37 嫉妬上等
片鱗を見せるのか・・・？
「ほー、ちーちゃんと手を繋いだと？」
「ええ」
「ほー、へー、そうかそうか」
帰って来た先生がえらくご機嫌な千鶴ちゃんを見てどうゆうことなのかを聞いてきたのであったことを話すと先生はそこに食いついた。何故？
「私の前にちーちゃんと手を繋いだと？はじめてをちーちゃんへと捧げたと？」
「あの・・・遥香さん？」
「なんて・・・拗ねてみればお前は困るか？」
そう言ってから俺を見る先生。その瞳にどこか迷いがあるようなので俺はきっぱりと言った。
「嬉しいです」
「嬉しい？なんだ突然」
「遥香さんが俺に対して少しでも独占欲を向けてくれるなら嬉しいです。遥香さんが少なからず俺に対して好意を抱いてくれているということですから」
興味がないなら関心はわかない。どんな感情でも遥香さんから向けられるものなら俺はそれを精一杯受け入れるつもりだ。
「実の娘に嫉妬する醜い女でもか？」
「家族の好意と、異性の好意は別物ですから」
「・・・なら、今度は私と手を繋げ」
「もちろん」
「ん、ならこの件は見逃してやる」
そう言ってから視線を逸らす先生はどことなく嬉しそうに見えた。
「ちなみに遥香さん的に絶対許せないことってあります？」
「ん？そうだな・・・ちーちゃんを害するのと、浮気かな？」
「なら、どっちもしないので問題ないですね」
「あと、私はお前が他の女にいい顔するのも許せない。多分」
「わかりました。社交辞令は可ですか？」
「・・・場合による」
なかなか難しい注文のようだが、まあ、俺が先生以外に浮気しなければ問題ないという認識でいいのかな？いい顔って言ったって、俺はモテない主夫希望の学生だから、他の女の子に接することはまずない。まあ、それでも先生が言うなら従うべきだろう。
「な、面倒な女だろ？」
そんなことを考えていると先生が苦笑しながらそう言った。
「私はかなり我が儘なんだよ。特に自分の物には執着する。子供の頃は大好きな人形がボロボロになるまで絶対に手放さなかったくらいにな。いつかお前をそうしないという保証はない」
「そうですか・・・ならますます俺は遥香さんが素敵に見えます」
「なんだと？」
眉を寄せる先生に俺は笑顔で言った。
「だって、それって俺のことを本気で愛する可能性があるってことですよね？なら、俺としてはむしろポイント高いです」
俗にいうヤンデレというのは愛情からくるものだ。深い愛情はそれだけ相手を思っているということだ。先生がそこまで俺のことを愛してくれるなら俺はどんなことでも受け入れる。
そんな俺の言葉に先生はしばらくポカーンとしてからくすりと笑って言った。
「生意気な奴だが・・・可愛い奴め」
その表情は大人っぽくて俺は思わずみとれしまうのだった。
