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34 花見は団子

花と団子



「なんで餅って、あんこ入ってるんだろうなぁ」


桜餅を食べながら、先生がそんなことを言う。近くの屋台を見ていると、和風のスイーツなどの屋台が多く、まあ、ぶっちゃけ和菓子率が高いので、自然とそんな言葉が出てきたのだろう。


「まあ、美味しいですからね。千鶴ちゃん、美味しい?」

「うん」


もぐもぐと、三色団子を食べる千鶴ちゃん。あんこが苦手な千鶴ちゃんでも食べられるのは、それぐらいしかなかったのだが、千鶴ちゃんは満足なのか、夢中になって団子を食べるので、ほっとする。


「でも、餅はやっぱり、すあまが一番だよな」

「意外と素朴な味が好きなんですね」

「どら焼きも、あんこなしの方がうまいしな」

「多分、和菓子が苦手な人しか、共感できないでしょうね」


なんとも先生らしいのか、らしくないのかわからないが、まあ人の味覚はそれぞれなので、別にいいだろう。俺もそこまで和菓子は好きではないので、緑茶を飲みながら一息つく。


「にしても、もっと色々屋台あると思ったんだがなぁ・・・」

「まあ、仕方ないですよ。今度はお弁当持って遠出しましょうよ。何か食べたいものありますか?」

「肉!」

「うん、わかってました。千鶴ちゃんは?」


そう聞くと、千鶴ちゃんはゆっくりと団子を飲み込んでから、キラキラした瞳で答えた。


「はんばーぐ!」

「うん、じゃあ美味しいの作るね」

「やったー!」


微笑ましい光景に思わず頬が緩むが、何故か少しだけ不機嫌そうな先生の表情に、俺は思わず聞いていた。


「遥香さん。どうかしましたか?」

「なんかちーちゃんと私で態度違くないか?」

「そうですか?そんなことないと思うのですが・・・」

「・・・そうだな。忘れてくれ」


そうして桜餅を食べながら、視線を逸らす先生。もしかして嫉妬とか?確証はないけど、千鶴ちゃんに優しい俺に嫉妬なのか、俺に打ち解けはじめた千鶴ちゃんに嫉妬なのかはわからないが、そうなら地味に嬉しい。どっちであっても、先生から少なくない好意を抱いて貰えてる、ということだからだ。


だから俺は先生に近づいてから口元についたあんこを取ってそれを食べてから微笑んで言った。


「家族に向ける愛と、異性に向ける愛は、別ですからね」

「・・・わかってるさ。お前に負担ばかりかけてその上こんな感情まで抱くのは間違ってることは」

「いいえ、間違ってないですよ。むしろその感情は、俺にちゃんと出してください」

「・・・いいのか?私がお前に本心を伝えると、かなり我が儘で、重い女になるぞ?」


珍しく弱気な先生に、少しだけ父性本能がくすぐられるが、そう聞かれても俺は笑顔で言った。


「俺としては、もっと独占欲とかを出して貰いたいくらいです。どんな感情であれ、遥香さんからの感情なら、素直に受け止めます」

「それが悪感情でもか?」

「その場合は・・・悲しくなるだけですね」


そう言うと先生は、くすりと笑ってから言った。


「なら宣言しとくが、私はかなり重い女だから、それは理解しておけよ」

「はい。どんなあなたでも受け入れますよ」

「生意気言うじゃないか・・・健斗」


そう言う先生の横顔はどこか嬉しそうに見えたのは気のせいではないと思う。








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