41 ゴールデンウィークの予定
ご予定はありますか?
「ゴールデンウィーク?」
「ええ、遥香さんはどう過ごす予定ですか?」
夕飯にそう聞くと先生は少しだけ考えてから言った。
「基本的には部活で数日出勤するだけだから、特に予定は考えてなかったが・・・ちーちゃんの面倒は任せてもいいんだな?」
「ええ、もちろんです」
「なら、出掛ける予定もたてるが、そうだな・・・健斗。お前の親の予定が空いてる日はあるか?」
「聞いてみますが、どうしたんですか?」
「そろそろ挨拶に行こうと思ってな。確か夜勤の仕事に就いてるんだったな」
夜勤というか、夜のお仕事なのだが、千鶴ちゃんの前でそんなことは口にできないので俺は苦笑しながら言った。
「ええ、まあ父さんは仕事人間なのでゴールデンウィークは休みはあんまり取らないと思いますが一応予定は聞いてみます」
「頼む。ちなみにお前は私とちーちゃん以外に予定はあるのか?」
「友人とは特に予定はないですね。いつも通り父さんのご飯を作って、勉強して・・・あとは弟が帰ってくるので弟の分のご飯の準備が必要なくらいですかね」
そう言うと先生は少しだけ驚いたような表情で言った。
「弟が帰ってくるのか?」
「ええ。こっちの友達に会いにくるついでに帰ってくるそうですよ」
「ちなみに弟には私達のことは話したのか?」
「まだです。まあ、ちらっと近い話題はありましたが、詳しくは話してないです」
「んー、そうか」
なにやら考え込む先生。しばらくそうしてから先生は顔を上げて言った。
「なら、弟とも会えるよう予定を調整できるか?」
「やってはみますけど・・・その、弟にも会うんですか?」
「なんだ?何か問題あるのか」
「いえ・・・念のため確認しますけど、俺との関係の件で弟に会うんですよね?」
「そうだが・・・もしかして嫉妬か?」
「まあ、もちろんそれもありますけど」
「あるのか」
少しだけ嬉しそうな先生。俺は弟のことを思いだしながら言った。
「弟は俺とは違ってイケメンなので少しだけ不安というのもあるのですが、遥香さんに対して弟がかなり失礼なことを言うかもしれないのでそれも不安なんです」
「もしかして女嫌いか?」
「ええ、近いです」
俺の教育が悪かったのか表面上は優しいイケメンに育ったが、一度スイッチが入ると腹黒な面が出てしまう毒舌家になる。普段俺には大人しい弟として接してくれているが、父さんに対してはかなり毒舌になるので、遥香さんにももしかしたら何か失礼なことを言うのではないかと不安になる。
まあ、遥香さんが顔だけで判断するような人ではないと信じてはいるが、男としてスペック的に弟に遥かに負けている自覚があるのでそういう意味の嫉妬もなくはない。
そんな俺の不安を遥香さんは笑い飛ばして言った。
「どんな家族でも受け入れるさ。それに私はイケメンにはあいにくと興味がなくてな」
「そうなんですか?」
「ああ、私はお前みたいなタイプが好きだからな」
そう言われてしまうと何も言えなくなる俺はかなり弱いのだろう。