に騙されてるわけじゃないんだよね?」
「大丈夫だよ。それにそれを含めて父さんと決めればいい」
「・・・わかった。先に部屋に行ってる」
そう言ってから海斗は部屋に向かった。俺は遥香に視線を向けて言った。
「予定通り千鶴ちゃんは俺が面倒みておきますので、遥香さんは父さんと海斗の相手を頼みます」
「ああ。わかってる」
「よし、じゃあ千鶴ちゃん。俺の部屋で本読もうか」
「うん!」
その言葉で俺と千鶴ちゃんは俺の部屋へと向かうのだった。
「ねぇ、おにいちゃん」
「なんだい?」
「ままだいじょうぶなの?」
部屋で本を読んでいるとそんなことを聞かれる。やはり子供なりに思うところがあるのだろう。俺は千鶴ちゃんの頭を撫でて言った。
「大丈夫だよ。千鶴ちゃんはなにも心配する必要はないよ」
「そうなの?」
「うん。千鶴ちゃんのママは強いでしょ?」
そう聞くと元気に頷く千鶴ちゃん。
「うん!ままはすごい!」
「なら大丈夫だよ。きっとね」
俺だって何の不安もないわけではないが、俺には千鶴ちゃんの面倒を見るという仕事がある。だからそれをきちんとやるべきだろう。下では今も先生と父さん、海斗が話しているのだろうが、俺には何も出来ないので行く末を待つことしかできない。
歯がゆい思いはなくはないが、きっと先生は大丈夫だと信じている。俺は先生の全部をきちんと知ってるわけではない。でもあの人の理解者になるならこれくらいのことは慣れなきゃダメだと思う。信じて待つというのがこんなに歯がゆいものなのかと初めて知った。世の中のヒロインさん達は皆凄いよね。
「ねぇ、おにいちゃん。おひざにすわってもいい?」
「もちろんだよ」
千鶴ちゃんが甘えてくれるのは素直に嬉しいので俺は千鶴ちゃんに集中することにした。先生を信じて・・・。